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『もう一度旅に出る前に』34 立春 文・写真 仁科勝介(かつお)

2月4日の立春がやって来ると、「あと戻りできないな」と感じる。「立春」を迎えたら、もう引き返せない。プロ野球では2月1日に春季キャンプが始まることを「球春到来」と呼ぶが、選手もこの日を迎えるにあたって、腹を括っているのではないか。シーズンは2月から10月まで長い。それに似たようなことを思う。

と、春がはじまる気持ちで、やりたい計画をいくつか。基本的には旅をしながら、Webサイトの『ふるさとの手帖』を更新したい。全市町村を巡ったときは、旅の完成によってサイト上で市町村を検索できる、という逆引き辞典の夢があったけれど、旧市町村はもっと複雑でわかりにくいので、今回あまりそのことを意識しすぎる必要はないと思う。とはいえ、もし可能なら、できるだけ現実の時間に沿って、旅を更新したい。世の中には面白い連載がたくさんあるけれど、それはとんでもなくすごいものなのだということを、ぼくはここ数年で感じるばかりだった。ただ、だからと言って自分が面白いものを残せるほど、世の中は甘くない。ので、そこそこ、こそこそ、にこにこ、続けたい。ツイッターやインスタグラムも更新するだろうけれど、たぶん、おおもとはWebサイトから。しっかり残せるからね。

あとは、まるでわからないけれど、もし旅を終えられる日が来るなら、それをなんならかの形にまとめられたらいいなあ。と、思うだけ思うことに、越したことはない。旧市町村や政令指定都市の区を、濃縮してまとめたもの。写真集としてまとめたもの。いずれも自分で見てみたい。それに、悪筆でいいから、旅そのものを言葉でまとめられるなら、まとめて欲しい。ただ、「ちょっと違うな」と途中で、自分に幻滅してしまう可能性もある。「こんな旅です」という言葉の中に、自分語りが入るなら、あんまり読みたくないから。その要素が入っていないなら、読んでみたいなあ、って。私的な感情を排して、「淡々とまとめるべきだ」というわけではない。感情は入っていてもいい。でも、自分を簡単に表そうとして、言葉を粗末にしてしまうぐらいなら、やめなさいと自分に言っておきたいのだ。旅が続けば、なにかは「書ける」かもしれないが、「書ききれる」こととは違うだろう。

こうしたいな、こうなったらいいな、とイメージがいくつかあって、書いておけばやがて現実になるのでは、と思っているとしたら、大間違いである。ここからいざ、「やっていくこと」の本番だ。つべこべ禁止令だ。ちいさくつよく、徹底的に。それに、ゴールを目指すだけではなくて、その先のもっと先、に向かって走り続けることの両方を、取り組まなければならない。終わりなき旅のはじまり、春である。



仁科勝介(かつお)
1996年生まれ、岡山県倉敷市出身。広島大学経済学部卒。
2018年3月に市町村一周の旅を始め、
2020年1月に全1741の市町村巡りを達成。

HP|https://katsusukenishina.com
Twitter/Instagram @katsuo247

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