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海で遊んだ記憶

私は子供の頃、海の近くで育った。
小さなアパートから飛び出して、坂を下り、海沿いの道路を渡ればすぐに堤防。
アスファルトの大きな階段を下れば、人の少ない静かな砂浜。

砂浜の砂はいつもサラサラしていて、あたたかくて、そこを裸足で歩くのだけど、焼けるように日差しで暑くなっていたり、小石や細かい貝が集まっているところは、チクチク痛い。
ダイコンの葉が根を張る場所は少し刺激から解放される安全地帯。
そして、ご褒美は海水で湿ったところ。踏むと、ジワってと海水が滲んで、シルクのようになめらかな感触だった。砂浜は足の裏が退屈しない遊び場だ。

大波、小波と水際まで来ると、とても不思議な感覚がする。
ただ、自分は立っているだけなのに、
来る波が足元の砂をかっさらい、一緒に海にひっぱられるような感じがする。波が引き、砂が流れてガラリと見え方がかわるからだろうか。
自分が同じ場所に立っていない、少し移動させられたような気がする。この不思議な感覚は、子供ながらに少しだけ不安な気持ちになった。

足を引っこ抜くと、そんな不安はすぐに忘れる。表面より下の層には少し粒子の粗い砂が姿をあらわす。模様が豊かな色様々な貝が砕けてできた砂。
しゃがんでよく見ようとすると、次に来る波に顔からずぶぬれにされるのであった。

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