「小説としての『記憶』」

以前に死ぬほど練習した曲🎹を弾いてみたら前は空で弾けたのにかなり忘れていてショックを受けた
聴覚にも記憶ってあるんだなみたいな適当だけど…
暗譜とかの意味の記憶ではなくて、なんだろうもうちょっと違うなにか(パクらないでね🙏)
忘れるということの意味かな、どちらかというと
いやそれもあるけど呼び出す脳のメモリー的な意味の記憶ではなくて、記号としての楽譜と、それを読もうとする私の脳と、そうしながら実際は脳内のメモリーを探していてでも見つからない私の脳の、齟齬というかどちらでもないところ(忘れたという場所)にいる私の、なんだろ
#小説  としての記憶 みたいな 
「小説としての『記憶』」20240919 Sari Dote
そして集中するということがこんなにも忘却を要するということにやっと気がついて、ピアノを忘却の装置であるかのように眺めるのだった。
姿の見えない生徒たちが私のあとを追っている
私は忘却の装置を前に他に何もない部屋で集中を高めようとするが、ものがない、ものがない、と探した果てにそれは記憶だったと気が付くのだ。
演奏は今日は出来ません、そういうと生徒たちはがっかりして帰って行った。
記憶とはものだった、そう生徒たちはメモを取り、自分たちの発表会のために全く無関係な宮沢賢治の文庫を写真に撮り、宮沢賢治にとってものとは何ですか?と聞くためにピアノの前でぼんやりしている私をまた訪ねて来るのだった。
繰り返し繰り返し尋ねて来る生徒に合唱曲を歌わせて私は一人その部屋を後にし、暖炉の火の影のように揺れる忘却を温めることもなく字を見つめてただこう言った
宮沢賢治にとってものとは
答えないことなんですよ。と
小説としての記憶を見た私はもはや何も考えることができなくなり、窓の外で楽譜を拾い集めている生徒たちを尻目に、答えてください、とピアノに向かって鍵盤を押すのだった。#詩
答えない記憶は響きを無視してごと、ごと、と物々しく私の頭を殴り、蹴飛ばし、そして何食わぬ顔でフォークとナイフで出来立てのパイをいただくのだった。
美味ですね、先生のお料理は
生徒たちはニコニコしながら夢中になっていた。
そこに裁判官がやって来てコンコンと扉を叩いた
長い長い通路を歩いて来たその鞄と靴はなにで出来ていたのだろう?
やはり皮だろうか?
色は何色だろう?やはり黒だろうか?
音を聞けばわかるわよ、そう先生は言った
そこで文庫は閉じられたが栞は挟まれずに机の上で偉そうにしていた
ものとしての記憶はどこか遠くで自分の屍と談笑しながら明日のメニューを思いつくまで延々とスマホを弄びやがて眠りに落ちるのだった。

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