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亡くなった人の借金を返済する義務

父が亡くなりました。遺産は全て兄が相続することになりました。その後、父の債権者から私に借金を返済するようにとの督促があったのですが、兄が支払おうとせず、私に督促が続くのですが、どうしたらいいですか?

これはとても困ったことですね。

遺産は全てお兄さんが相続することになったとしても、これは、積極財産つまりプラスの財産についての話です。

借金つまりマイナスの財産については、お兄さんが全部負担するということにはならないのです。

債権者との関係では、法定相続人が、その法定相続分に応じて債務を負担することになります。
例えば、相続人がお母さん、お兄さん、相談者(妹)の3人だとすると、お母さんが、2分の1、お兄さんと相談者さんがそれぞれ4分の1ずつ負担しなければなりません。

債務について、相続人の合意で自由にできてしまうと、債権者にとって不利になってしまいかねないので、原則として、法定相続分で債務を負うことになっているのです。

これは、お兄さんとの関係で、お兄さんが、全ての債務を負担する、という合意があったとしても変わりません。債権者に対しては、兄が負担するということになっていると言っても、債権者はあなたに請求ができてしまいます。

こういうことがあるので、遺産分割で、財産がいらない人であっても、全ての財産をあげてしまうということはやめておいた方がいいのです。

こうなってしまえば、相続放棄が今からでもできるのか(遺産分割しているので、これが処分行為として、単純承認したとみなされてしまうでしょう)、破産するか(相談者様が財産を持っていると財産を処分しなければならなくなる可能性が高いです)、弁済するかの3択になってしまいます。

兄が負担するという合意があったのであれば、債権者に対して弁済した後に、弁済した相当額を兄に対して請求することができます。兄が任意に支払に応じてくれる可能性が低いので訴訟等によらなければならないかもしれませんし、判決が出ても支払ってくれなければ、強制執行しなければなりませんが、財産を見つけられない場合もあります。そもそも、兄が散在して既に財産を全く持っていないということもあります。

こういった不幸を防ぐにはどうしたらいいんでしょうね。
きっちり法定相続分をもらっておくとか、そもそももらわないと判断するのであれば、きっちり、相続放棄しておくとか。兄が財産を散財していなければ、最終的には回収できる可能性が高いので、兄の財産がどの程度あるのかをきっちり事前に把握しておく、ということも大事かもしれませんね。

自分が相続人になったときには、「もしかしたら借金を負担させられることになるかもしれないぞ」と警戒心を持つようにしてください。

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