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明太子スパゲッティと闇鍋。 「カモフラージュ」松井玲奈

 明太子スパゲッティ。それは背徳的な食べ物。
明太子と海苔がパスタに絡み合いその風味と香りが官能的に食欲を刺激する。
大盛りで食べたくなる幸せな食べ物だ。
その明太子スパゲッティを「このうえなくおいしそうに書ける人」と作家の森見登美彦に言わしめたのが作者である。
デビュー作となった短編集の中にはおいしそうな食べ物と、人間の生々しい欲望と内面が描かれている。
メイド喫茶で働く事に憧れ高校卒業後に上京した女性を描いた「いとうちゃん」では、太ってしまった事により人気がなくなって苦しむ「いとうちゃん」の、ダイエットと食欲との葛藤が描かれる。
太っちゃいけない。でも食べたい。
不安とストレスから料理をしてしまう、食べてしまう現実の自分と、憧れていたメイド喫茶のメイドとの理想に苦しむ「いとうちゃん」は冷やかしで来た女子高生の客に「あんなブスなメイドもいるんだね」「ブスっていうか、デブ?」「もはやデブスじゃん、それ」「それそれ、デブス」という心無い言葉に傷つき限界を迎えてしまう。

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