【詩】めくれる選手について

アロワナのくちばしを風船にくくりつけて飛ばす約束をおぼえていてくれて、どうもありがとう、と言ったのは、その選手でした。

いかがですか、というのが選手の口癖で、休みの日もついつい日の光も届かぬ裏山の大竹林(お気に入りの場所)で練習に励んでしまい、体のあちこちをぶつけては、いかがですか、と心配そうにじぶんの体をさするのでした。

ページをめくって読むことのできる文字選手は世界でただ一人ですので、選手を火にくべてはいけません。選手をめくっては、だめなのです。ボールペンで書き込んではいかがですか、大事なところに線を引くのはいかがですか、などという言葉を真に受けてはいけません。ファンサービスの一種でしょう。

ある日、選手はうっかりじぶんでじぶんをめくってしまいました。ちょっとだけ。すると、一瞬だけ全身がアロワナのくちばしに包まれているような、あたたかい気持ちになったのでした。

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