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「上手な絵」でなく「伝わる絵」を描く工夫

※この記事は、京都芸術大学(旧名称:京都造形芸術大学)クロステックデザインコースで担当している1年生向けの授業「造形技術演習」の内容をベースにしたものです。

デザインをはじめ、いろいろな仕事をしていると「イメージを伝える」ことが必要になってきます。
自分が思いついたいいアイデアをチームメンバーに伝えたり、チームで考えた内容を共有するプレゼンをしたり…いろんなシチュエーションがありそうです。

絵で伝える

そんなとき、「言葉だけでなく絵や図で伝える」というのは非常に強力な情報伝達手段になります。口頭で伝えようとすると複雑になってしまうことを図にしたり、ちょっとしたマンガのようにストーリーを描いてみたりなどなど。

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たとえば上記の絵は授業のために描いたもので「プロトタイプを作ることはこういう意味があるよ」というのを伝える絵です。
フリー写真やいらすとやでもOKなのですが、もっと細かいニュアンスを表現するために「自由に絵が描けたらなぁ」と思ったことは誰しもあるのではないでしょうか。(僕もあります)でも、絵を描くのってなかなかハードル高いですよね。
そういうときに、心のハードルを下げて絵を描き始めるにはどうすればよいか?ということを考えてみようと思います。

上手な絵(デッサン的に正しい絵)=伝わる絵?

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こちらの猫の絵をみてください。左3枚はラフに描いたマンガのような絵で、右1枚は写真を見ながら描いたのかな〜というような、ちょっとリアルめな表情の猫ですね。一般的にいって「リアルでうまい」絵は右だと思いますが、実は「情報がたくさん伝わる」のは左の絵です。

左の絵からわかる情報を書き出してみると、
・三毛猫である
・ニャーと鳴く
・焼き魚が好き
・虫が嫌い

ということがわかります。それに対して右の絵では、

・猫がこちらを向いて座っている
ということくらいしか伝わってきません。

ここで言いたいのは、「リアルでデッサン的に優れた絵」が即「情報がたくさん伝わる絵」になるかというとそうではないということと、「情報がたくさん伝わる絵を描くには、デッサン力は必須ではない」ということです。
いわゆるデザインスケッチというと、スピーディーな線で描かれたカッコいいスケッチを思い浮かべがちですが、これを描こうとするとたくさんの修練が必要になりますので、まずはもっと気軽に取り組める絵の描き方を採用してみることにしましょう。

(巨匠シド・ミードのスケッチ。超かっこいい…!)

人を楽に描く

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さて「イメージを伝える絵」の最頻出モチーフは…そう、「人間」です。
ただ、人間はかなり複雑な形をしています。顔もいろんなパーツがついていて描くのがめんどくさい。これをできるだけ省エネで描くために、「棒人間」という太古からの知恵を拝借しましょう。

上記のイラストの棒人間の描き方は至ってシンプルで、丸い頭に三角の胴体、そこから手と足を生やしたというものです。この描き方は僕が考えたものではなく、グラフィックレコーディングで有名なデザイナーくぼみさんの方法と、大学の恩師安次富隆さんの手法をまねて、学生に紹介させていただきました。

棒人間って小学生の落書きみたいだな…と思われるかもしれませんが、重要なのは「情報を伝えること」なので、デッサン的に正しくない絵でも全く問題ありません!むしろ、描くことを恐れている時間がもったいないくらいなので、勇気を出して描き始めてみましょう!

情報を絵に込める

バタバタ相撲設計図

課題説明のために描いたスケッチ。図のようにしてもわかりやすい

先ほどの猫の絵では、「三毛猫」だとか「焼き魚が好き」のような複数の情報が絵に入れ込まれていました。でも、いざ絵を描くぞ!と思っても、「情報を複数入れ込んだ絵」を描くにはどうしたらよいのでしょう?
そのためにはまず一度、絵に入れ込みたい情報を箇条書きにして書き出してみるとよいです!

たとえばプレゼンの資料の挿絵を描く場合、こんなふうに書き出してみます。

・プレゼンする商品は塩と砂糖の入れ物
・容器には文字が描いてあり、塩と砂糖を間違えないようになっている
・これを買うと、料理でのミスが減ることをアピールしたい

何を当たり前のことを言っているのだ、という感じですが、例としてはちょうどよさそうです。この伝えたい情報を絵にするには、どんなシーンがあったらよいでしょう?

①塩と砂糖を間違ってしまったシーン
②アピールしたい商品の特徴がわかるシーン
③商品によって悩みが解決したシーン

この3枚の絵があれば、プレゼンの資料として十分機能する絵が描けそうです! …ということで、描いてみました。

実際に描いてみる

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①入れ物が区別できなくて、塩を入れすぎたシーン

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②アピールしたい商品の紹介

名称未設定のアートワーク

③新しい入れ物によって間違いがなくなったシーン

…ということで、3枚のストーリー仕立ての絵が描けました!
どうでしょうか、このくらいなら結構描けそうな気がしてきませんか?
また、このくらいの絵でも、文字だけで説明するより「直感的かつ強力に情報伝達ができる」ことも分かると思います。

まとめ

今回の記事では「イメージや情報を伝える絵」をできるだけ簡単に描く方法を見てきました。
もちろんここに描いた方法が全てではありませんが、絵は「描いているうちに得意になってくる」とか「描いているうちに面白くなってくる」のは確かです。思ったときにさっと絵が描けると、コミュニケーションやアイデア出しに大いに役に立ちますので、ぜひトライしてみてください!


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