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柏市議会におけるハラスメント防止の取組について#2 「議員提案によるハラスメント防止条例が制定されました」

議員提案で「柏市議会ハラスメント防止条例」が成立・施行

令和5年6月2日(金)、柏市議会令和5年第2回定例会の招集日において、議員提出議案第3号「柏市議会ハラスメント防止条例」が上程され、質疑・採決を経た結果、賛成多数で可決されました。即日施行です。
 条例策定作業と同時進行で行ったハラスメント実態調査アンケートの集計結果がマスコミで大きく取り上げられたことから、招集日の本会議場にはテレビカメラが入るなど、普段とは異なる物々しい雰囲気でした。当日の模様は市議会ホームページで動画が配信されています。約1時間半の長丁場でしたが私が答弁をしていますので、ぜひご覧になってご意見をお寄せください。

 昨年末に投稿した第1回目では、「ハラスメント防止のための条例制定に向けた検討会」(以下、検討会)が設置された経緯を含め検討会初日の模様をまとめました。その中で検討会における議論の過程を皆さまにお伝えしていく旨の文章を書きましたが、結果として第2回目の投稿が条例成立後になってしまいました。
 実際に検討会の議論をスタートさせてみて、市議会全会派で構成される検討会の運営が予想していた以上に綱渡りであったことから、私自身の発言が条例制定に向けた議論に悪い影響を与えてはならないという思いに至り発信を控えたというのが本当のところですので、この点はぜひご理解をいただけるとありがたいです。実際に議論が暗礁に乗り上げ、検討会が完全にストップする状況もありました。条例が成立しましたので、この辺りの経緯は可能な限り発信していきたいと考えています。紆余曲折がありましたが、結果的には闊達な議論を通じて良い形で条例がまとまりました。第1回目の投稿も合わせてご覧いただけるとありがたいです。

柏市議会におけるハラスメント防止の取組について#1 「これから議論を重ねていきます」|古川隆史(ふるかわ たかふみ・柏市議会議員) (note.com)

 条例が成立したことにより議長から諮問を受けた検討会の役割は終えましたが(「条例制定に向けた」検討会でしたので)、検討会とは別の形で議会としての自浄作用が根付くような取り組みを継続的に進めていく必要性を全メンバーで確認しました。私自身も柏市議会の議席をお預かりする立場である限り、しっかりとフォローしていきます。


実態調査アンケート

やはりここから書き始めなけらばならないと考えます。柏市役所職員の皆さまと柏市議会議員全員を対象に行ったハラスメントに関する実態調査アンケートの集計結果は以下の通りです。

  議会事務局で集計結果がまとめられ、座長として最初に目を通した際の感想は「絶句」でした。第1回目の投稿でご説明した通り、検討会初日に条例制定と実態調査アンケートの2本柱で議論を進めていこうと提案したのは私です。目を覆いたくなるような集計結果を目の当たりにして、「条例を作ってどこまで状況を改善できるのか」、「アンケートに協力して下さった皆さんを落胆させないような取組をしなければならない」等、様々な思いが頭の中を駆け巡りました。皆さまから負託を受けて柏市議会の議席をお預かりしてきた立場からすると、このような状況を放置してきてしまった責任を痛感します。またこれは議員個人の問題ではなく柏市議会全体の問題でありますし、私を含めた全ての柏市議会議員が加害者である可能性がありますので、改めて襟を正してまいります。柏市議会は、ハラスメント防止に対してゼロからではなくマイナスから取り組んでいくことになります。


アンケート作成

実態調査アンケートの質問項目は検討会メンバーで練り上げました。一人でも多くの方々に回答していただけるように、作成にあたっては主に以下のような点に留意しました。

  • 具体的なハラスメントの事例を交えながら、回答者に分かりやすい内容にすること

  • あまり質問項目を多くしないこと

  • 回答者の匿名性を守ること

  • 回答に負担がかからない方法でアンケートを実施すること

 このような意見を踏まえ、職員の皆さま対象のアンケート調査は庁内ネッ トワークのアンケート機能を、市議会議員を対象にしたアンケート調査は市議会で利用しているラインワークスのアンケート機能をそれぞれ利用して調査を実施しました。回答者の匿名性を守るために、アンケート調査の自由記載欄を含めた全項目の「生の回答」を議会事務局が集計し、議長や私たち検討会メンバーを含めた市議会議員には匿名性が確保された集計結果のみが共有されました。市議会議員は誰も「生の回答」には触れていません。あってはならないことですが、回答者が特定されることによって当該市議会議員からの報復が無いようにするためです。


アンケートに関して私が主張した2つの視点

実態調査アンケートの実施を提案した者として、以下の2点はどうしても譲れないと考えていました。

  • それまでにあったであろうハラスメント行為を、今回の条例制定を機に市議会が不問に付そうとしていると受け止められないようにすること

  • アリバイ的なアンケート調査と受け止められないようにすること

条例は遡及するか


1つ目については、「条例の効力は過去に遡って適用されるのか」という議論と関連します。私は法律の専門家ではないので稚拙な表現になってしまいますが、検討会の議論では、様々な手続きを経て議員によるハラスメント行為が確認された場合には当該市議会議員の氏名公表を盛り込む方向でいたとところ、氏名公表のような罰則的な意味を持つとも考えられる規定には「過去に遡らずこれから起きる事例にのみ適用される」という理屈が出てきました。議論の深堀はしませんが、これは率直に言っておかしな話だと考えます。条例をはじめとしたルールが作られていない状況でも、もし告発があれば市議会として対応しなければなりませんし、ルールが無い状況でも市議会議員によるハラスメント行為が確認された場合は氏名を公表するのが基本線だと思います。被害者に寄り添うルール作りを行うと言いながら、かえって条例制定に向けた私たちの取組が氏名公表を妨げる結果にならないかと大変気になりました。
 また仮定の話ですが、市議会議員の実名を挙げて告発したいと考えている方がいた場合に、項目を選択するだけのアンケートでは表面的な内容と受け取られてしまう可能性があるので、質問項目には自由記載欄を設けると同時に、最後の設問で回答者が議会事務局と個別に連絡が取れるようにしました。下の画像が実際に使われたアンケートの該当部分です。

アンケートの調査項目は検討会で時間をかけて議論しました。

もう少し広くご意見をいただけるような方法がなかったかどうか、この点は今でも気になっていますが、検討会内で様々な意見が出された中で、このような形にまとまりました。

市議会の本気度を理解していただくために


 2つ目は「どうせ議員は口だけだろう」と思われ、回答率が低くなってしまうのではないかという漠然とした不安があったことに起因します。市議会として真摯に取組んでいることをお伝えするために、庁内ネットワークに検討会正副座長名でアンケート回答のご協力をお願いする文章を載せていただきました。以下、少し長いですが全文を掲載します。


柏市議会ハラスメント防止のための条例制定に向けた検討会
座 長 古川隆史
副座長 小松幸子

皆さま、私たち「ハラスメント防止のための条例制定に向けた検討会」がお願いしている実態調査アンケートにご協力いただきありがとうございます。

柏市議会では、円谷憲人議長の諮問を受けて、柏市議会議員による様々なハラス メントを根絶していくための第一歩として「(仮称)柏市議会ハラスメント防止条例」の制定に向けて全会派で構成する検討会を立ち上げ、本日までに専門家を招聘するなどして8回の検討会を開いて議論を重ねてきています。同条例は第二回定例会での上程・可決を目指しています。

柏市議会が策定する条例は、他自治体議会が制定している条例と比較して私たち議員に対して厳しい内容を考えています。ハラスメントは人権問題である上に、 ハラスメントによって職場のパフォーマンスが下がることは市民の皆さまにとって大きな不利益になりますので、私たち市議会議員を含めた公務員は高い基準で取組んでいくべきであると考えるからです。

条例制定はあくまでも第一歩に過ぎませんので、今年8月の改選以降も研修等を重ねながら継続的に取組んでいきたいと考えています。 このような趣旨から条例制定と同時に実態調査を行いたいと考え、ご多忙のところ皆さまにご協力をお願いしているところです。アンケートの集計結果は匿名性を担保した上で市ホームページ等にて公表してまいります。日頃、私たち柏市議会議員との接点がない方々もいらっしゃると思いますが、ぜひ可能な範囲でご回答いただけますと幸いです。 宜しくお願い申し上げます。



回答率が低いと実態を把握できないのみならず、そもそもこの問題に対する関心が低いと捉えられ、条例制定に異を唱える議員の条例不要論に利用されてしまうからです。最終的には1,800名超のご協力をいただいた訳ですが、これだけのアンケート結果を前にしても「条例は不要である」と主張した議員がいました。


市議会議員対象アンケート

マスコミではほぼ取り上げられませんでしたが、実は今回の実態調査アンケートは私たち市議会議員を対象にしたものも実施しました。回答数の多さと集計結果があまりにも酷かったことから市職員の皆さんを対象にしたアンケートのみが大きく報道されましたが、ぜひこちらの集計結果も合わせてご覧ください。
 多様な人材の政治参画が必要であると言われる一方で、それを受け入れる環境が全く整っていない現場の実態が浮き彫りになったと考えます。全35名の中で24名しかアンケートに回答していないこともこの現実を裏付けています。アンケート回答については、検討会に所属する各メンバーがそれぞれの所属会派で回答を促し、無所属議員については議会事務局から回答を促す連絡を入れています。回答の匿名性を担保する趣旨からラインワークスのアンケート機能を利用しましたので、誰が回答し、誰が無回答なのかを知る術はありません。無関心からなのか無回答の理由はわかりませんが、本当に残念です。議員間でのハラスメント防止にもしっかりと取組んでまいります。


今回は実態調査アンケートを中心に投稿させていただきましたが、この他にもお伝えしたいことが多くあります。条例制定過程の議論等について、また改めて投稿させていただきます。

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