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「無職だけど」お嬢さんと結婚させてください

当時34歳の僕は、「おっさん」「ハゲ」「デブ」「無職」「うつ病」で、そのうえ「長男」で、厄介な性格でしかも脳出血の後遺症を抱えた母と、認知症になりかけの父、さらには双子の強烈な小姑がいるという、もうね、結婚できない男の見本みたいで、まさにコンプリート状態だった。

それになのに、なぜか僕のそばにいてくれた彼女。
本当に、今から考えてみればあり得ないような状況だった。

プロポーズもろくにできなかった

でも、そんな状態から抜け出すために、僕は彼女と結婚しようと思ったんだ。
それで、結婚しようって何回か言ってみたんだけど、言い方が悪かったんだろうなあ、彼女が本気にしなくてね。

うつ病ではない健全な体調だったら、ちゃんとそれなりのシチュエーションを用意して、(例えばレストランとか予約したりとかね、きれいな場所に連れて行ったりとかして)特別感を演出してきちんとするところだったんだろうなと、今になってみれば思うのだけれど、当時はそういうことを思いつかなかった。
たぶん、そういうことをするエネルギーが無かったんだろうね。

それで仕方なく、僕の実家に彼女と行った時に、家族の前で宣言したんだ。
彼女と結婚するって。
彼女もびっくりしていたし、家族もびっくりしていたよね。
でも、そうでもしないと、彼女も本気にしてくれないと考えたんだよね。
というか、それくらいのことしか思いつかなかった。
何度も書くけど、今から考えると、もっと別の方法があったと思うんだけど。彼女には申し訳ないことをしたなあって思う。

ただ、家族は僕を追い出して、彼女のところに行くように仕向けたんだから、家族からは当然異論は出なかった。
彼女も、わざわざ長野から出てきたんだから、「嫌だ、あなたと結婚する気なんてない」とは言わなかったよね。
もちろん、その場では反論はできないだろうけれど、その後も特に反論はなかった。

「そうと決まれば、善は急げだ」とばかりに、まずは、彼女の実家に挨拶に行かなければいけない、ということになるわけだよね。

追い返されるのを覚悟して

それで、彼女に実家に行くことになったわけなんだけれども、なんと言っても「無職」だからね。
無職のくせして「お嬢さんをください」って、どの面下げてきたんだ!って話だよね。

「顔を洗って出直してこい!」って追い返されるかもしれない。
そんなことを考えつつ、長野まで出かけて行った。

でも、断られるのは当たり前だと自分でも理解していたから、ある意味覚悟ができていた。
断られても、解ってもらえるまで何度でも行こうと覚悟を決めていたから、無茶苦茶ビビっていたけれど、肚は座っていたと思う。

彼女の実家について、お義父さんの前で、きちんと姿勢を正して、

「今は仕事をしていない無職の身ですが、今後、整体の学校に通い、技術を身につけて健康関係の仕事に就くつもりでいます。
このようなお願いをするような立場にないことはよくわかっていますが、
お嬢さんとの結婚をお許しください。
よろしくお願いします。」
(うろ覚えだけれど、たぶんこんなことを言ったと思う。)

奇跡が起きた

今から考えると、お義父さんも覚悟ができていたんだろう。
僕の言葉のすぐ後に、穏やかな口調でこう言ってくれたんだ。

「あなたが真面目な方だということはよくわかりました。
後は、本人が決めることですから。」

無職の男が、お嬢さんと結婚させてくれと言ってきたら、それはそれは、思うところは色々あったと思う。

でも、「本人が決めたのならそれでいい。」という言葉には、懐の深さを感じた。

常識では考えられないことが起こるのが世の中だ

無職なのに結婚するなんて。
しかも、誰にも反対されないなんて。
(彼女の友人たちには反対されたみたいだけど。)

常識的には考えられない。
常識に縛られていたらこんな行動は起こさないし、行動をしなければ、こんな非常識にな結果になるなんてこともわからない。

僕が多くの人に言いたいことは、世の中は「常識的」な人ばかりではない。
常識的に考えてありえないことが起こるのが世の中なんだ。

だから、常識なんて捨ててしまえばいいと思うんだよね。
やってみなければわからない。

世の中には、無職の男と結婚する女性がいる。
二人で生きていけばいいと考える女性がいる。
その事実を知っておいて欲しいと思う。

(つづく)

自分がうつ状態に陥って、そこから這い上がってくる過程で考えたことなどを書いています。自分の思考を記録しておくことと、同じような苦しみを抱えている人の参考になればうれしいです。フォローとスキと、できればサポートをよろしくお願いします!