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『もう一度旅に出る前に』25 気づかされる 文・写真 仁科勝介(かつお)

展示が終わって一週間経つ。こういうとき、「あっという間に一週間だ」と体が感じることはわかっているので、先週この連載の記事を提出しなかった自分に腹が立つ。きっと書けたはずだもの。頭の中を整理させる時間なんて、一週間経っても大きくは変わらないのだ。むしろ忘れていくわけで、自分に言い訳をしていたら前には進めないよ、と口酸っぱく自分に言いたい。
振り返れば、展示の最中は誰かとお話をするか、ぼーっとするかの二択であった。一人でも会場にお客さんがいれば、パソコンの作業はやめていたので、お客さんと話す前にぼーっとする時間も多かった。そのときにあれこれ考える。これからもっと写真を撮りたいとも思うばかりだったし、時間はなんだろうってよく考えた。撮ることも展示をすることも、自然に時間を選択している。やはり人生は時間の選択に思われる。
二人ほど、展示にアドバイスをしてくださった方がいた。どちらの方も写真の業界に長くいて、ぼくが上京したときにアシスタントの仕事を振ってくださったり、面白い現場に連れて行ってくださったり、とてもお世話になっている方だった。だからこそ、上から目線ではなくて、同じ写真を撮る立場として、先輩方が見ていることを話してくださって、それがものすごくありがたかった。その5分ほどの話を聞くことが、今回の意義にも感じられた。同時にそれは、もし君がそっちの世界で勝負したいのならば‥‥ということでもあった。
つくづく、自己責任の世界にやって来たように思う。今までは写真集も個展も、わからないことばかりだった。でも、それではいけないような気がして、自分でゼロからやってみたくて、結果、いろんなことが見えてきた。まだまだ見えていない世界にも包まれている
けれど、今回初めて知った世界は、ぼくにとってはずいぶん新しく大きなものだった。言い訳できないところに立とうとしている、とも思った。さすれば、勝負する相手はとことん自分自身になってくる。一見突き詰めているように見えても、努力しているように見えても、その表面が本質とは限らない。もっと脆くて、身近で、ささやかで、「そんなことが?」というようなことにとても大切なことがあって、そこに向き合わなければいけないのだ。怖さもあるが、怖がってはいけない。

たぶん、今の自分に何が足りないのか、ということを知るためには、ただ考えるだけではいけないらしい。実際に何かをやってみたときに初めて、気づかされるらしい。結果のためにだけ、何かをやることも違うらしい。何も満足できないことを確かめるために、何かをやり続けるらしい。どうやらぼくはそうやって、生きてみたいらしい。


仁科勝介(かつお)
1996年生まれ、岡山県倉敷市出身。広島大学経済学部卒。
2018年3月に市町村一周の旅を始め、
2020年1月に全1741の市町村巡りを達成。

HP|https://katsusukenishina.com
Twitter/Instagram @katsuo247

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