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その名は、名探偵コナン。

*この記事には劇場版名探偵コナン「探偵達の鎮魂歌」のネタバレを含んでいます。
「探偵達の鎮魂歌」をご覧になっていない方、これから見ようと思っている方はご注意下さい。

名探偵コナン。


それはサンデーで連載されて日テレで放送されている国民的マンガ・アニメ作品。
高校生探偵工藤新一が黒の組織に薬を飲まされ、小学生の身体になってしまい幼馴染の毛利蘭と蘭の父毛利小五郎の毛利探偵事務所に転がりこみ数々の事件を解決しながら黒の組織に迫っていく物語である。

子供の頃は毎週観ていたものの、大人になり観なくなっていたが、今度の劇場版であの高木・佐藤の刑事コンビが結婚するという事でちょっと興味が湧いてきている今日この頃である(余談だが昔の高木の髪型はツンツン頭だった)。

劇場版名探偵コナン。


それはコナン君がスクリーンで大アクションを繰り広げるアクション映画である。推理どこ行った。
名探偵要素よりも爆破や銃撃戦、スケートボードでジェットコースターを滑走したり崩れていくビルを飛び越えたりいつもの120倍くらいコナン君が身体を張っている作品だが、毎年発表される度に話題になりニュースになり金曜ロードショーで放送されたり名作と言われる作品も生まれている注目コンテンツである。

『探偵達の鎮魂歌』という作品を覚えているだろうか。


劇場版名探偵コナン10周年作品で、宣伝の予告では何者かがコナンの正体に気付いたという意味深な電話シーンからスタートする超気になる導入が流れてくる。

ついに黒の組織と対決か・・・!

その予告動画があまりに面白そうだったので見たくなった当時大学生の私は、普段だったら地上波で流れるか、レンタルDVD店で100円レンタルになるのを待つのに、この作品を映画館に観に行く事にした。

そう、GW明けの平日に。


GW中は混んでるだろうし、土日祝日も家族連れが多いだろうし、ちょうど1時間目の授業が終わったら後は何の予定もない曜日があったので、近所のショッピングモールにある映画館(TOHOシ○マズ)に見に行った。
これだけ面白そうな作品だ、きっと席は満員御礼に違いない。私はいい席をゲットするため開演の30分前に着くように自転車を飛ばした。

上映30分前。満を持してチケットを買いに行った私は映画館のスタッフの人に勧められ真ん中後ろ側の一番いい席を選んだ。お金のない貧乏学生だったため、ポップコーンやコーラ、ホットドックは我慢した。
映画が上映されるホールに入り、自分の席に座る。
この時、中は電気がついていて私の他には誰もいない。まあ30分前だしな。ちょっと早かったんだろう。私は席に荷物を置いてトイレを済ませることにした。

上映20分前。
おかしい、私以外の観客が誰も来ない。
10周年作品なのに? あんなに面白そうな予告だったのに?
いやな予感がした私はもう一回トイレに行った。

上映15分前。
おかしい、私以外の観客が誰も来ない。
10周年作品だよ? あんなにTVで取り上げられてたんだよ?
あれだけ気になる予告編がCMでバンバン流されてたんだよ?
(10周年という事だったからか、今よりもっとバンバン流されていた)
私はもう一度、トイレに行った。

上映10分前。
きっと誰か来るはず!
私は一縷の望みを抱きながら真ん中後ろ側の一番いい席で映画上映よりも私以外のお客さんを待った。
このままだと私はアニメ映画を1人で見る痛い大学生である。そんなにコナン好きという訳でもなく、当時アニメも観なくなり始めた時期だったのに。

上映5分前。
もうここまで来ると私は悟りの境地を開いていた。
これはもう、私以外誰も来ない。
きっとGW明けの平日を選んだのがいけなかったのだろう。
ちびっこや家族連れやコナンファンはGW中にもう観終わっているに違いない。
少しずつ暗くなる館内、鳴り響くブザー。
観客席にはGW明けの平日お昼にアニメ映画を観に来た彼女もいない大学生1人。
かくのごとくして私は、真ん中後ろ側の一番いい席かつ、観客は私1人という映画館貸し切り状態で劇場版名探偵コナン10周年作品「探偵達の鎮魂歌」を観る事になった。

映画は、まあまあ面白かった。


「探偵達の鎮魂歌」という割に、探偵が小五郎と平次と白馬くらいしか出てこないし、何故か怪盗キッドが出て来てたし、予告編でコナンに意味深な電話をかけてきた男は黒の組織と全然関係なかった上に「そんな理由かい!」という理由でコナン=工藤新一に気付いたという残念なものだったが、バイクと銃との戦いあり、謎解きあり、全部終わったと思った後に元太が外していなかった爆弾を誰もいない所で爆破させるという本当に必要なのか?というアクションシーンありでまあまあ面白かった。

ただ、歴代の劇場版作品と比べるとガッカリ感は否めなかった。


「時計仕掛けの摩天楼」とか「ベーカー街の亡霊」とかのような名シーンもなかったし、劇場版の割に登場キャラクターがいつもの面々だったし、特にこれといって記憶に残らないほどストーリーも薄味だった。
B’zのエンディング「ゆるぎないものひとつ抱き締めていたいよ」が流れる中、1人真ん中後ろ側の一番いい席で観続ける私。その周りで席を立つ人は1人もいない。いや、私以外に観客は1人もいない。
映画が終わって館内が明るくなっても、当然観客席にいるのは私1人だけだった。
映画終了のアナウンスが流れ席を立つ私は貸し切りだった映画館のホールを見る。
多分人生でもう二度とこんな贅沢な体験はないだろう。映画館側も私しかいなかったのによく映画を流してくれたものである。普通に赤字だったんじゃないかな・・・
「お疲れ様でした」と声をかけてくる映画館のスタッフ。
「ホントだよ」と心の中で返事を返して、パンフレットも素通りし、私は映画館を後にした。
その後、今まで金曜ロードショーで(多分)「探偵達の鎮魂歌」が放送されていないのはきっと、興行収入を見る限り映画が大コケとまではいかないまでもガッカリ感が否めなかったからだろう。
他の作品は何回も放送されてたりするのに、なぜか「探偵達の鎮魂歌」は放送されてない(多分)。
それでも私はまあまあ楽しかった。
映画館を独り占めという一生できないような体験もできたし、映画自体はまあまあ面白かったからだ。もう一回観るか?と聞かれたら迷わずNOと答えるが。
何はともあれ、この時はまだ高木の空回りに終わっていた高木・佐藤の関係が今年の劇場版でくっつくとあってめでたしめでたしである。どうせまた爆破シーンのある映画だろうから、高木刑事が擦り傷だらけ煤だらけになるのが目に見えてるが・・・
さすがにもう映画館に1人で観に行くような愚は犯さないが、ノベライズ本でも出てたらチラッと立ち読みして、1年後くらいに金曜ロードショーで放送されたらチラッと観たいものである。

あなたが読みたいと思ってた文章、書きます。