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つくることを続ける人

一生のうちに読める本は限られている。そんなことを意識することなく、人は気になる本や好きな本を読む。映画も、マンガも、演劇も、詩も、あらゆるものとの出会いは、未来からの逆算ではなく、「今」この瞬間のものだと感じる。
 それでも読みたい本や観たい映画というものはあって、そのときどきで思い出すものだから、何かにメモったりしておかなければ出会うことなく終わってしまうと、今になって考えたりしていた。
 たくさんの表現のなかで、「出会えてよかった」と思えるものがどれだけあっただろうか。もちろんすべてにいいところはあっただろうし、それを逃しているのだとしたら自分の感受性の責任だと思う。けれど、心からいいと思える出会いを望んでいるのも本当の気持ちで、そんな作品と出会えることを楽しみにして、ぼくは表現を迎えにゆくのだ。
 そして、いつか自分もそんな作品をつくることができればとどこかで淡い思いを描いている。そんな軽い気持ちでは人の心を動かすなどということには程遠いとも思うし、人の心を動かそうなんて思うのがそもそも間違っているような気もする。表現のスタンスは人それぞれだけれど、きっと正解なんてない。自分の信じるやり方を貫き通すことで、世の表現者は正解にしてきた。それは非常におもしろく、痛快なことだと思う。だからこそ、ぼくは今、つくることを続ける人でありたいと考えているのだ。

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