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『旧市町村日誌』35 船に乗るとき 文・写真 仁科勝介(かつお)

今回の旅でも離島へ訪れていますが、8割は行ったことがあって、2割は一度も行ったことがない、という具合です。そして、甑(こしき)島は一度も行ったことがありませんでした。旧市町村のまちは存在しているので、今回訪れる機会に恵まれたわけです。

 
船に乗るまでの時間は、大変緊張します。バイクを港のどこに停めるか、どうやって券を買うか、港によって違うからです。甑島へ向かう串木野新港の場合、乗船の始動はかなり早く始まりました。新幹線ではなくて、飛行機に乗るぐらいの時間の余裕が必要なくらい。車両の乗船開始も、出港時間よりも30分以上早いスタートでした。
 
しかも、予定で聞いていたその時間よりも実際は早く始まって。これも、時間を遵守するときと、早くなるとき遅くなるとき、全パターンあります。でも、バイクは自動車よりも先に乗船することが多いので、ちゃんとヘルメットをかぶってすぐにスタートできる姿勢で待機しておく必要があって、準備が遅いと注意されることもしばしばです。

 
車両の乗船が始まると、大抵の場合は「ピッ! ピッ!」と笛で案内されます。誘導に従って進むと、別の乗組員さんが待ってくれていますが、バイクの停め方の指示も毎回違います。「サイドスタンドギアローで!」とか「センタースタンドハンドルロックで!」とか、バイク用語を早口で言われます。しかも、車両甲板はかなり騒がしいので聞き取りづらいです。集中して聞いて従います。
 
ちなみにぼくのカブは、サイドスタンドだと重さで倒れやすいので、その場合は固定してもらうまで離れずに見守ったりします。一度、倒されてしまって、ミラーが曲がったときは、乗組員のおじさんは「てへへ」って感じでした。大丈夫ですよ、カブは強い子です。

 
買っておいた乗船券は、乗船時に提出するのか、船内で回収されるのか、船から出るときに渡すのか、これも毎回違います。甑島の場合は、船から出る直前に回収される、というまあまあ珍しいケース。たぶん、券の回収に明確な決まりごとはなくて、「どうするのがええじゃろうか」と船会社ごとに話し合って、自然と決まっていくんじゃないのかなと思っています。
 
その後、客室へと上がるわけですが、徒歩乗船がすでに始まっている場合と、そうではない場合があります。徒歩乗船がまだなら、二等客室の席も選びやすくてラッキーです。一方で、徒歩乗船が始まっていれば、着く頃にはいい席が空いていることはほとんどありません。いい席から埋まる傾向は、どの船でも共通しています。
 
時計を確認すると、時間がものすごく経っているんですよね。きっと船に乗るときに集中しているからでしょう。


甑島での船の往来にて。


仁科勝介(かつお)
1996年生まれ、岡山県倉敷市出身。広島大学経済学部卒。
2018年3月に市町村一周の旅を始め、
2020年1月に全1741の市町村巡りを達成。
2023年4月から旧市町村一周の旅に出る。


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