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鳶ヶ巣砦を奇襲したい! 〜松山峠越え〜

そろそろ虫が蠢く季節。山城に行く割には、実は虫が苦手。蟲が本格化する前に宿題を済ませたい。
その宿題とは、そう「鳶ヶ巣砦の奇襲

15ヶ月前、息子を連れて奇襲に挑戦したものの時間の壁に阻まれ断念
その雪辱は、いつか果たさねばならない漢(おとこ)の落とし前になっていた。このままでは終われない。俺は漢になることができない。「男」ではない「漢」になるために。もっとも、LGBTQ時代にそんなものに拘って良いのかは知らんけど。

その機会は突然訪れた。
東京へ転居した子どものお友達一家が戻ってくることになり、父親が家にいると子ども達が全力で遊べない。だから父親は家から出て行って欲しい
ねがい。子ども達の。そして妻も。
誰の名義でローンを借りたと思っているんだ、誰がそのローンを払っているんだ、あと何年残ってると思ってるんだ、というのは少し思うが、これは滅多にない父親が罪悪感なく一人で行動できるという大チャンス到来でもある。

ねがいよ叶え、いつの日か。そうなるように生きていけ、とB`zも言っている。
しかも、今回は拝み倒して泣く必要はない。むしろ拝まれているのはこちらの方。
堂々と一人で家を出ていくのに感謝までされる。良き日だ。

さて、吉川の公民館の駐車場を再び活用させていただく。
名峰舟着山を眺め、気合い十分。

舟着山。この向こう側に長篠城。

ウキウキと単独を楽しむが、うろ覚えの記憶で歩き出してしまった。
結構な坂を登ってしまい、あれ?なんかちがう、と、思いながら「舟着山」という看板を見つけて、そのまま歩くとどうにも前回とちがう光景が広がる。

墓など前回見ていない。

しかし、ここまで登った分が惜しい、ということから、とりあえず舟着山に登って考えよう、というアバウトな考えで登っていく。テンションが高くておかしかったのだと思う。そのうち前回の道に出るのでは・・・、との期待は打ち砕かれ、もくもくと舟着山を登山する。結構きつい!

結構な斜度です。

なんとも急な坂。花粉症のためマスクをしており、汗で張り付いて息ができず意図せず高山トレーニング。しばらくするとマスクが殺意を抱き息ができない。
しばらくマスクと格闘して登っていくと、こんな素敵な看板が。

不老長寿の泉。看板が新しくて胡散臭い。

不老長寿の泉。
しかも下り方面。下るということは、帰ってくるには登らないといけない。
歳をとっても自分の足で歩きたいので寄ることにする。ただ、これまでの経験上、水が枯れてるなど何らかのトラップがある場合がある。
降ってそれは痛い、と、歩いていくと、うっすらと白い細長いものが。

何か光っている。かぐや姫か。

しかし、水はどこにも見当たらない。
さらに近づくとまさかね、という光景が広がっていた。

時期が悪かったのか、俺が悪かったのか。

水を出すパイプの汚れが•••・
これを飲むと不老長寿の人でも下痢してアレしちゃうんじゃないか、と、思い、飲むのを止める。不老長寿のチャンスを逃したのかもしれん。
さて、どんどん登る。結構斜度がきついところもあり、また、道を逸れたら遭難しそう。なんとなく道がわかるので歩いていくと、突然山頂は現れた。

船着山頂 427m

船着山頂。眺め悪い。中途半端な達成感しかない。
山頂看板には舟着の地名の由来が。
「太古の頃、この付近は広い海であり神様方は船に乗ってこの海を渡っていた。その海の中にちょこんと頭を出している島があり、神様方はここを通る時は、必ずこの島に舟を着け休むことにしていた。その後、海は陸地となり島は山となり、その山に舟を着けたことから「船着」の名が付けられたと言われている。また、この先に神様方が舟をつないだという高さ5メートル程の「くびら岩」と呼ぶ岩がある。この「くびら」(宮昆羅)とは「金毘羅」と同じ意味で、航海の安全を守る神として船人が最も尊敬する神である。(参考文献「舟着物語」鈴木隆一氏編集)」
とのことです。
「くびら様」を見に行く。

屹立されおられる「くびら様」。

残念ながら木々に覆われ、もはや外は見えない。くびら様もさぞ無念だろう。
さぁ、舟着山も登ったし、と、思ったところで気づく。
はて、ここからどうやって鳶ヶ巣砦へ行くのだ?
本来の目的は舟着登山ではない。
適当さと思いつきで登ってきたことを今更ながら後悔する。
助けてスマホさん。ということで検索機能で調べまくること10分。ようやく使用している「YAMAP」で酒井忠次ルートを歩いた人の地図を見つけダウンロード。携帯電波鉄塔ありがとう。でも、アンテナ2本で心細かった。
よくよく地図をみると、舟着山に登る必要はなく、途中の分かれ道で松山峠に向かわないと行けないらしい。
ふ、舟着山も登りたかったんもんね
と、謎の美少女キャラが頭の中で言っている。まだ体力はある。
来た道を下り、よーく見ると。

わかるかい!

書いてあった。手書きで
そこから歩くも、さほどの高低差はなく結構すぐに松山峠が見つかる。

松山峠

うーん、以前は違うルートで登り途中で断念したのだが、違うルートで到達したことにモヤモヤ感が。この峠を越えて酒井忠次隊は迂回奇襲した訳で。帰り道は奇襲ルートにしようと思いつつ、そのまま長篠城方面を目指す。
また手書きに導かれ歩いていく。

手書きに導かれ鳶ヶ巣砦をめざす

この辺りから風が強くなり、雲も出て暗くなる。まだ昼の11時台だというのに、何とはなしに怖くなる。

ちょうど背が隠れるくらいの高さ。陽が入らず暗い。

こんな灌木だらけの道。向かう方面の山の名前が「常寒山(とこさぶやま)」
その名に違わず寒い。風が強いし冷たい。しかも暗くなる。足元に蛇っぽいものを見て山の中で大声で悲鳴を上げて逃げる。そして、帰りもこの道を通らねばならないのが嫌。そうこうしているうちに道が広がり、なんとルート案内が出てくる。

地獄に仏なルート案内

この道わかりづらい。あまり人も歩かないと思われる。
自分はYAMAPを頼りに歩いており、目印らしきビニールテープがあるので迷わないですが、無ければ絶対に遭難する。登ったり降ったりを繰り返し、ようやくこんな看板が。

人生は常に分かれ道

どっちにいくか迷いましたが「卒業生チャレンジ」の看板がある方にする。地元の舟着小学校では6年生になると松山峠越えをして長篠合戦を偲ぶ、といういべんとをやっていると聞いていたので、そちらを選択。しかし、こんなきっついルートを小6で登攀するって、舟着小出身者は呪うだろう。そして同窓会で盛り上がるネタになるのだろう。ちょっと羨ましい。
しばらく行くと切り捨て間伐してある場所に到達。鎧平とかいてある。

鎧平。間伐が進んでます。

ここで、奇襲軍は甲冑を着けて、鳶ヶ巣砦へ向かって行ったとか。
さて、ここで思い切り道に迷う。このまま進むこと30分。地図を見ると鳶ヶ巣方面から離れていく。そのため、一旦鎧平まで戻り市川方面へ降りていくことに。
こんな木が倒れており、行けないのかと思ってました。

通行止めではなかったようです。

そして下る、下る、下る。
と、いうことは車の置いてある場所に戻るためには、登る、登る、登る、をしないといけない。帰りの体力を温存しながらとにかく下る。途中迷いやすい場所がある。この砂防堰堤がわかりにくくしてるんですよね。YAMAPでも迷いに注意と書いてある。

この辺り迷いやすい。ルート地図は必須。

下り続けると、突然視界が開けて整備された林道に合流する。
やった、歩きやすい!とにかく林道が歩きやすい。助かる。
そして、見えたのが長篠城方面!

正面の山で隠れてる辺りが長篠城。

万燈山に到着。ここからは長篠城やら鳶ヶ巣砦やらまであと少し。
絶景に見惚れる。やっほーと叫んでる子どもの声がどこかから響く。そして、鐘の音が。なんとも長閑。
ここまで2時間半経過。約9キロの山道を歩き切る。帰路時間を考えると限界。道に迷ったことと出発が遅れたことでタイムアップ。ただし、当時は林業山ではなく薪山だったと思われるので、ここまで来れば敵の旗なども見えたと思われる。
今回は奇襲成功と言って良いだろう。
さぁ、猛スピードで帰路に。山は暗くなるのも早い。とにかく急いで車に戻るため来た道を引き返す。下った分、登らねばならず疲れた足にはきつい。杖を持ってきて正解だった。
松山峠に到着すると、ここから松山観音堂目指して直行する。このルートこそが、以前断念をし、そして、酒井忠次が登ってきたルート。

ピンクが目印もどれかがわからない。

ただし、このルート本当にわかりづらい。とにかく沢沿いに降りていくのが正解だったのですが、道があるように見えないので本当に迷いそうになる。ただ、以前登ってきたことがあるため、その記憶を手繰り寄せてつつ戻る。

これがルートだ!

道ないじゃん!と、叫びたくなり、道がありそうな方に行きそうになるが、そちらは、すぐ先で道がなくなっている。とにかく、沢伝いに直進するのみ。これが最短ルートであることは間違いないが、余所者には絶対にわからない道だ。道案内がなければ絶対に無理なことがわかる。

この先が道。

山登りによる汗ではなく、迷いそうになる緊張での冷や汗をかきながら降りていくと、あった!松山観音屋敷跡!

ここでようやく安心する。

ここに酒井忠次軍三千が集結したそうです。これだけきつい坂だと隊が伸びてしまい迷う奴も出てくるでしょうから、集合場所がいるのでしょう。ここから広い林道をしばらく行くと紫の幟旗が立っている場所があり、そこからさらに下るのが忠次ルート。もっとも、忠次軍は登ってきたんですが。

登ってくると右手が松山観音屋敷(画像右の道)

ここからは登山道。途中倒れかかる木などもあって人気の無さ満点。枯葉も多くて滑りそう。杖があってよかった、という場面もありました。

迫力満点

そして、いよいよ人里が!
と、その時、私の足音に驚いたのか鳩が飛んでくる。
「ガツ!」
という音に驚くと鳥獣除けの柵に1羽の鳩がぶつかって落ちてました。

鳩が・・・。

気絶しているのか、死んでしまったのか•••。
とにかくぴくりとも動かない。しばらく見ていましたが、全く動かず。なんとも可哀想。気絶だと良いのだが。よく窓にぶつかる鳥は、すぐに飛び立つだけにピクリとも動かないので当たりどころが悪かったのか。南無阿弥陀仏。
その後、素晴らしい桜などを見ましたが、どうにも鳩が気の毒で楽しめない。

素晴らしい景色なのだが・・・

諸行無常を感じた旅になってしまいました。
実に

14.5km。高低差960m。時間4時間17分38秒。1,639kcal

の結果となりました。そういえば、昼飯は結局食べることができずお茶だけ飲んでました。まぁ、蓄えを崩しただけなので、むしろ好都合。
その後は「ゆ〜ゆ〜ありいな」に入って帰りました。
次こそは、鳶ヶ巣砦まで辿り着きたいものです。
誰か一緒に行きますか?

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