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大人が読んでもホロリとくる絵本『クマとこぐまのコンサート』

こんにちは、古河なつみです。
司書の仕事をしていた時に、本棚へ返却された本を戻す作業(排架、または配架と呼ばれる作業)をしていると、それだけで様々な本のタイトルや表紙を目にする事になります。
ともなれば、一目見て「いつか読みたい!」と忘れられなくなってしまう本と出会うことがあります。
今回紹介するのはそう思って実際に入手できたこちらの絵本です。

書影画像は版元ドットコム様よりお借りしました

『クマとこぐまのコンサート』
デイビット・リッチフィールド 作/俵万智 訳/ポプラ社

実はこの絵本はMOEの絵本屋さん大賞で2018年度に10位にランクインした『クマと森のピアノ』そして続編の『イヌと友だちのバイオリン』を経た一つのシリーズの最終作にあたる絵本です。

ざっくりとシリーズの時系列を説明すると
①『クマと森のピアノ』
 →こぐま時代のブラウンがピアニストになるお話
②『イヌと友だちのバイオリン』
 →有名ピアニストになった青年期のブラウンと楽団の仲間のお話
③『クマとこぐまのコンサート』
 →ピアニストを引退した老グマブラウンとこぐまのお話
……といった内容です。

表紙の画像を見ていただければわかると思いますが、可愛いけれどもチープすぎず、どのページを捲っても細やかで味わい深い挿絵がとても魅力的な作品です。

『クマとこぐまのコンサート』では第一線で活躍していたピアニストのクマ・ブラウンが己の老いを自覚し「もう自分は求められていない」と引退してしまう所から始まります。

ブラウンは森へ帰り、こぐまと出会います。
このこぐまがどうして一人ぼっちだったのか、なぜブラウンが引き取る事になったのかは作中では触れられません。確かなのはこのこぐまはブラウンにとって天からの贈り物だったということだけです。

かわいいこぐまの世話をすることで、ブラウンは元気を取り戻していきます。けれど、ある時おてんばなこぐまが森の奥にあったピアノを見つけてしまいます。ブラウンがピアニストだった時のことを嬉しそうに、寂しそうに話すのを見て、こぐまはブラウンの楽団仲間に手紙を送りました。

その手紙はどんな内容だったのか?
楽団仲間はお返事をくれるのか?

気になった方はぜひこの絵本を手に取ってみてください。
できれば一作目から読むのをオススメしますが、この『クマとこぐまのコンサート』の一冊だけでもじんわりと胸に沁みるお話になっています。

私はこの絵本を手に取った時、裏表紙に描かれていた閉じた天幕を「ああ、コンサートが終わった様子を表しているんだな」と思っていたのですが、絵本を読み終わって、最後の見開きのページの絵を見て「この天幕はきっとまた開く!」と考え直しました。

お話の内容として、イラストこそ誰でも楽しめるように描かれていますが、大人が読むと一層沁みるストーリーだと思います。

ここまでお読みくださりありがとうございました。
それでは、またお会いしましょう。

古河なつみ

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