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「観光まちづくりを考える」を読む

「観光まちづくり」という言葉の提唱者東京大学西村幸夫教授(当時)の論文というか記事(2006年)を見つけたので読んでみました。インタビューを編集した内容なので短く、わかりやすい内容です。

「観光まちづくり」について

① 定義
 地域が主体となり観光を取り入れ生活環境を向上させること。
 (観光とまちづくりの一体化)
② 言葉の生まれた背景
 また、景観法の登場で、個人の財産権だけでなく、住環境全体への配慮を検討する機運が高まっており、インテリアだけでなくエクステリアにも配慮し、まち全体について考えやすくなっていた、という事情があった。
③ 実施箇所
 「まちづくりから観光に広がるところ」と「観光地がまちづくりを行うところ」の2タイプ。(観光地だけが対象ではない)
④ 期待される効果
 観光での長期滞在も増えつつあり、地域に人がいることで活力を生み、さまざまな消費につながる。(乗数効果)
⑤留意点
 人口減少時代は定住人口だけでなく交流人口も含めることが大事。
 客単価や効率の良い稼ぎ方に拘るのではなく、観光を通じて観光業のみならず地域に全体が自信を持つようにしていくことが大事。

感想

 観光まちづくりという言葉に期待していたことや当時の状況がよくわかりました。ただ、現在、先にご紹介した観光まちづくり人材の育成に関する論文(↓)にもあるように、地方創生の観点から、効率よくカネを落とさせ客単価に拘る方向にあります。

これをどう考えるか。
 本稿が書かれた時代、過疎地域には、先祖代々暮らしている高齢者が元気で家土地代等の生活コストが抑えられた人が多かったと思います。そのため、シビックプライド醸成のような地域活動を行うことが暮らしの満足度向上に繋がり、その結果、観光客も満足できる流れが期待できたといえます。
 しかし近年では高齢化が進み元気な高齢者が減る一方で、移住も増えてきています。移住者は若く、家土地代がかかるため生活コストが高くなっているので、持続性を考えると稼ぐことについて考えざるを得ない、といったことがあるのかな、とも思えます。
 何が正しいのか、ということではなく、人の営みは変化していくため変化に合わせて、シビックプライド重視・稼ぎ重視とバランスをとって地域運営していくことが大事なのかな、と、思います。
 本論文からすでに20年近く経っているため、時代の変化を改めて考え直す機会になりました。まさに温故知新ですねぇ。

本稿が気になる方は以下からどうぞ。http://utud.sakura.ne.jp/research/publications/_docs/2005aij/kanko.pdf

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