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【自作詩】 すぐ傍にある幸せ


すぐ傍にある幸せ/匤成深夜

霜月 穏やかな暖かい日の午睡
少しだけ開けた窓から 涼やかな風がくれる“優しい時間”

フランス語で(タン・タンドル) 若しくは(タン・ドゥー)
その直後のスコールを僕は知らない

誰が好きかなんて他愛もないことで笑いあう女性たちがいて
完成した油絵に名前を添える時のような 満ち足りた気分

昼間のテレビ 男性アナウンサーのファッションセンス対決も
赤いマントを着たまま 睡魔に負けて勝敗は分からず仕舞い

今日ついに 流行り病は東京で五百人を超えた
天井には色紙で象られた馴鹿とサンタがいる
今年 サンタが子どもたちに
「今年は みんなに会えなくてごめんね
また 来年会おうね」と書いたらしい
午後のワイドショーに少し 丸みが帯びた

映画 わざわざ人気のない作品を選んで
貸し切り状態の劇場で いけない事と知りながら 
前の座席に足を投げ出し 観てたと話す人の楽しげな表情

帰路 下校時刻の生徒と車ですれ違う
恋人らしき二人のおかげで 前後にできたディスタンス

ラジオ 英語の発音が抜群の人が紹介する
洋楽に挟まれたギョウザのレシピ

デジタル・デトックス 電子的なものは全て消して 
目を閉じて想像してみる 十年前に行った長野県の山の景色

だいぶ動かしていない 自動巻きの腕時計は
忘れられていないのを棚の中で聴いている
Kindleの文字の大きさを下から二番目に合わせて 
チャレンジ中の速脳速読術

どちらにしても 来るべき“僕らの終わり”のために
楽しみながら いつもより繊細な視線を世界に向けている

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21字
少し格好つけて書いたものもありますが、楽しさも忘れず書きました。

匤成深夜が、これまで発表してきた作品の中から気に入ったものと新作を入れました。 これまで読んだ短歌集の書評が8本含まれています。

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