誕生

引き裂かれ　引きちぎられる　それを知っても尚　彼はその彼岸に向かう

重力は増し　胸の振動は鈍く鳴り響く

その振動に人は恐れ慄き　神を呼び　逃げ惑う中　彼は一人　薄ら笑いすら浮かべ　その振動に向かって身を投げ込む

神は彼を助けようとするが　彼は神の手に唾を吐きかけ　振動の最中　断絶魔のような快楽に身を悶え　正気を失い　闇に堕ちる

神と人は彼を憐れみ　蔑み　罵る　彼はそれを子守唄に　深い深い安堵の中　全てを終えた恍惚の表情で　世界に棲む悪魔に身を抱かせる

「嗚呼　我が肉体も精神も魂も全て　好きなだけ引き裂いてくれ　こうして私は生まれることができる」