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穴 ~FF内から失礼します!!~ 第一話「ハッテン場(前編)」@サートー


※この小説は、作者のTwitterでのFF(フォロー/フォロワー)関係にある方々をモデルにしたお遊びフィクション小説です。フォロワーさん達をモデルにしていますが、実際の人物象とは異なる事をご了承の上でお読み下さい。


【ハッテン場】

発展場(はってんば)とは、男性同性愛者の出会いの場所である。カタカナでハッテン場と表現されることもある。(Wikipediaより)


『近々、福岡に出張します。良かったら、オススメのグルメを教えて下さい。宿泊先は空港の近くです。』

仕事で福岡へ行く事が決まり、Twitterで交流している福岡在住のフォロワーFさんにDMを送った。出張なんて滅多に無いし、せっかくだから九州の美味しい物を堪能したいと思ったのは自然な発想だった。

しかしそのDMの返信には、詳細なグルメ情報に混じり、とても毛色の変わった一文が添えられていた。

『空港の近くなら、ハッテン場になってる公園が近いです。お時間があったら行かれてみてはどうでしょうか?車が無いとアクセスし辛い場所なのが難点ですが。』

俺は趣味で雑記ブログをやっていて、そのブログの一番人気はハッテン場への潜入記事だ。このFさんと親しくなったきっかけも、その記事を面白がってくれたからだった。

「ネタになるかもしれないな…。」

公園名を検索してみると、宿泊先のホテルから歩けない距離でも無さそうだ。Fさんへの返信に、『前向きに検討します』と添えた。


・・・・・


出張自体は月曜日からだったが、土曜の夜から前乗りした。今回の出張は本来ならば俺の仕事では無いという事もあり、会社の方が「せっかくだから観光でも」と気遣ってくれたのだ。

とても助かる事に、ホテルには宿泊者が無料で利用出来るレンタサイクルのサービスがあった。チェックインを済ませるとすぐに自転車を借り、Fさんオススメグルメの一つ『天ぷらのひらお・空港店』に向かう。

次々と目の前に出現する揚げたての天ぷらとその素晴らしいコスパに感動し、あっという間に二人前をたいらげた俺は、腹ごなしがてら件(くだん)の公園まで自転車を漕ぐ事にした。

さすがに初日からハッテン場に突入する元気は無いが、下見をしておくのも悪く無いだろう。

知らない街で自転車を飛ばす爽快感と、フェンス越しに見える夜の空港の非日常感。食べ過ぎで火照(ほて)った身体を、秋の夜風が包む。

目的地がハッテン場とは思えない程、良い気分だった。

「少し喉が渇いたな…。」

おそらく公園の最寄りであろうコンビニに寄り、トイレを済ませてから大好物のカルピスウォーターを買った。

店先に停めている自転車の方に歩きながら、ペットボトルの蓋を開ける。カルピスを飲むために自然と顔を上げると、今更ながらに星空が一際綺麗な事に気が付いた。空港の近くなので緑が多く、余計な明かりが少ないのだ。

ああ、何だか今夜は良い夜になりそうだ。

そう思いながら半分ほど飲み干し、自転車のハンドルに手をかけたその時。

「あの…すみません。」

突如、背後から声をかけられた。

振り向くと、そこには二十代後半と思わしきセミロングヘアの女性の姿があった。もちろん、知り合いでは無い。

反応に困って黙ったままの俺に、女性は丁寧な口調で話し出した。

「突然すみません。あの…違っていたら大変申し訳無いんですが…。」

一瞬、その語り出しのセリフからもしかしたらFさんではないかとも思ったが、Fさんはアラフォーだと公表しているので違うなと、すぐに頭の中で打ち消す。

それとほぼ同時、相手の女性が言った。

「お兄さんは、ゲイの人…でしょうか?」

投げかけられたその質問を俺の脳みそが理解するまで、少しの時間が必要だった。

その間も、相手は畳みかけるように話を続ける。

「あの、私、行方不明の兄を探していて、その兄というのがゲイで…あ、えっと、ゲイと知ったのは最近なんですが…すみません、長くなるので省略しますね…とにかく、兄が今夜この近くの公園に居る可能性が高いんです。お兄さんも、あの公園に行かれるんですか?」

「ええっと…とりあえず質問に答えますね。まず、自分はゲイでは無いです。」

 俺がそう答えた瞬間、彼女の顔にみるみるうちに羞恥の色が広がった。

「すみません、忘れて!忘れて下さい!!」

あまりの恥ずかしさから今にも駆け出しそうな彼女に対し、慌てて言葉を続ける。

「でも公園には行きます!!」

「なぜ!?」

彼女の表情が、羞恥から驚愕に変わる。

この不思議な会話が成立するという事は、その公園にどんな人が集まって、そしてどんな事が行われているのか、彼女も理解しているという事だ。

きっと彼女は、その行方不明の兄というのを俺に探して欲しいと言うのだろう。どこまで協力出来るかは分らないが、その願いは受け入れよう。

あまり化粧っ気の無い可愛らしい顔立ちと、Gパンに黒いVネックのカーディガンというカジュアルな服装。見た感じ、どこにでも居るごくごく普通の娘さんだ。

深夜のコンビニの駐車場で知らない男に話しかけるなんて事自体、かなりの勇気が必要だったろう。その上その話の内容がコレだなんて、と、俺は見ず知らずの彼女の事をとても不憫(ふびん)に思ったのだった。

もちろん、彼女が可愛らしい人だという事実も重要なのだが、下心抜きでも親切心が沸いた事も本当である。それに、この思いがけない出来事がブログのネタになるかもしれない。

俺は自分の目的を簡単に説明し、お兄さんを探してきて欲しいという話であれば微力ながら協力すると申し出た。

しかし彼女の口から出てきた言葉は、耳を疑わざるを得ないものだった。

「ありがとうございます!私をハッテン場に連れてって下さい!!」


・・・・・


どうしてこうなったのか。

散々説得したが、結局彼女と連れ立ってハッテン場の公園へと向かう事になってしまった。

問題は山積みだ。

まず、行き先はゲイの方々のハッテン場である。ゲイサウナと違い、公園のような野外のハッテン場では女性の姿を全く見ないワケでもない。けれどそれは、犬の首輪を付けたM男を引き連れた女王様のお散歩であったり、何も知らずに迷い込んできたノンケのカップルが慌てて引き返すといったハプニングの類いだ。

『ごく普通の可愛らしい女性』を連れて、それもハッテン中のゲイの人達の人相を確認して回る事など、果たして可能なのだろうか?

危険な目に遭うかもしれないし、そもそも彼女は『自分の肉親がハッテンしている最中』に遭遇してしまうかもしれないのだが、それは分っているのか。

そして、俺はあんなブログを書いてはいるが、決して性マイノリティの人達を笑いものにしたり迷惑をかけたいわけではない。あくまで、そっとアンダーグラウンドな世界を覗かせてもらって、それをある種のエンタメに昇華したものを提供したいだけなのだ。

ハッテン場は、普段世間から抑圧されている彼らの憩いの場だ。自分のせいでその雰囲気を壊したり、気まずい思いをさせたくは無い。

しかし一方で、彼女の主張も納得のいくものだった。

まず、俺が1人でお兄さんを見付けて話しかけたところで、見ず知らずの俺は当然警戒されるだろう。そして、仮にコンビニで待っている彼女に「お兄さんを見付けた」と連絡した場合、彼女はたった1人で夜の公園に突入しなければならない。それは色々な意味で大変危険だ。

更に彼女が言うには、そのお兄さんは女装をしている可能性が高いというのだ。いわゆる「女装子(じょそこ)」というジャンルの癖(へき)なのだろう。女装後の写真があるわけではないので、俺に普段の写真を見せた所で探すのは難しいという話だった。

様々な懸念事項に頭をフル回転させつつ、公園への夜道を彼女と並んで歩く。自転車を押している俺の頭の中は必死なので、つい無言になってしまっていた。

「あの~。」

沈黙を破ったのは、彼女の方だった。

「まだ、名乗ってもいませんでしたね。すみません~。」

少し間延びをしたような喋り方の彼女は、行き先を本当に理解しているのかというくらい呑気そうだ。先程の『健気で必死』といった第一印象がガラッと変わる。

「私、天星涼芽(あまぼしすずめ)と言います。普段は信州に住んでいて、兄を探してこっちに来ました。お兄さんは?」

「あ、自分はサートーです。福岡には出張で来ていて、普段は東京でサラリーマンやってます。」

「サラリーマンなんですね。カッコイイです!」

「カッコイイ…ですか?」

「私の周りの男の人、大体無職なので。父も、今から探しに行く兄も無職です。あ、ちなみに私も二年前から無職です~。」

そう言って彼女は、会話の内容に全くそぐわない無邪気な笑顔を浮かべた。正直、ドキリとする程可愛かった。

今からハッテン場に行くノンケの女性がこんなにも無邪気に可愛く笑うなんて、あり得るだろうか。あまりにシュール過ぎる。

俺は、彼女の放つ不思議な大物感に飲み込まれ、もうゴタゴタ言わずに彼女の手伝いをしよう、と、腹を括(くく)った。




つづく


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※※追記※※

何と!声のプロでいらっしゃる、宅録ナレーターの「野嶋らん」さんと、サートーさんご本人の演出で一部音声ドラマ化いたしました!!

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☆Special thanks☆

主人公:サートーさん

ヒロイン:あまぼしすずめちゃん

 and...

後編で誰が出てくるかお楽しみに♪


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