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まちづくりについて調べていたら、バカ殿様の論文にたどり着いた話。

 住民有志でまちづくりをすることについて調べていたら、ゴミ箱モデルなる変な名前の理論に出会い、その理解を深めようとしたらバカ殿様はなぜ殿様でいられるのか、という論文にたどり着きました。迷子だ。


ここまでの流れ

 まだ組織になってない集まりでなぜ話が前に進まないのかを考えるため、稲水伸行氏の2010年の論文「未分化な組織構造と問題解決・意思決定:ゴミ箱モデルのシミュレーション分析」を読んだらわからない点があって別の論文に手をだす。
 今回は「日本企業におけるやり過ごし」という1992年の論文。先の稲水氏の論文指導もした東大の高橋伸夫教授のものです。ちなみに前回の経緯はこちら。↓

ゴミ箱モデルを噛み砕いて理解しようとしてみた

1. ありそうな事例で考えてみた

 ある会社の役員会。
 欠席する役員もいれば、体調の悪い役員もいる。役員は考え方がそれぞれ異なり、思いつきで意見をコロコロ変える人もいる。
 役員会は、時間のかかる重たい議題もあれば、議題ががなくて困る時もある。最近の議題は技術革新によって、これまでの役員の経験では判断に迷うものも多い。
 今回、海外企業の買収が持ちかけられ臨時役員会が開催された。朝のニュースで偶然みた社会情勢から海外企業の持つ技術が今後役立つと考えた役員が熱心に買収を主張し全会一致で買収が決定された。臨時会に合わせて2週間後に開催予定の定例役員会に議題にする予定だった不良社員の処遇問題と新部門設置も議題になった。不良社員の件は派閥争いが絡んで紛糾し継続検討となった。新部門の件は不良社員の件で時間がなくなり分科会で検討することに決定し、臨時会は終了した。
 その後の定例役員会では、不良社員が自主退職し課題が解消されたことが報告され、他に議題はなく定例会は終了した。しかし、不良社員は極秘技術を持ち出して競合他社に転職していたが、まだ誰もこの情報漏洩に気づいていなかった。

2. ゴミ箱モデルだとこうなる(らしい)

 ここ、自分の覚えとして細かいことが書いてあるとこなんで、興味がない方は斜め読みで十分なところです。
(1)ゴミ箱モデルが適用される「組織化された無政府状態」
 ゴミ箱モデルが適用される「組織化された無政府状態」という謎の状態は、①流動的参加②問題のある選考③不明確な技術、の3つが揃ってる状態だとか。これではワシはわかりゃせん(名古屋弁)。先の事例で考えると①流動的参加を「役員の出席状況や体調」のように参加者が安定していない状態②問題のある選考を「考え方がそれぞれ異なる」や「思いつきや意見をコロコロ変える」ように決まった基準で何か決めてるわけじゃない状態③不明確な技術を「技術革新で結果が推測できない」ように案の結果がわからない状態、と考えてよさそうです。
(2)ゴミ箱モデルの4つの要素
 次にゴミ箱モデルでは、変数として4つの要素があるとか。①選択機会、②参加者、③問題、④解です。ただよく読むと、この4つにエネルギー量がプラスされて意思決定されると考えているようです。要素は5つじゃないか?という気もしますが、エネルギー量が現実社会では測定できないので変数扱いされてないんじゃないかと思います。先の事例で考えると①選択機会を「役員会」のように組織が何かを決定することが期待される機会②参加者を「役員」のような意思決定者の集まり③問題を役員会の議題や情報漏洩のような解決すべき問い④解を議題の取り扱い方法の決定といった問いへの決断、そしてエネルギー量は役員の頭の冴え具合や体調みたいな決断を行うための熱量と考えてよさそうです。
(3)ゴミ箱モデルの考える3つの意思決定
 ゴミ箱モデルを考える上でわかりにくいのが意思決定。一般に意思決定とは問題が解決された状態をいうと思いますが、ゴミ箱モデルでは「①問題解決」以外にも「②見過ごし」と「③やり過ごし」という意思決定方法があると考えています。先の事例で考えると、①問題解決は臨時会での海外企業の買収のように組織として問題が解決された状態で選択機会(役員会)が終了した状況②見過ごしは不良社員の情報漏洩のように組織の問題が気づかれずに選択機会(役員会)が終了した状況③やり過ごしは不良社員が自主退職して解決した処遇問題や分科会を設置した新部門問題のように組織の問題を選択機会(役員会)で解決する前に問題が消えた状況と考えてよさそうです。やり過ごしは、問題が選択機会から飛んでってしまうので「飛ばし」とも呼ばれることがあるようです。
 近代組織論では「決定=問題解決」考えていたものの、現実はそれだけじゃないじゃん、と批判する形でゴミ箱モデルが登場した経緯があるようです。ゴミ箱モデルは「問題」ではなく「機会」に着目しており「物事を決定する機会が終了する=意思決定がなされた」と考えるとわかりやすい。ちなみになんでゴミ箱モデルと名づけられたかといえば、選択機会をゴミ箱、参加者・問題・解をゴミに見立てて、うまく選択機会で問題や解が結びついて参加者が意思決定する様が、ゴミがゴミ箱に入って一杯になると捨てられるのと似てるからだそうです。

バカ殿をフォローする仕組みの説明がゴミ箱モデルだった!

 ゴミ箱モデルの解説を一所懸命に書いてしまいましたが、高橋氏の論文が伝えたかったことは「やり過ごし」です。この論文が書かれた頃はバブル絶頂期の「ジャパンアズナンバーワン」を少し過ぎた頃。世界最強だった日本企業の強みは「やり過ごし」じゃないか、と考えたそうです。企業に調査して、頻繁な人事異動や技術革新によって組織の意思決定権者が変な判断したり、あれこれ思いついて変な指示を出したりして現場が過重な負担で潰れそうになるのを優秀な中間管理職が意思決定権者の指示をスルーすることで組織の崩壊を防いでるんじゃないか結論づけてます。変な判断・変な指示をする意思決定者を「バカ殿様」と高橋氏は堂々と論文に書いているのです。ちなみに、高橋氏は東大の先生なので企業のお偉いさんが集まる講演会でやり過ごしの話をすることがあったそうですが、やり過ごすとはけしからん!と、怒りだす人もいるので話の内容を調節することがあったとか。笑。

「やり過ごし」が若者を救う

 この論文、組織に身を置く身として理解できるわぁ。だってやり過ごしたことあるもん。笑。そして、マイクロマネジメントがなんで現場を潰すかも説明できてる。重箱の隅を突いたり、マウント取るために精神論振りかざしたり、昔話で現場を振り回したりする人々によって現場が疲弊し潰れていくのを見聞きすると、戦前の日本軍の事例を連想してしまいます。失われた◯十年って、結局、この状況が続いてるからでしょうね。優秀な人が上役になって暇になり、あれこれ現場に口出すことが原因かもしれません。名選手が必ずしも名監督ではない、という奴でしょうか?
 趣味や自分や家庭の時間を持たずに仕事のことばっか考えてるから、視野も狭くなってマイクロマネジメントしがちになるし、定年後に家族から見捨てられて相手してくれる部下もいなくて介護の人にカスハラするような晩年になってしまうんじゃないですかね。あー最後、だいぶ毒吐いてしまった。

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