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田んぼのある風景

久しぶりにあの季節がやってきた。田んぼから聞こえるカエルの合唱である。今のアパートに住み始めて1年以上が経過したことを改めて思い出した。基本的に静かな住宅街なのだが、まわりに田んぼがあるおかげで様々な生き物の住処になっているらしい。なかでも、この時期のカエルはとにかく鳴き続ける。それも示し合わせたかのようにみんなで鳴く。夜の合唱コンクールが突然始まるのだ。
 こっちはこれから寝ようとしているのに、カエルは「これからが本番です」とばかりに、これでもかとはりきるのだ。けれど、それがうるさくて寝れないと言いたいわけじゃない。意外と悪くないのだ。田舎の雰囲気というか、ばあちゃんの家にやってきたような感覚に浸りながら、ぼくはゆっくりと眠りに落ちてゆく。カエルの合唱といいながら、それが心地よくもあるから不思議だ。
 とはいっても、もっと近くで聞いたらもっと眠ることが困難だったかもしれない。それをぼくの部屋が絶妙な距離感を維持できていることで、安心して眠ることができているのだろう。これから本格的になってくるだろうけれど、少し楽しみにしている自分がいる。住宅地に変わらず、田んぼを守ってくれている方に感謝を申し上げたい。家ばかりに囲まれた近所でなく、田んぼのある風景や暮らしってやっぱりいいなぁと思うのだ。

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