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観光まちづくり人材の育成に関する論文を読む。
今回ご紹介するのは、二松学舎大堀野正人教授の「観光まちづくり論の変遷に関する一考察〜人材育成にかかわらせて〜」です。
いつも思うのですが、論文のタイトルってコース料理の名前みたい。「春の恵みを満喫〜春キャベツにキャビアを添えて〜」的な。知らんけど。「〜」の存在のせいかと。
本論文を要約すると…、
観光まちづくりに人材が必要とか育てなきゃと言われてるけど、そもそも人材て何?、どうやって育てたらいいの?という疑問について、「観光まちづくり」を巡る議論を振り返ることで明らかにしよう、ということのようです。
人材面から見た観光まちづくりを巡る議論
観光まちづくりを巡る議論は、以下の3つの段階を経たとしている。
① リゾート開発法により外部資本によるリゾート開発が推進されたものの負の側面が目につくようになり、大きな箱モノや外部資本に頼る開発手法への批判生じた。一方その頃、小樽、長浜、近江八幡、上高地、湯布院など地域の素材を活かした観光地が生まれていたので共通する成功要因が分析され、観光は手段にすぎず地域住民が豊かに暮らすことが第一とする「地域主体の観光」が「観光まちづくり」とされた。
② その後、少子高齢化や過疎化が進み、たぐいまれなリーダーへの待望、組織や営利を嫌うあまりまちづくりが機能不全に陥る、地域資源の発掘と磨きあげには熱心でもニーズを無視した自己中心的な内向きとの批判も登場したことから、観光客の落とすお金により地域に雇用創出を図る考えが登場し、観光まちづくりは「観光による経済活性化」へ考え方が変化した。このため観光まちづくりは、地域資源を外部へ売り出すマーケティングを必要とするようになった。
③ こうした状況に国や観光業界が目を付け、地域コミュニティの発展と持続可能なツーリズムの推進の2点を満たすため、観光地域づくりプラットフォームが着地型商品と市場を仲介し、マーケティングとマネジメントをすることで観光消費額を増やし地域活性化しようという考え方へと発展した。このため、観光まちづくりは経営的な視点、手法を用いて計画的、戦略的に進めることが推奨され、観光産業が観光まちづくりを取り込む考えが強まった。
必要とされる観光まちづくり人材とは?
人材面から見た観光まちづくりを巡る議論から、以下の3つの人材に整理されるそうです。
①観光地域づくりのリーダーとしての人材
必要とされる能力は、地域をまとめる役割、地域づくりに対する見識、
地域に愛着を持って接する、市民をまとめる調整
②観光商品・サービスの企画・開発に携われる人材
必要とされる能力は、観光商品・サービスの企画・マネジメントスキル、
営業スキルやノウハウ、旅行業の知識、対行政折衝、
マーケティング・会計・経営知識
③具体的な体験企画等を提供するノウハウを持った人材
現場でスキルを発揮して観光客と応接するスキル。
なお、これらの能力は複数で分担してもよく、育成に時間がかかるならば外部スカウトもアリ、とのことです。
求められる成果と懸念
①成果
・持続可能性のあるツーリズムによる宿泊数の増加と売上増
・交流人口の増大が地域経済の活性化に結びつくこと
②懸念
・観光ボランティアやガイドの下請け化やホスピタリティの搾取
まとめ
人材面に着目した議論の流れを見ることで、どうして自分が「観光まちづくり」の考え方に混乱したかがよくわかる。まちづくり側の自分からすると、観光まちづくりとは観光を手段とした地域主体のまちづくりだとばかり思っていたのに、最近はまちづくりから離れ観光業の議論になっちゃったのが不思議だったんですが、背景含めて理解できました。
ところで本論文では、人材について①、②は、観光産業、③は地域で育成されるスキルとしてますが、①は観光産業だけでなく市町村行政の得意分野ではないかと思います。それは、③は必ずしも商業ベースでなく、ボランティアベースも多いためホスピタリティ搾取を防ぐには、ボランティアベースの考え方を理解した人材が必要だからです。一方で、観光産業としてボランティア活動を活用する方法についても考えていく必要もあるかと。「別に儲けるつもりはないから、そこまで手間がかかることはしない。」という意見への対応です。ここは根本的な思想の違いですから、なかなか埋めることは難しいと思いますが、地方創生を進めてきたことで、若い世代に商業とボランティアを融合する動きも出始めているので、そこに期待かな、とか思ったりします。
歴史を振り返るのは重要ですね。興味のある方は以下からどうぞ。
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