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ゑびやと飲食店向けデータ活用システム

ゑびやは、店先に設置したカメラでお店の前の通行人数のカウント、入店人数のカウント、入店者の性別・年齢、顔の表情から読み取れる感情などのデータを分析していた。
他のデータの分析と合わせて、来客数やメニューごとの注文数を予測して、経営の改善に活かしていた。

1912年創業で、三重県の伊勢神宮近くで食堂と商店を運営している。

ゑびやを知ったのは、2018年1月、監視カメラで撮影した画像解析サービス(アロバビューコーロ)を提供する株式会社アロバの方の話を聞く機会があり、その時に導入事例として話を聞いた時だった。

その時に、ゑびやがそのシステムの外販を考えていると聞いて、これは面白いのでは!、と思った。

ただ、ゑびやのお店は伊勢神宮の参道にあり、お店の前は人通りが多く、観光客も多い地域だ。そんな環境と違うお店でも効果的に使えるのか疑問も残った。

今回、その後のシステムの外販の状況が今どうなっているのか、システムの販売を行っているEBILAB(エビラボ)のホームページやホームページのニュース欄のメディア掲載記事のリンク先などを辿って調べてみた。

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1.データ活用システム 「TOUCH POINT BI(店舗予測BI)」、「来客予測AI」

ゑびやは、長年、集客に課題を抱え、ジリ貧傾向に陥っていた。
現社長の小田島春樹氏は、2012年3月に妻の実家である有限会社ゑびやに入社した。
集客力を向上させるために様々な手を打ち、また、データを活用して店舗運営を抜本的に改革していった。

ゑびやで成果を上げたデータ活用の手法を同業の飲食・小売り業者にクラウドサービスで提供するため、株式会社EBILABを設立したのは、2018年6月になっていた。

EBILABのホームページには、「2018年会社設立より1年、44社90店舗にご利用いただき、ご満足頂いております。」のコメントがある。今は、2020年3月で会社設立からは1年9ヶ月なので、導入先はもっと増えているはずだ。

提供サービス名としては「TOUCH POINT BI(店舗予測BI)」、「来客予測AI」の2つ。

「TOUCH POINT BI」は、POSデータ分析ツールで売上、客数、客単価、顧客属性等の様々なデータをグラフ化して見せるサービス。

「来客予測AI」は、過去の売上実績、気温や降水量などの気象データ、近隣でのイベント、近隣の宿泊施設の宿泊者数、自社サイトへのアクセス数、インターネット上の口コミなどのデータから翌日の来客数と注文数を予測してグラフ化して見せるサービス。各データのうち、どれが来客数に最も影響しそうか、AIが機械学習し、日ごとや週ごとに重視する変数を変えている。来客予測率は90%以上だ。

それぞれのサービスメニューと導入効果を確認してみた。
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【TOUCH POINT BI】

■サービスメニュー (スタンダードプラン(※1)のメニュー)

・売上データ分析/・顧客分析/・外部要因分析/・客数/売上昨年比較/・日別販売数量/・月別販売数量/・テーブル分析(※スマレジのウェイター機能の利用が必要)/・併売分析/・自動人数カウント(※2)/・自動人物属性解析(※2)/・理論原価率分析(商品)/・理論原価率分析(カテゴリ)/・入店率客数比較/・属性別入店率分析/・リアルタイム売上分析

(※1)スタンダードプラン \19,800(税抜) (1店舗/月額、初期費用30万円(税抜))
(※2)別途機材費用・設置費用等が必要

「(※2)別途機材費用・設置費用等が必要」とあり、ここにカメラ設置費用等が入るのだろうか?

■導入効果

・日々のエクセル入力などの煩雑な事務作業を軽減して効率化が図れる
・売上データなどについて社内での認識の共通化が図れる
・現場で働く人達の数字に対する意識が高まる
・客層に応じたメニュー開発
・リアルタイムで売上、客層に応じた販促施策を実施できる、など。
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【来客予測AI】

■サービスメニュー (プレミアムプラン(※1)のメニュー)

・日報入力(売上、客数、イベント情報)/・翌日の目標売上入力/・カレンダーで登録した情報の確認/・グラフで売上と客数の推移の確認/・翌日予測/・週間予測/・45日予測/・メニュー予測/・時間帯予測/[TOUCH POINT BI]スタンダード機能/・追加カスタムオプション対応 (アンケート分析、自動人数カウント、自動人物属性解析)/・スマレジ連携 (※スマレジ (有料版) と連携し、自動で売上や客数を記録させることが可能)
/・スマレジを除くPOSレジ連携 (※カスタマイズで一部対応可)

(※1)プレミアムプラン \29,600(税抜) (1店舗/月額、初期費用40万円(税抜))

「来客予測AI」のプレミアムプランのメニューの中に[TOUCH POINT BI]スタンダード機能があるが、含まれているということだろうか?
また、3つのプランを用意しているとあるが、記載があるのは2つのプランのみだった。

■導入効果

・発注量、事前準備の量の最適化
・適切な準備量で料理提供時間の短縮
・発注コストの削減
・廃棄ロスの削減
・シフトの最適化
・ベテランと若手の個人による発注精度の差をなくせる
・売上の低い日を事前に把握し、売上アップの施策を検討し実行できる、など。
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以上が、「TOUCH POINT BI(店舗予測BI)」、「来客予測AI」について今回確認した内容だ。いずれも、サービスメニューの構成と価格についてはホームページ上だけでは不明点があり確認が必要だ。


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2.メニュー看板めぐり試行錯誤

ゑびやでのメニュー看板をめぐっての試行錯誤の記事があり、面白かったので紹介しておきたい。

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ゑびやでは、2018年末、店頭のメニューを表示した看板を一新し、3%値上げした。デザインの制作に300万円、写真の撮影に150万円かけていた。

設置から3日後、真新しい看板を外す決断を下した。看板を新しくした後、
お店の前を通る歩行者のうち入店した人の割合を示す「入店購買率」が、
明らかに低下したからだ。
ゑびやでは、入店購買率を重要な経営指標にしている。

看板を新しくした日の入店購買率は2.56%で、前日の4.94%より2%以上落ち込んだ。前年の同じ日と比べても、やはり2%低い。
同じような状態が3日続いたところで、新しい看板を下ろした。

原因がデザインの変更にあるのではと考え、デザインと値段を以前のものに戻した。
入店購買率は1%近く回復したが、まだ低い。

次に写真も以前のものに戻すと、入店購買率も以前の水準に戻った。
結局、もとの看板に戻ったわけだ。

さらに、今度は3%値上げした数字に書き換えてみた。
結果は、入店購買率は下がらなかった。
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「デザイン」と「写真」と「値段」について、以下の4つのパターンを4ヶ月かけて試して、それぞれのデータを確認した。そして、客数の減少を招くことなく、3%の値上げに成功したのだ。

   (旧)デザイン (旧)写真 (旧)値段
           ↓
1. (新)デザイン (新)写真 (新)値段
           ↓
2. (旧)デザイン (新)写真 (旧)値段
           ↓
3. (旧)デザイン (旧)写真 (旧)値段
           ↓
4. (旧)デザイン (旧)写真 (新)値段

小田島社長が入社した2012年当時のゑびやの状況や2018年末からのメニュー看板をめぐっての試行錯誤の状況はこちらに詳しい。

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小田島社長は、インタビューの中で、以下のような話をしている。
「最近、当店のAI活用についてよく取り上げられるため、そればかりが注目されているが、実際には様々な手を打ってきた。特に注力したのが、メニューの見直し。他にも、店頭ディスプレイの見直しや、店舗の内装やデザインのリニューアルなど。AI活用は、様々な取り組みの一部に過ぎない。」

様々な手を打ち、データを確認しながら試行錯誤する。それを結果につなげていくことが大事なのだろう。


ゑびやでのアロバ社の画像解析サービスの活用方法についてはこちらに詳しい。

ゑびやのサービスの技術的な概要についてはこちらが詳しい。


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