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WBCを観戦しながら思い出した異次元野球小説『あるキング』と友人の話

こんばんは、古河なつみです。
WBCがかなり盛り上がっていますね!
以前に勤めていた図書館の同僚が「WBCが始まってから夜間の利用者さんがほとんど来ない(笑)」と教えてくれました。

オリンピックやワールドカップ、そして今回のWBCなど「スポーツ」はとても関心の集まりやすいジャンルです。それ故に様々なスポーツ小説が存在しているのですが、私が今まで読んだ中で一番印象深い本を一冊紹介します。


『あるキング』伊坂幸太郎 著

伊坂幸太郎さんと言えば、海外で映画化された殺し屋たちの物語である『マリアビートル』や、『死神と精度』『死神と浮力』のようなファンタジー要素のあるミステリ・サスペンスなど、様々な物語を描くベストセラー作家さんです。そんな伊坂さんが手がけた珍しい野球小説がこの『あるキング』です。

簡単なあらすじとしては、主人公である王求が熱心な野球ファンの親元で育ち、超人的な力を発揮してプロ野球のスター選手になっていくけれど……といった内容です。

私がこの本をよく覚えている理由は、本の内容とは別の「読書体験」が関係しています。

大学生時代に同じ司書学科だった仲の良い友達と感想を話し合っていると「伊坂さんの作品は大好きだけど、この『あるキング』だけは受け入れられない」と彼女がきっぱりと言ったのです。その子は穏やかな性格で、辛口の書評なんて今までに言ったのを聞いた事がありませんでした。私が驚いて理由を尋ねると「あり得なさすぎるから」と答えてくれました。

彼女は、実際に野球観戦に通ったり、ドームで売り子のバイトをしたり、推しの選手のアクリルスタンドを購入するくらいの熱烈な野球ファンであったが故に余りにも強すぎる選手として描かれた王求の人物像が受け入れられなかったのです。

私自身はスポーツ全般に疎い人間だったので「いつもと違うジャンルの伊坂さんの作品だからか、村上春樹さんみたいな文体で、不思議な雰囲気の小説だったね~」程度の浅い読みしかできていなかったので「読む人間によって受け取り方が変わる」というのはこういう事か!と学びにもなりました。

そして、この記事を書いた大きな理由はもう一つあります。
この友人とは十年以上も交流が続いており、先程WBCを観終わったようでこんなメッセージを貰いました。

「今だったら『あるキング』読みたい📚」

大谷さんや、ダルビッシュさん、村上さんや、ヌートバーさん……たくさんの「これまではあり得なかったレベルに強い」選手が全力で試合をしているWBCを観て、彼女も少し気が変わったようです。

まだまだWBCの戦いは続くようなので、楽しみですね!

ここまでお読みくださりありがとうございました。
それでは、またの夜に。

古河なつみ

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