森博嗣「ナ・バ・テア」
「僕」は戦闘機のパイロットで、空を飛ぶことが好き。
ただそれだけを生きがいに、命をかけて空を飛ぶために生きている。
自分以外に誰かがいると、そいつとの関係を考えなくてはならなくなる。その苦労に人間はずっと取り憑かれている。
外側には、あまり面白い対象がない。
空を飛んでいる間だけは、地上の濁った人間関係から逃れられる。
でも、例外的な「彼」が現れたことで「僕」の中の何かが変わり、新しいものが生まれる。
「僕」にとって綺麗な心でいられる場所は、戦闘機のコックピットであり空中である。
私にとってはなんだろうと考えると、それは小説を読むことと勉強をすることだなと。
学校に馴染めずに鬱々としていた子供時代に、生きていくことに絶望しきれなかったのは小説と勉強があったからだと思う。
スマホでゲームをしたり、漫画を読んだり、ドラマや映画を観たり。
そういうのも楽しいけれど楽しいのはその一瞬だけ。
身近で手軽ですぐに楽しめる。
でも、長続きしない。
すぐ隣に現実や日常があってすぐに引き戻されてしまう。
ごちゃごちゃした現実から一番遠い場所へ連れて行ってくれて、モヤモヤした心をすっきりさせてくれることは、自分にとっては小説を読むことと勉強することだった。
子供のころからずっとそうだったし、現実逃避の手段でしかないから何かに役立てようなどと思ったことはないんだけど。
社会の役には立たないけれど、自分を生かすための役には立っているかな。
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