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熱く語れますかの話。

夢を見ました。寝ている間に見る夢の話。

その類の夢の話は「・・で?」って感じになりそうで、普段は書くのを躊躇うんですけど、敢えて今回は書いてみます。


端的に言うと、夢の中で私は、かつての同級生と再会しました。彼はバンドを組んで音楽活動をした後、そのバンドを脱退して就職をします。そこまでは現実の話として私は知っていました。

ですから「久しぶりだね。今は何しているの?」ということを、私は彼に尋ねていました。夢の中なのに妙にリアルな設定で、その彼は「今はね、こういう仕事をしていてさ…」と詳しく教えてくれました。

申し訳ないのですが、実はその仕事内容について私にはよく理解できなかったので「そうなんだ、なるほどね」と適当な相槌を打ってその話を終わらせようとしました。

すると彼は「そっちは今、何しているの?」と訊いてきました。

「ああ、えっとねー・・」

と私が話し始めようというところで、夢から目が覚めました。



夢の話はここまで。

あっ、ほらやっぱり「・・で?」って感じになっちゃいました。

でも違うんです。ちょっとまだ言いたいことがあるので書かせてください。

その夢の中では、私が話し始めようとする場面で、何故か都合よくホワイトボードが目の前にありました。恐らくですけど、私は自分の仕事について書いて説明しようとしていました。

少し話が脱線するんですけど、かつて私が転職活動の面接を受けた際に、ホワイトボードを使って「今までやってきた仕事」について説明する機会があったんです。

その時は「アレもコレも話したい。でもそうすると時間足りないからなぁ。よし、それなら細かい内容ではなくてこのビジネススキームについて分かるように説明しよう」といった具合に、面接官に対してそれはもう熱く説明した記憶があります。

話を戻すと、その夢の中で私は「今の仕事」について、もしかしたら同じようにホワイトボードを使って旧友に説明しようとしていたのかもしれないと思いました。

しかし、現実に引き戻された起き抜けの頭が急に冴えて、ふと考え込んでしまいます。

「一体、何の話をする?」



私は、普段noteでアレやコレや仕事のことについてクドクドと書くことが多いんですよね。

ただ、もし現実の世界で「今はどんな仕事してんの?」と知り合いに訊かれた時に、いったいどんな話をすればいいんだろうと思ってしまったのです。

先に挙げた転職の面接では、ホワイトボードを使って図示して説明をしていました。ですが、今やっている仕事をそのように図示できるかと言われると、今の私にはその自信がありません。

と言うのも、私は日々、データの調査とかソースコードの修正とか、そういう細かい作業をやることが多いのですが、それは私にとって楽しくやりがいのある仕事である一方、正直「瑣末な作業」であることは確かです。いえ、もちろんそういう仕事が積み重なって、大きな仕事になっていくので、決して重要でないという意味ではないのですが、それでも仕事としては「スケールが小さいもの」と扱われても文句は言えません。

そのような「スケールの小さい仕事」をわざわざホワイトボードを使って説明するというのが、どうしても想像できないのです。今やっている仕事は楽しいけれど、客観的には「どうでもいい」「つまらない」「しょぼい」「ワケが分からない」そんなようなことを思われてしまうのだろうな、と。

ちなみに、私がかつて受けたその転職面接では、「A社とB社が取引する際にその債権を早期に現金化するニーズがあって、それはB社一社だけでなく、それ以外の複数社の取引先においてもニーズがあります。そのためには、このようなスキームを用いることで実現できるのですが、システムにおいてはこの土台を支える仕組みをこのような形で提供しています」的なことを、ホワイトボードで各関係者やらフローやらを記載して説明しました。

当時の私にとって、担当していたシステムが非常に大きいもので、しかも社内の研修も充実していたため、そういう「大きな絵」を描くことに全く抵抗ないものでした。面接官に熱く説明する際に「俺はこんなデカい仕事してんだぜ」とさえ思っていたかもしれません。

しかし当時やっていた仕事は、たしかにスケールの大きなものであった一方、下っ端の末端の末端である私が実際に担当する作業なんて、開発会社の人たちをまとめるものであったり、スケジュールや納期の調整だったり、何処かの誰かが書いた複雑で中身のよく分からない仕様書を鵜呑みにして、お客さんに説明したりとか、そういう「管理」と言いますか「仲介役」みたいなことばかりでした。

客観的に見れば、いかに「スケールの大きな仕事」のように見えていたとしても、当時は自分で手を動かしてバリバリとプログラムを書く機会などほとんどなく、何とも「つまらない」仕事を日々こなしていました。そして何より「自信が無い」状態でした。

そう考えると、今やっている仕事は、まさに現場仕事と言えるものです。実際に自分で手を動かしてシステムを作って調べて、それこそ隅々まで自分の理解して、そういう意味では「誰に何を訊かれたって、調べさえすれば基本的には全部自分で回答できるはずだ」という自信はあります。

ですが、それを他人に説明できる?そんな細かい話を?

とはいえ、規模がデカい仕事をしたいかと言われると、それも違うと思っています。

あの転職面接の際に熱く語っていた仕事内容は、本当は私のものではないと知っています。仕事のスケールが大きくなればなるほど、自分の手から離れていって、自分がやりたいことはできなくなることが多いです。

あの時に熱く語ったのは、もしかしたら仕事に対する熱意なんかじゃなくて、単なる自尊心でしかなかったのかもしれません。自分はこんな大きな仕事に携わっているのだという卑しいプライドです。

今は仕事に対する熱意はそれなりにあるつもりですが、いかんせん他人に理解してもらうにはあまりに細かく、込み入ったものです。

何か大きい仕事がしたいわけじゃない。でも「どんな仕事?」と訊かれて、手っ取り早く答えるためにはそれなりに大きな規模の仕事でないと、「うーん、まあ、こんな感じのことやっててさ・・」と業界のザックリした説明しかできない。仕事よりも業界の説明になるんです。それはもう薄っぺらい感じの。そんな細かい話をしても、それこそ「・・で?」という反応になりますから。

仕事について熱く語る。noteでは私は結果的に散々そんなふうなことを書いているような気がしますが、現実にはきっとそんなことはできないでしょう。コレだけの分量を人に話すなんて無理ですから。

そうすると、夢の中で私が説明しようとした仕事は、一体何なのだろう

そんなことを考えてしまった明け方でした。おしまい。

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