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アラフィフ、独身、子なし。

拝啓めぐみティコさま

はじめまして。

日曜日の朝、布団の中で拝読しました。

私の中で何かががザワザワし、数日経ってもおさまりません。

これがめぐみティコさまに届くのかは分かりません。
でも、とにかく書いてみようと思いました。

(めぐみティコさまは私のことを全く知りません。)


はじめに

私はアラフィフ、独身、子なし。
パートナーのもっさりと週末を一緒に過ごしている。


子供が欲しいと思う時、人はどう言う気持ちなのだろう。
自分の子孫を残したい、愛する人との子供が欲しい、とか。

20代後半、無性に子供が欲しくなった。自分のために時間を使うのに飽き、人の為に時間を使いたいと純粋に思ったのだ。それがイコール子供だった。

当時の彼氏は
「俺みたいな子供が産まれたら嫌やから、俺は絶対に子供は欲しくない。」
ときっぱり言った。
結婚も考えていたし、4年程付き合ったが別れた。(それ以外の事情も沢山あった。)

30代後半、好きになった人と同棲をしていた。
でも彼は性的不能だった。

40代後半、もっさりと出会った。
このまま死ぬまで一緒にいるだろうと思う。
でも出会った時、私は既に閉経していた。

手に入らないものを手に入れようと努力するのもいい。
でも、手に入らないものを手に入らないものと受け止める。時にはそういう強さも必要だ。


私にはゲイの友達がいる。
彼らはいつも、私の話に耳を傾け、時には女友達より的確なアドバイスをくれる。私の話を聞いて当事者の私以上に怒ったりもする。(そんなに怒らなくても、とこっちがなだめる事になる。)
私はそんな彼らが大好きだ。

彼らと遊ぶと心底楽しい。家に帰ってからもその余韻に浸り、暫くニヤニヤしている。

彼らは色んな場面で人1倍辛い経験や苦しい思いをし、それらを消化して来たのだと思う。
何かを乗り越えて来た人は、会えばなんとなく分かる。何か同じ匂いがする。
分かる人には何も言わなくても伝わる。

だから彼女の経験の全てが、めぐみティコとして放出されていく。
いや、放出されていると思う。


照らす側にいられるかどうかというのは、子どもの有無に関係ない。新たな命の誕生やその前ぶれに対し、一点の曇りもなく、心から喜ばしく思い、その感情や感傷を共有できるかどうか、ただそれのみに尽きる。

わたしの子宮は胎児を殺す。

照らすふりをしてライトを向けても、その実私のランプは灯っていない。
でもそれで良いと私は思っている。みんなが照らす側になれば、きっと眩し過ぎて目が開けられない。

近しい人の妊娠にあたたかい眼差しを向け、翳りの中から出ていくことができるようになるのだろうか。

わたしの子宮は胎児を殺す。

私は子供がいない事で、人間的な成長を遂げていないのではないか?と、負い目を感じている。
だから子供ができた人の事を祝福しつつも、後ろめたさや、羨ましさを感じる。
それは彼女の言う翳りかも知れない。

この負い目は、きっと一生拭えないし、拭おうとも思わない。
そんな自分が本当の自分だと分かっているから。
私はそんなにできた人間では無い。

彼女が照らす側に行き、翳りから出ていく事ができれば良いのかも知れない。
でも翳ったままでもいい、と思える事ができたら少し楽になるのでは無いか。

翳りの中にいることが悪いって、誰が決めたのだろう。

だだひとつ。
時が流れ、いつの日か彼女が
「殺した」
と思わずにすむ日が来ることを願っている。


私は早くに閉経を迎えた。
3週間に1度、生理が来ていたから、卵子が早くなくなったのかも知れない。

数年前にホットフラッシュ(急にのぼせて汗をかく)が頻繁に起こり、毎日些細なことでイライラしていた。
例えば、ボールペンが落ちただけで
「もう、なんで落ちんのよ!!」
みたいな。

更年期障害だと思い、かかりつけの婦人科で相談した。
採血でホルモンバランスを調べる事になり、翌週結果を聞きに行くと
「閉経ですね。」
と言われた。

えっ?閉経?想定外なんですけど。
更年期だと自覚していたが、閉経だとは思ってなかった。
私より5〜6歳上の職場の人もまだ生理来てますけど。

その時、子供が欲しいと思っていた訳ではない。
でも、閉経=妊娠不可という事実を突きつけられ、漫画だったら、主人公の額に縦線がいくつも入り横には筆で大きく【ガーン】と描かれている感じだった。

女ではなくなった。

どよんとした気持ちで乗った混み合う電車。
「今日私が医師から『閉経です。』って言われたことなんて誰も知らないんだな。」
と思うと、ちょっと笑えて来た。
病院に行く前の私と、病院帰りの私。
事実を知ったと言うだけで、見た目も中身も私は変わっていない。

家に帰り、ノートに両親への手紙を書いた。
「孫の顔を見せられなくてごめんなさい。」
両親にその手紙を送る予定はない。でも、謝りたかった。

父は面と向かって私に言った事は無かったが、母には「孫が欲しい。」と言っていたようだ。
友達と会うと皆んな孫の話ばかりで、父は疎外感を感じていたのかも知れない。

自分に子供がいない事は我慢できる。何か言われても自分さえ耐えればいい。
それよりも父や母に寂しい思いをさせていることが辛かった。


その日から更年期障害のホルモン療法を始めた。
すると1ヶ月程で症状は無くなり、人生で1番と思えるほど心も身体も元気になった。

今までの私は何だったのだ?!
一生にスプーン一杯程しか出ないホルモンに、こんなにも翻弄されていたのか。

3週間に1度、強烈な生理痛と闘ったのに、子供も産まずに閉経を迎えた私の生理。


ところがもっさりと出会って、来るはずのない生理が来た。
閉経してるし、ホルモン療法をしてるし(ホルモン療法をすると生理がある人でも生理は来なくなる)生理が来る訳ない。
不正出血か?

婦人科を受診すると先生は
「生理ですね。」
えっ?!
「この間、閉経って言ってましたよね?」
「自分のホルモンが(ホルモン療法より)勝つ事があるんです。」
は?どう言う事ですか。そんな穏やかな口調で言われても、意味がわかりません。

それ以降、度々生理が来るようになった。
もっさりのお陰で、女に戻ったのだ。
(正確にはホルモンバランスが崩れているだけだと思う。)

世の中には、一般論では説明の出来ないことも起こりうるのだ。

アラフィフ、独身、子なしでも私は楽しく生きている。
これからの人生をもっさりと歩んで行けたら、それで充分幸せだ。




で、これなんのはなしですか?

私にも分かりません。

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