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沢田研二『思いきり気障な人生』 (1977)

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私にとって沢田研二さんはどちらかと言うとシングル主体に聴いてきたシンガー。なのでシングル曲が多めに収録されたこのアルバムは、もうそれだけで魅力的に光り輝いています。77年11月リリースのアルバムですが、その年ジュリーは「勝手にしやがれ」でレコード大賞を受賞。翌年78年1月にはTBSで「ザ・ベストテン」がスタート。テレビでジュリーを見ない日はないほどの時期で、お茶の間(もうこの言葉も死後?)で人気の大スターでしたね。当時小学生の私としては、シングル曲はリアルタイムですが、アルバムを聴いたのは大分後になってからです。帯にもあるとおり、全曲阿久悠作詞・大野克夫作曲となっています。

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SIDE 1
1. 思いきり気障な人生
アルバム1曲目を飾るタイトル曲は、翌年の「LOVE(抱きしめたい)」にも通じるような重ためのマイナー・バラード。もっと軽快にアルバムをスタートさせるのかと思ったら、いきなりトップがこういう切り口の曲で最初「うむむ・・・」と思ったのですが、アルバムを一通り聴き終えてからあらためて戻ってみると、この曲が魅惑的にスッと入ってきて、めちゃめちゃ沁みてくるから不思議です。

2. あなたに今夜はワインをふりかけ
これはシングル「サムライ」のB面に収録される曲なのですが、その後ベスト盤『Royal Straight Flush』にも収録されるほど、A面曲と同等の扱いを受けている有名なナンバー。イントロの短い、印象的なサビ始まりの曲で、後年のライブでもよく歌われているイメージがあります。お酒をほとんど飲めない私ですが、ごくたまにワインを飲む時はたいてい ♪あ~な~たに今夜は~ ワ~インをふり~かけ~ のフレーズが頭をよぎります(笑)

3. 再会
これも後の「LOVE(抱きしめたい)」に通じるマイナー・バラード。低音ジュリーの魅力が味わえます。「あなたが背負った不幸の重さは どんなに愛してもわからない」「それぞれが生きてきた人生は違うから さわれない想い出も心にはあるだろう」 う~ん阿久悠×沢田研二が作り出す世界観ですね~。

4. さよならをいう気もない
77年2月リリースのシングル曲。次の「勝手にしやがれ」があまりにもインパクトが大きすぎて印象が薄れがちですが、イントロといいメロディといい歌詞といい、これもかなりの名曲だと思います。♪ハイヒールのかかとが折れて歩けない~ と女性視点で歌われるナンバーです。

5. ラム酒入りのオレンジ
A面ラストは、軽快なポップ・ロック歌謡といった感じのこのナンバー。女性コーラスがイントロから入り、後半はそのコーラスとジュリーとの掛け合いも面白いですね。惜しむらくはレコード内周側というこの位置が影響してか、手持ちのレコードでは音質があまり良くないこと。CDやサブスクなど、もっとクリアな音で聴きたい楽曲ですね。

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1. 勝手にしやがれ
B面トップに「勝手にしやがれ」登場!説明不要の1977年レコード大賞受賞曲。当時の(私も含めた)小学生たちはテレビの前で、帽子を深くかぶって、腕を組んで、真似をして歌っていたものです。当時はもちろん歌詞の意味なんてよく分かっていなかったけど、♪寝たふりしてる間に出て行ってくれ~ とか今聴くとなかなか深い歌詞ですね。間奏やエンディングの印象的なピアノは羽田健太郎さんが弾いているとのことです。ちなみに、ミュージック・マガジン2021年7月号の「昭和歌謡ベスト・ソングス100 [70年代編] 」という企画でもかなり上位にランクインしていました。当然ですね。

2. サムライ
ここで、目からウロコの「サムライ」アルバム・バージョン!サビ始まりではなくて、ピアノ・イントロから始まるこのバージョンは初めて聞いた時は新鮮でした。77年11月にアルバム収録曲としてこの「サムライ」が先にリリースされ、翌78年にシングルとして新しいバージョンがリリースされました。その年放送が開始された「ザ・ベストテン」でずっと上位をキープしていたことを子どもながらに覚えています。この曲は当時はあまり好きではなかったかもしれませんが、それから数十年の時を経た今、個人的にジュリーの楽曲の中でも1、2位を争うほど大好きなナンバーとなっています。

3. ナイフをとれよ
超がつくほどの名曲たちに囲まれて、ややひっそりと佇む感じになっているミディアム・スローの歌謡ナンバー。イントロ、間奏、エンディングのリード・ギターのフレーズがいいですね。男の哀愁漂う楽曲です。

4. 憎みきれないろくでなし
「勝手にしやがれ」に続くシングル曲。「勝手にしやがれ」の次の曲、というのはかなりの大役だったと思うのですが、その重圧に決して負けないインパクトのある楽曲をサラリとリリースできてしまったのはさすがジュリーだと思います。井上堯之バンドの魅力がよく出たナンバーで、ギターとベースのユニゾンのリフとか、間奏のギターソロなどが印象的でカッコいいです。タイトルの「憎みきれないろくでなし」の唯一無二感がハンパないですね。

5. ママ・・・・・・
後の「LOVE(抱きしめたい)」のようなイントロに導かれて始まりますが、これはアルバム曲ならではの、かなり攻めてる楽曲ですね。幼い頃の「傷」や「罪」について、ママに呼びかけて、問いかける。7分を超えるナンバーで、時に絶叫を交えて母親に呼びかける手法など、人によって好みは分かれそうですが、クイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」やジョン・レノンの「マザー」といった洋楽からの影響が感じられますね。

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アルバムを通して聴くと、シングル数曲に他の曲を何曲か収録した単なる“寄せ集め”ではないことがよく分かります。タイトル「思いきり気障な人生」そのものがこのアルバムのテーマになっていて、もっと言うと、男の「強がり」「やせがまん」みたいなものが歌詞のあちこちから垣間見られるのが、このアルバムを楽しむ(?) ポイントのような感じがします。
ジュリーはこの後も「ダーリング」「LOVE(抱きしめたい)」「カサブランカ・ダンディ」と大ヒットを連発。ここまでカッコよさと歌い手としての実力とを両立させた歌手って、歌謡史の中でもそういないのではないでしょうか。またいずれ他のアルバムも取り上げてみたいと思います。

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