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当店独特料理という最強枕詞

新宿でランチを食べる店を探していた。難民。いつも迷う。フルタジュンは新宿で駆け込むお店の手持ちが少ない。その日はとても急いでいてゆっくり探す時間がなかった。焦っていた。ランチを飛ばすという発想はない。嫌だ。何かを胃に放り込みたい。いつもの通り道、何度となく通った道、その小脇に伸びる道、視線を向けると5人程度の列ができていた。遠くから看板に目を凝らす。

レトロな佇まいの看板。年月を感じる。自分が知らないだけで新宿ではめちゃくちゃ有名な店なのかもしれない。ここまで書いていて怖くなってきた。いや、このnoteは主観でお送りしているから仕方がない。フルタジュンが古田淳として上京して22年間、一度も入ったことがない店だった。

枕詞に惹かれた。

「当店独特料理」

強過ぎるだろ。独特とはオンリーワン宣言であり、必要以上にハードルを上げている。いいのか?料理である限り美味しくなければ正義ではない。こんなワードを正々堂々と一番上に掲げていることにカッコよさしか感じない。食うしかないと思った。

店に近づくと、常連らしきサラリーマンや長年通っているマダム達が店内まで列を成していた。何も知らないのは僕ぐらいだ。洋食屋としてそそられる王道メニューがある中、看板メニューのロールキャベツシチューを注文した。

これがアカシアの看板メニューであり王様、独特料理の象徴だった。どこかで企画倒れであってほしい、独特料理の枕詞に名前負けしてくれ、と思いながら食べる。一口目で分かる、噛み締めるまでもなくべらぼうに美味い。僕は41年間生きて来てロールキャベツもシチューも知っている。どちらも幾度となく食べて来た。けど、ロールキャベツシチューだけは知らない。そう、僕はロールキャベツシチューを一度も食べたことがなかった。この料理の美味さを形容できないもどかしさがある。どうして美味いのか。果たして出会う前に僕はこの料理を想像できたのか。いや、できなかった。単なる足し算ではなかった。独特だった。今、文章を書いている21時半、この画像を見ながら再び食べたくなっている。今後、飽きるまで新宿ランチはこの店一択でいい。

劇団に話を移す。

「当劇団独特演劇」

そういうものが創りたいとずっと思っていた。ありそうだったのに、どこにもなかったもの。今年からフルタ丸で開発している新しい演劇があり、最近はその準備をしている。公演情報の発表は来月を予定。どうか食べて頂きたい。

フルタジュン



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