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3年間のIT起業を振り返ってみた(黒字化や新規事業のコツなど)

2017年からの約3年間の起業期間を経て、今は外資系ITコンサルに就職した。
起業の振り返りと新規事業をやってわかった発見や
どんなふうに感じたかを書いていきたい。

今回は2回目の起業、1回目の起業について

2014年に「起業しよう!」と思いたち
新卒で3年間勤めたキヤノンを退職してから、まずはじめに物販ビジネスを手がけようとした。このときの売上は年間約10万円未満、リュックとタオルがわずかに売れたのみで終わった。
やはりテクノロジーという自分が常に人生で持っていた軸から大きくブレてお金に集中した結果、自分独自の価値を提供しているわけでもなければ情熱も持てないわけで当然といえば当然の結果だったと思う。
(まぁ、今考えてみれば本当に何も知らなかったなぁという一言に尽きるし、もっとやり口いくらでもあっただろと思うし、現在でも物販で儲けている人はたくさんいる。
でもやっぱり情熱を持ち続けられない起業は普通は失敗しますわね。)

このうまくいかないときに何がツライってお金が徐々に減っていくことで
 お金が減る→減らすまいと外出減らす→一人で悩む の精神的な負のスパイラルがきつかった。
このとき「貧すれば鈍する」ということを肌で感じたし、今でもやっぱりどんな興味が薄い仕事であったとしても根底で「仕事がある、必要とされてるってありがたい!」と思える。

さて、その後、AI(≒機械学習)に出会い技術に心から感動して
AIベンチャー企業のNextremerに就職し機械学習エンジニアリーダーなど経て再び
2017年に独立・起業することとなった。

法務AIサービス事業(はじめの5ヶ月くらい)

まず法務AIサービスを作ることにした。
具体的にはAIによる契約書のオンライン自動生成・自動評価サービスだ。
なぜこれを作ろうと思ったか?それは

・AIによって士業は自動化されていくだろう
・自然言語処理のほうが日本語使うので技術的にコモディティ化しにくい
・アメリカで類似サービスがそこそこ資金調達していた

・・・とかなんとか要するに頭で考えて有利だと思ったわけだが
法務に情熱も薄ければマーケティングも基礎からほぼ無知だったことが主な原因だろうと思うが、半年程度で撤退に至った。

余談だけど、2016年12月頃に「リーガルテック勉強会」を開いたとき、弁護士ドットコムの「クラウドサイン」を作った方が発表に来てくださった。
記憶が正しければすでに1000社以上はユーザーがいたが、今ほどスタンダードにはまだなっていなかった覚えがある。
当時は負けないぞと内心思っていたが、後から考えてサービスとしてのクオリティーが本当に高くて広がるべくして広がったなと思う。

この法務AIサービスに関する反省点を挙げればもうホント様々あるが
ひとつの発見として
 ・SaaSを(机上で)いきなり作ったら課題がズレやすい、売れにくい
ということがわかった。

昨今のITベンチャーはまずアイディアを考えて資金調達して
一個のSaaSで市場を席巻するような形が多いけれど
それだと成功確率はかなり低くなるのではないかと思う。
それよりまずは、受託案件でもヒアリングでも
「まずお金を払ってでも解決したい課題」を確かに複数クライアントから見つけて
共通項を提供するほうが理にかなっていると思う。

「これがあったら便利」「ここに困ってるっぽい」「これが流行っている」
の雰囲気で作り始めるとやっぱり「すごく便利!」と刺さる状態には持って行きにくい。

この法務サービスの場合で言えば
せっかくいろいろ弁護士の知り合いや法務事務所への訪問をしていたのだから
もっともっと法務での課題を深堀したり
「どのくらいの価格でどんなものがあれば便利か?」を
できる限り多くの業界関係者とつながって
、もっと突き詰めることだったと思う。


受託AI開発事業

振り返るとここが主力事業となったわけで
お仕事を依頼いただいた皆様のおかげもあり黒字化も達成した。
これだけで前回の起業から雲泥の進歩だが
ここでもやっぱり今思うと数々の反省点がある。

そのうちの一つは
 ・売上や利益の目標から決めるのは良くない
ということだ。
別の表現をすると、ただ利益を上げたいだけの事業だと中身がついて来にくい、のようなことだと思う。具体的な売上目標が決められるのは事業の芯や回し方が固まってきた段階なのではないか?という考え方もあると思う。
ついつい起業して一定売上が立ってくると
「次の売上に到達するにはどうしたらいいだろう?」と考えがち。
多分、社内で新規事業を担当される方も似た思考を持つことが多いのではなかろうか。

新規事業や起業には雑念が多く入りがち、
その上、準備や関係者とのやり取り、開発のマネージメントなど
やることいっぱいあって事業の軸がブレがち。

でも売上だけを前提にしたサービス設計は違っていると思う。
当たり前のようでいて抜けがちなのが
 「どうすればクライアントはもっと満足するだろう?」
とこれに尽きると思う。

価値には2種類の分け方があるという

・機能的価値
(例:燃費良くて壊れにくいプリウスが便利)
・情緒的価値
(例:スペック微妙だけどクラシックカーとかイタ車を持てたらかっこいい)

ビジネスにおいては必ずしも数字で便利さや価値を表せる場面ばかりではないと思う。つまり機能であれ情緒であれクライアントが満足すればそれは成長ビジネスの条件を満たしている、というのが真実だと思う。

ここが難しいところで完全に機能的価値に集中して便利なものを作ったとしても
情緒的に「これが欲しい!」とか「すごい!」と思う瞬間がなければ購入には至らないし、「それを多くのお金を払ってでもほしい」という要素も考慮するのがまた難しい。

要するに市場全体と売り方・中身もバランスが取れて
及第点だったときに事業として伸びていくということでしょう。

言うは易し、しかしここも起業全般において痛感したのが
「わかる」と「できる」はめっちゃ違う。
正しくは「わかったと思っている」と「実際に形にできる」の違いがある。


エピローグ

今回の起業でも本当に多くの学びがあったし
どうすれば何が起こったか、という経験値も蓄積できた。
エンジニアリングだけではなくマーケティング・セールスも含めた
全体像が少しずつ見えてきたように思う。

就職しようと思ったきっかけとして、プライベートなこととかいろいろあるけど
そのまま事業を続けることもできたが、起業して3年くらいして売上の伸びが大きくないと惰性が生まれてくるという点があった。
だからこそ環境を変えて新しい世界を見たいと思ったことがひとつある。

そして、まだまだ挑戦したいという闘志は俄然、持っているので
今後の僕の活躍をお楽しみに!

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