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嫌がるあの人の精神科受診を正当化してくれる法律があります

病院上部の外観


精神科や心療内科に行ってほしい人がいる方、受診を勧めたけど拒否されて困っている方へ


こんにちは。

名古屋で社会保障制度の調査代行をしている社会福祉士の稲山です。

一度呼ばれてみたい名前は「わくわくさん」です。




精神的に不安定なので病院に行ってほしい、医者に診てもらって薬を飲んでほしい、それなのに「病院に行ってくれない人」がいて困っている。そんなあなたを救ってくれるかもしれない制度があります。

精神保健福祉法 第34条「移送制度」

https://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/06/dl/s0610-4a_0006.pdf



「移送制度」利用の流れ

精神科治療を拒否する人がいる。



保護者が保健所に相談。
※この制度は都道府県知事の責任にて行われます。保護者の同意が得られない場合も、都道府県知事の責任において執行できます。



保健所職員が事前調査を行います。



精神保健指定医が自宅を訪問し本人を診察します。


「病院に行ってくれない人」を応急入院指定病院に医療保護入院もしくは応急入院させることができます。



「移送制度」のデメリットは…

・保健所による事前調査や精神保健指定医の診察などの手続きが必要です。

・保健所その他関係機関の負担が大きいです。そのため「少し様子をみましょう」と制度の利用に消極的になることがあります。

・手続きを踏んだとしても「病院に連れていく方法」は「力ずくで…」ということになります。

手続きを踏むことは「合法的に受診をさせることができる」ということです。とはいえ、手続きを踏んだからといって本人の「病院に行きたくない」という気持ちには変わりありません。実際に本人を病院に連れていくのは、保健所その他関係機関の方々です。



「移送制度」のこれまで、そして現在はどうなっている?

この「移送制度」は活用されていません 。理由は前述したデメリットによるところが大きいと思われます。家族などまわりの人たちは、どうすることもできず我慢してしまうということが多いようです。



移送制度のほかに「病院に行ってくれない人」を病院に連れていく「民間移送業者」があります。

「保健所が民間移送業者を紹介する」という話を聞きますが、業者自体が少なく、料金も高額なので実際の利用事例は極めて少ないです。参考までに「民間移送業者」について記載しておきます。※内容は実際に問い合わせたものです。


〈警備会社〉
「病院に行ってくれない人を病院に連れていってほしい」という問い合わせ先でよく聞くのが「警備会社」です。しかし、警備会社大手二社に問い合わせをしてみましたが、精神科治療を拒否する人の移送は行っていないとのことでした。回答をしてくださった担当者は「警護、現金輸送が業務。15年間勤務しているが精神科治療を拒否する人の移送に関する問い合わせは、これまで一度もない」。


〈東海地方の民間移送業者〉
・病院への移送について本人と話をして、同意が得られなければ帰ります。

・力ずく、無理やり連れていくことはできない。料金は職員3~5人で約20万円。



〈関東地方の民間移送業者〉
・移送の依頼を受ける条件は①病院との話し合いが済んでいる②病院が医療保護入院として受け入れる。

・本人と話をして同意が得られない場合は、職員が本人の体を抱えて車に乗せます。

・料金は女性の場合で約35~40万円。性別や体格、その他状況で料金は変わります。


〈東北地方の民間移送業者 〉
・移送の依頼を受けるには、病院の受診予約が取れていることが前提です。

・受診について本人と話をして同意が得られない場合は、職員が両脇を抱えて部屋から出します。

・移送時の職員数は3人程度。

・料金は同じ県内なら約10万円、遠方(関東、東海地方など)になると約70~80万円と金額が上がります。



結論

病院に行かない人がいて困っているあなたを救ってくれるかもしれない制度は、精神保健福祉法 第34条「移送制度」です。

保健所などの行政機関は制度の利用に消極的になるかもしれませんが、法律で決められている以上、制度の利用を拒否することはできません。

病院に行かない人を受診させるのは保護者だけでは大変ですし、民間移送業者であれば、それなりに費用がかかります。いざという時のためにこの制度を覚えておいてください。



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