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『旧市町村日誌』 46 夏の始まり  文・写真 仁科勝介(かつお)


全力疾走の夏が始まりました。もちろん、これまでの旅も全力ですが、セミが元気に鳴き出してからの日々は、日差しをたっぷりと浴び、汗をかき続けます。ヘルメットで髪の毛も蒸れて、一日中、濡れています。

 

それでも、毎日とても楽しい。また一週間もすれば違う感情になっているかもしれないけれど、今自分さえしっかり気を強く、明るくこの旅を楽しめていたら、新しい景色に出会い、旅が進んでいく。この“進んでいく”という喜びは、正直暑さを問題にしないのです。

 暑さを軽く見ているのではなく、確かに暑いけれど、それでも旅を進められる喜びがあれば、あまり暑いとか気にならないという意味です。

 さらに補足をすれば、標高の低い都市部ではなく、中山間地域を進んでいるので、そのわずかな地域性の違いも大きいと感じます。とにかく、日陰を走っている瞬間が一番涼しいです。

 

今は岡山県を進んでいますが、地元なのに、毎日が新鮮そのものです。地元からは遠いと感じていた町も、その地域周辺で宿を取ることによって、物理的な距離感が圧倒的に近くなり、急に訪れやすくなるのを感じます。

 

いかに普段、車や電車、徒歩での移動にかかる時間が、無意識のままに選択の優先順位に影響しているか。話を大きくすれば、そうした物理的な移動距離があるからこそ、それぞれの土地で発酵していく文化や習慣があるということも事実でしょう。

 こうした傾向を理解した上で、理屈をこねず、日本という土地を広く見ることができたら、この小さな国も無限の広がりを見せます。もちろん、国境をまたいでも同じ。この地球を広くするも狭くするも、自分の心ひとつ。



仁科勝介(かつお)
1996年生まれ、岡山県倉敷市出身。広島大学経済学部卒。
2018年3月に市町村一周の旅を始め、
2020年1月に全1741の市町村巡りを達成。
2023年4月から旧市町村一周の旅に出る。


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