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黙っていいことにしました
人とふたりきりになるとき、どうしても沈黙がむず痒くてなんか「今日は寒くてね……へへ……」みたいなことを、喉の上顎の近くにモヤモヤとした物質を感じながら絞り出すんですけど、それを止めてみることにしました。
もうすでに絞り出してる時点でカスのかたまりを提供してしまっているし、何より自分が気持ち悪い。幸い、営業職ではないので、無理に天気の話をする必要はないと。
もう、沈黙をよしとすることにしました。コミュニケーションの場では、なんか「円滑さ」を求めるときに、沈黙を嫌って(共通の話題……)と頭がキュルキュルしだすんだけれど、話したいことがないなら、もうないんです。
逆に、こんなこと言う必要ないな……と思うけど、喉のちょうど唾のんだときにぐっとなる部分に言葉が溜まっちゃうときがあって、それはもう言ってしまおうと、思いました。
こないだ、塾で(塾で働いてます)買い出しを頼まれたときに塾長の自転車を借りたのですが、とっても、すてきな自転車で。ダークブラウンの車体はマット仕上げで、速さは出ないものの坂道が登りやすい。しみじみといい自転車だと思った。
でも勤務中にわざわざ言うことでもない。塾長は忙しい。
でも、そのときは意図的に、言ったほうがいいなと思った。仲良くなれるとかそういうメリットというか、機嫌を取るとかそういうことではなく。私の喉仏のあたりからただ排出したかった。
「自転車、いいですね。」
「いいよね、あれかなり細かくオーダーした」
言ってよかったと思った。
でも、こうだったらどうする?
「自転車、いいですね」
「あー、そうね」
自転車にこだわりがなかったパターン。
「自転車、いいですね」
「ありがとね」(買い出しに対して)
忙しくてそれどころではなかったパターン。
でもこれで傷つかないようにしよう。だって言う必要ないんだから。
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