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車ぶつけちゃった ~急変~

自宅でくつろいでいた男性。
 
(あっ、買い物に行くの忘れてた。
 歩くの面倒だし…車で行くか
 
車に乗り込みパワースイッチを押す。
そして通りの様子をうかが
 
左から自転車のおばあちゃんが、
こちらに向かってきている。
 
(これは行かせよう…どうぞどうぞ)
 
おばあちゃんは手前で止まり
自転車を降りてこっちの動きを待ってる。
 
(いやいや、危ないから先行って!)
 
運転席から行って良いよと、
手で合図を送る
 
おばあちゃんは手を差し出し、
お先にどうぞのポーズをする。
 
(なんだよ!この時間!
 もういいよ、いいのね?!
 行くよ!)
 
左にハンドルを切り車を発進させると、
突然、後ろでにぶい音がする。
 
ガツン!
 
軽く押し出されるような衝撃と同時に、
大きな怒号どごうが飛んでくる。
 
「お~~い!!
 おいおいおいおい!
 何してくれてんだぁ!!
 あ゛~ん?!」
 
右後部にぶつかった車から、
その運転手と思われる人物が、
凄い剣幕けんまくまくし立ててきた。
 
「どこ見て運転してんのあんた?!
 右見て左見てって教習所で、
 習わなかったんですか?
 あ゛~ん?!」
 
「すいません。
 それは習いましたけど、
 ちょうど自転車のおばあちゃんがいまして、
 道をゆずり合いをしてたらこんなことに」
「おばあちゃん?誰それ?」
 
「いや、そこに…あれ?
 いない?!さっきそこに居たのに…
 あ、あっ、あそこ、
 あんな遠くまで…凄い勢いでこいでる…」
「そうなことはどうでもいいんだよ!
 どうしてくれんだよ車!!
 まだ買って5年目なんだよ!!
 
「結構、乗られてますね」
「あ゛~ん?!なんだと!!」
 
「すいません。
 私の不注意です。
 修理代は弁償しますので」
「当たり前だ!!」
 
「じゃあまずは警察に連絡を…」
「ちょっと待てぇ!!」
 
「何ですか?」
「警察は呼ぶな」
 
「え?!どうしてですか?
 でも呼ばないと保険とか」
「もし警察を呼んで、
 俺にも責任があると言われたら、
 全額弁償してもらえないだろうがぁ!」
 
「まあ、状況によっては…そうかも」
示談じだんにしろ示談に!」
 
「いや、でも後から揉めそうですから、
 警察呼びましょうよ~。
 あとはその調書を見て保険会社が、
 全部してくれますから~」
「お前、自分が悪いと思ってないのか!!」
 
「思ってますよ。
 自分が左右確認しなかったのも、
 わかってますけど……。
 警察に事故を報告しないと…
 被害者でも罪に問われることも、
 あるんですよ」
「え?!そうなの?
 じゃあ、呼んで…すぐ呼んで」
 
電話をかける。
 
「すいません。車両事故です。
 住所は……はい…
 救急車は大丈夫です。
 私は飯坂です。
 はい。はい。よろしくお願いします。
 ……すぐ来てくれるそうです」
「あれ?飯坂さん?
 もしかして東京商事の飯坂さん?」
 
「はい、そうですけど…」
「私です。
 取引先の上林工務店角野です。
 いや~こんな所でお会いできるとは、
 その節は大変お世話になりました」
 
「あ、ああ、上林工務店の角野さん。
 いや~久しぶりですね~」
「こんな所で奇遇きぐうですね。
 どうしたんですか、こんな所で?
 
「あなたの車とぶつかったでしょ!」
「あ~そうでした。
 大丈夫です。
 私の方で何とかしますから
 
「どうしたんですか急に気持ち悪い」
「いえいえ、飯坂さんの商社には、
 大口案件を何件も回して貰ってますので、
 ぶつかったこと揉み消しましょう!
 
「そんなのできませんよ!
 もう110番しちゃったし…
 ほら、もうパトカー来ちゃいましたよ」
 
「どうも、○○警察署豊田です。
 まずお話聞かせて下さい」
お巡りさん!!
 私が犯人です!!
 この人に罪はないんです!!

 
「え?え?え?!
 どうしたんですか、一体?
 これ車両事故ですよね?
 傷害事件の間違いですか?」
「いえ、車両事故で間違いありません」
 
「私が悪いんです~。
 飯坂さんはなん~にも悪くない。
 私が後ろから突き飛ばしたんです~
「やっぱり傷害ですか?」
 
「だから違います。
 この人、気が動転してるんです
 角野さんちょっと下がってて下さい。
 私が説明しますから」
「え~と、あなたは?」
 
「私は電話した飯坂です。
 私の不注意でそこの角野さんの車と、
 接触事故を…起こしました」
「じゃあ、あなたが加害者ですね」
 
いえ違います!私がぁ~!!
「黙ってて下さい角野さん。
 会社に言いますよ」
 
「はい…」
 
「事故の状況を詳しく知りたいのですが、
 ドライブレコーダー
 お車に付いてますか?」
「私のに付いてます」
 
「では飯坂さん、
 映像出してもらえますか?」
「わかりました。
 ちょうど10分前ぐらいかな…
 出ました!」
 
「…はいはい…ん?…この人は?
「これは道の譲り合いをした、
 自転車のおばあちゃんです」
 
「そして…ゆずった…行かない…
 ゆずった…行かない…しつこいですね
「はい、私も少しイラッとしました」
 
「そして…諦めて発進…ここで衝撃!
 車がぶつかって…おばあちゃん
 表情激変……
 凄い顔で逃げてきましたね」
衝撃映像ですね」
 
「そして…今度は…後方から…
 返済期限ギリギリの借金取りのような
 ガラの悪い人
、出てきましたよ」
「それは私です」
 
「そのスジの方ですか?」
「いえ、工務店勤務です」
 
「なるほどなるほど。
 これを見る限りでは、
 飯坂さんがおばあちゃんに気を取られ
 右側から来た角野さんの車に、
 気付かなかったってことですね」
「はい、間違いないです」
 
「あれ?ちょっと待って下さい。
 角野さん、あなたの車にも
 ドライブレコーダー
 付いてるじゃないですか?」
「あ、はい」
 
「一応、念のために、
 見せてもらってもいいですか?」
「ああ、いいですよ。どうぞ」
 
「はいはい…こっちは…
 この通りを真っ直ぐ走行して…
 ん?…なんかモソモソしてますね…
 飴をポケットから取り出して…舐めた。
 そして…そろそろ飯坂さんの車が…
 見えてきましたね…ん?…
 またモソモソして…今度は何か…
 探してる?…あ~スマホ
 胸ポケットから…取って…
 慌てて…落とした!
 はい、ぶつかったあ~」
 
「飯坂さん、
 何ておびを申し上げればいいか…」
「お前も前方不注意じゃねえか!!」
 

このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。 

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