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『旧市町村日誌』41 出会い方あれこれ 文・写真 仁科勝介(かつお)

旅先での初めましての出会い方はいくつかある。

ひとつは完全に偶然といって良いような出会い方で、道端や公園で挨拶をして会話につながったり、お店の人と会話したりするようなケース。お互いに相手のことを知らないし、深いところまで入り込むことはしないままに、お別れすることが多い。

 事前に連絡を取り合っているときは、仲良くなりやすい。

いくら旅という偶然性の道を走っているとはいえ、多少の道路標識がなければ不安なように、初めての誰かと会う心づもりは、自分をラクにしてくれる。相手も同じだろう。それで食事に行ったり、お店の方に会いに行ったりするということも何度かあったし、そうした方とは今でもつながっていることが多い。

 

もうひとつ、誰かの紹介を通して初めての人に会う、というケースがある。たとえば「こんな面白い知り合いがいるんです」という流れだ。この場合、ぼくはその仲介者の方(仲人と呼んでみる)を知っていても、相手のことを存じ上げていないことも多い。仲人に案内してもらうときも、直前まで誰とお会いするのかわからないまま「初めまして〜」と挨拶をしたり、仲人が不在で、「この方の紹介で来たのですが〜」とドキドキしながら会ったりしたこともある。

 

そして、この仲人を通した出会いを何度か体験していると、仲人と相手の信頼関係次第で、出会いが良いものになるかどうか、左右されていく気がするなあと感じるようになった。

 仲人を通して初めて会う相手こそ、ぼくのことをまったく知らないということが多い。相手は相手で、急に初めましてでぼくと会うのだ。怖さもあるはずだし、メリットを感じなければ、時間の無駄になるばかりである。だからぼくも相手も唯一信頼できるのは、仲人ということになる。そして、仲人と相手の関係性が良ければ良いほど、相手は「あなた(仲人)が会わせたいと言うのなら」と、信頼して会ってくれる。仲人の立ち会いがなかったときも、仲人への信頼が厚ければ、「あの人(仲人)にお世話になっていますから」や、「あの人すてきですよね」と会ってくれて、共通の話題同士でつながったような感覚で仲良くなれるのだった。

 つまり、今自分は旅人なので、人と人をつなぐ機会はあまりないけれど、いつかあの人にこの人を紹介したい、という仲人の立場にいざなったとき、ぼくという人となりが見られるのだろうなあと思う。

もちろんお互いのタイミングや都合があるので、一概には言えないけれど、あまり信頼されていなければ、たぶんつなぎたい人同士はうまくつながらない。それは彼ら彼女らに原因があるのではなく、自分に原因があるのかもしれないのだ。つながってほしい人同士がつながってもらえるかどうかは、あまり関係ないように見えても、仲人と片方の相手、仲人ともう片方の相手の関係性が大事で、だから仲人になったときに信頼してもらえるような生き方をしたいなと思う。




仁科勝介(かつお)
1996年生まれ、岡山県倉敷市出身。広島大学経済学部卒。
2018年3月に市町村一周の旅を始め、
2020年1月に全1741の市町村巡りを達成。
2023年4月から旧市町村一周の旅に出る。


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