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Daryl Hall & John Oates『Abandoned Luncheonette』 (1973)

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70年代後半以降、特に80年代に大ヒットを連発して、日本の洋楽ファンにも絶大な人気を誇っていたホール&オーツ。その80年代がリアルタイムな私にとっては、彼らの作品で73年というとかなり古い印象を受けますが、このセカンドはホント素晴らしい内容のアルバムで、初めて聴いた時は驚いたものでした。フォーキーなサウンドを下地にしたナンバーもありつつ、AOR的センスを早くも先取りしたような楽曲やアレンジが随所に光っています。
アルバム通して素晴らしいんですけど、特にA面はホールとオーツが互角にリードを分け合っていたり、デュオとしての路線が前面に出ていたりで、大のお気に入りです。大半の曲でドラムを叩くバーナード・パーディ他、バック陣もタイトな演奏を聞かせてくれていて、90年代~00年代頃にはフリーソウル的な側面からも注目されていたアルバムでしたよね。

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SIDE 1
1. When The Morning Comes
オープニングを飾るフォーキーなミディアム・メロウ・ナンバー。時折ファルセットを織り交ぜて歌うダリル・ホールのボーカルは爽やかで、すでにキラリと光るものがありますよね。メロディーもとても美しく印象的で、タイトルからしてオープニングにピッタリな楽曲です。

2. Had I Known You Better Then
アルバム序盤はフォーキーな路線が続きます。1曲目をホールが歌えば、2曲目はオーツが歌う。このバランス感覚が特にこのアルバムのA面の魅力ですね。シンプルに始まる曲ですが、途中からホールのつやのあるボーカルが絡んでくるにつれて、楽曲がどんどん華やかになっていきます。

3. Las Vegas Turnaround (the stewardess song)
この曲はホール&オーツのデュオとしての魅力が前面に出ているナンバーの代表格。アコースティック・サウンドにコンガやドラムのリズムがよく溶け込んだ、グルーヴィーなサウンドがとても心地よいです。う~ん聴けば聴くほど名曲! 間奏のサックス・ソロもいいですね。

4. She's Gone
これはシングル曲ですが、リリース当初はあまり売れず、ホール&オーツの人気上昇後の76年に再発シングルが大ヒット。たしかに時代を先取りしたようなAOR路線のムード漂うナンバーで、後半のアレンジの盛り上げ方なども最初の3曲とはかなり雰囲気を異にしています。

5. I'm Just A Kid (Don't Make Me Feel Like A Man)
A面は5曲中3曲がジョン・オーツのナンバー。彼のボーカルを中心に、ホールのハモリがいい感じに絡んできます。前半はフォーキーですが、中盤バーナード・パーディのドラムが入ってきて一挙にタイトな楽曲に様変わりします。後半のキメのところとかめちゃめちゃカッコいいですね。

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SIDE 2
1. Abandoned Luncheonette
A面がフォーキー路線なら、B面はAOR~ブルー・アイド・ソウル路線といったところでしょうか。トップを飾るタイトル曲は静かめに始まるナンバーですが、♪She was twenty ~ とホールが歌い出すところでまずハッとさせられます。そこからホーンやコーラスが絡み、リズムの変化を取り入れたり、なかなか面白い展開の楽曲となっています。

2. Lady Rain
アコースティックなファンキー・ソウル・ナンバー。イントロのコード・ストロークはマンドリン、間奏のクレイジーなエレキ・ヴァイオリン(?)のソロ、ヒュー・マクラッケンによるブルージーなリード・ギターの絡みなど、やや不思議な方向性のアレンジではありますが、楽曲はしっかりとカッコいいですね。ボーカルのリピートから、いきなり曲が終わってストリングスで次の曲に繋げるあたりは、名プロデューサー、アリフ・マーディンの手腕といったところでしょうか。

3. Laughing Boy
10秒弱のストリングスの後、ホールによるピアノ弾き語りのこの曲が始まります。なかなか一筋縄ではいかない独特な雰囲気の楽曲となっていますが、フリューゲル・ホルンによる間奏や後半のストリングスが、この曲独自の雰囲気をさらに盛り立てている感じです。

4. Everytime I Look At You
アルバムのラストはファンキーなバンド・サウンドをバックにホールが歌い上げるこのナンバー。オーツはアレンジャーのクリス・ボンドとともにエレキ・ギターを担当しています。間奏のアンサンブル~ギター・ソロの流れの後、ボーカル&コーラスのリピートで盛り上がてエンディングか?と思いきや、ラストはフィドルが登場する新たな展開が待っていました。

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ホール&オーツのアルバムではこれが一番好き!という人が、以前別の場所でこの盤を紹介した時に結構いらっしゃいました。私もほぼ同じ意見です。「ほぼ」と言ったのは、洋楽にハマり出した中学生の頃にリアルタイムで聴いていた『Private Eyes』や『H2O』もやはり捨てがたい、という気持ちからです。ただこのアルバムを聴いて、ホール&オーツの印象がかなり変わったのは貴重な体験でした。特に彼らのデュオとしての魅力が溢れたA面はこれからも何度も何度もターンテーブルに乗っていくことでしょう。

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