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アカデミー賞映画を物語技法オタクが見たら「キャラ」の力を思い知った話【コーダ あいのうた感想】

技法を語ってる場合じゃねえ!
キャラなんて深いほど良いんだよ!

……そんなことを思い知らされた映画でした。

ぜひ、キャラについて注目していただきながら実際に見て!と言いたいのですが、それだとあまりにもすぎるので。
今回は技法オタクの素人漫画描きが、技法の観点から「コーダ あいのうた」の感想を書いていこうと思います。

※未視聴の方でも楽しめる記事のつもりですが、性質上若干ネタバレを含む可能性があります。ご了承ください。

愛嬌のあるキャラと完璧なキャラ立て

この作品のキャラの特徴は何といっても「愛嬌」があること。
そしてそんなキャラの魅力が200%引き出されている「キャラの立て方」が抜群にうまいこと。
まずはその辺りについて語っていこうと思います。

「いそう」で「個性的」なキャラ達

この作品は、ろう者の家族の中で唯一の聴者であるルビーが主人公です。
彼女が夢と家族の間で葛藤する話なのですが…まず家族のキャラが抜群に良い。

前述の通りルビーの家族は全員ろう者。しかし、そこを要としたキャラ作りにはなっていません。
父・フランクはユーモラスでちょっとダメ親父感があります。しかしやる時はやる、頼り甲斐のある堂々とした強さもあります。
母・ジャッキーはちょっとお節介。でも、それは彼女が何より家族を思っている優しさゆえの行動です。
兄・レオは気が強く、喧嘩っ早いところも。主人公ルビーとは憎まれ口を叩き合う仲ですが、実はとても妹思いのかっこいいお兄ちゃんです。

…とざっくりキャラを説明しただけで、どんなキャラか伝わってきますよね?
そしてキャラに対して、好感を持ったと思います。
そう、こんな簡潔な説明でも伝えられる「わかりやすく」「個性的」かつ「愛着の持てる」キャラなのです。
個性的で愛着が持てるキャラは物語に大きく観客を引き込みます。

また、この作品のキャラクターの大きな特徴は「あるある感」だとも思います。
ちょっとダメな父、お節介な母、なんか反発しあってしまう兄。
普通に「いそう」な家族だと思いませんか?
このリアリティがキャラのつかみとして機能しています。
「いそう」なキャラが様々な出来事に巻き込まれていくからこそ、キャラの気持ちに共感する。そして彼らの気持ちに共感できるからこそ、主人公にも共感できるのだなぁと。
主人公ルビーは家族思いのキャラです。家族の気持ちを理解できる、そして家族を愛している。だからこそルビーは夢との間で思い悩みます。そんなルビーの気持ちに共感させるためにも「いそう」で「愛着の持てる」キャラが必要不可欠なのです。

完璧なキャラの完璧なシーン

そして今作では、そんなキャラの魅力が最大限に伝わってきます。
キャラを「伝える」というのは実はとても難しいことです。
よく技法書に書かれているのが「登場と同時にキャラを立てろ」ということ。
今作ではまさにそれが完璧にできています。
一番わかりやすいのは、家族の次に重要人物である先生の登場シーン。
先生は一言で言うなら「癖が強い」。変わった芸術家気質だけれど、主人公の夢を熱心に応援してくれる熱いキャラです。

そんな先生は登場シーンでこんなことを言います。

「ラテにナッツミルクを入れられて気分が悪い」

はい、面倒そーーーーーーー!!!
一瞬で彼の癖の強さと、芸術家っぽいこだわりの強さがわかります。

キャラの立ってるエピソードは他にもたくさんありますが、語り出したらキリがないので割愛。でも、先ほどのようにキャラを説明できるということは…もうお分かりでしょう。キャラがバッチリ観客に伝わっているのです。

強いキャラはどこから?

これ、ずっと悩んでいました。
強いキャラってどうやれば作れるのだろうと。

今作を見て思いました。
やっぱり「掘り下げ」なのだと。

本編を見るとわかるのですが、今作は全てのキャラにバックボーンが見えます。
それだけじゃない。作り手はきっとキャラが「実在する」と思えるまでキャラを作り込んでいます。

「〇〇だけ掘り下げれば良い」「〇〇は掘り下げなくてもいい」…技法書にはいろいろ書いてあります。
けどそれは、きっと体系化して教える時にそうなったもので。

おそらく「とにかくどんな手法でもいいから、実在すると思えるまで掘り下げる」。これが答えなんだと思います。

まとめ

…本当はあと二項目ほど書く予定でしたが、文字数も文字数なので一旦区切らせていただきます!また続きは近日書きます!
一旦今回の気づきのまとめと、私の今後のTODOを書いて締めます!

気づき

  • キャラのことを把握し切るまで掘り下げる

  • 実在感は共感につながる

  • 一言でキャラは立てられる

TO DO

  • キャラを作る際にはあらゆる手法で掘り下げる

  • 実在感を与えるためにも日頃の人間観察を怠らない

  • セリフを書いたら、もっとキャラらしいセリフにできないか推敲する

ではでは!

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