見出し画像

【いつか伝説となる番組】有吉の壁の魅力とは

いつぞやオンエアされた麒麟の川島さん、オードリー若林さん、南海キャンディーズ山ちゃん、ハライチ澤部さんが集ったスペシャル番組のなかで、4人はレギュラーを多く持つようになっても「冠がなかなか付かない」とボヤいていた。

レギュラー番組をキー局すべてに持つだけでもえげつないのに、それを冠番組かつゴールデン・プライムで成し遂げた有吉さん。そのことがいかに偉業かは、業界にいる人間のほうが分かるのかもしれない。

私は有吉さんが好きで、よく出演番組を視聴しているが、有吉さんは番組ごとに見せる顔が少なからず違う。番組のテイストや時間帯によって立ちまわりを変えるのはプロなので当然とはいえ、その違いはどこにあるのか。

代表的な冠番組を取り上げて、有吉さんの魅力やその番組の見どころを考え直したい。

ここでは『有吉の壁』をピックアップします。

有吉の壁(日テレ/水曜19時)

時勢にも負けない最高のロケーション

『有吉の壁』は有吉さんを代表する番組のひとつだ。

2015年から5年間ほど深夜帯メインで不定期に放送し、2020年からゴールデン進出。お笑いファンからキッズ・ファミリー層まで、有吉さんの冠番組では一番幅広い層を取り込んでるように思う。

番組が生まれたのは、『有吉ゼミ』の担当ディレクター橋本和明さんが有吉さんと飲んだ際、トーク力が重視されるひな壇バラエティばかりとなっている時代を背景に「ネタ芸人が活躍できるお笑い番組がやりたいね」と話したのがきっかけらしい。

予算のないテレビ業界。大掛かりなセットを要するコント番組は年々厳しいとされていたのを逆手にとり、遊園地からショッピングモール、専門学校や結婚式場まで多様なロケーションをそのまま舞台装置として使ったのは発明だと思う。バラエティとしてのいわば「借景」。それに成功した斬新さと功績はものすごい。

コロナ禍でご時世的に利用者や観光客が減って施設を持て余していた運営側はPRも兼ねて舞台を提供しやすくなり、セットにかける予算が不要となる番組側ともその点win-winに。本物を使うからこそ実現できるリアリティは、コントの質も芸人さんのモチベーションも両方高めている。

内村プロデュースをオマージュするような「有吉を笑わせたら1ポイント」という設定こそあるものの、ポイントに応じた表彰やランキングは特にない。なんならバツを出されたほうがおいしくなってオンエアに乗るパターンもある。

ポイント制は明らかに形骸化しているのに、あえて設定を残してるようなところも好き。勝手な印象では通算ポイント獲得数はパンサー菅さん、シソンヌじろうさん、さらば青春の光がトップ争いだろうか。

壁の醍醐味は一般人の壁での芸人さんと一般の方のコラボレーションにもある。施設の店員さんや通行人のような人まで芸人さんと協力してコントを作り上げる。高校生から商店街の店主まで、テレビの世界の一流芸人と一緒にコントをやるなんて夢のような話だ。実はこれが一番すごくてバラエティとしては一番夢と元気をくれる試みなんじゃないかとすら感じる。

有吉さんの判定が終わった後に芸人さんが協力してくれた方に頭を下げてたり、そもそも有吉さんも素人の方が参加してくれた際は判定も甘めだったりする。それらすべてが多幸感に満ちる。

有吉さんを笑わせたい

あらゆるネタを見て⚪︎×判定を出す有吉さんは厳しくも愛に満ち、心から楽しそうにしている。

奥様の夏目ちゃんが『A-Studio』に出演した際には夫婦でオンエアを見ることもあると語っていた。現場でも観てるのに有吉さんはテレビの前でもまたゲラゲラ笑うという。

夏目「みんな面白いよねってしみじみ言うんですよ。本当にみんなうまいなって。仕事好きなんだねって言ったら、『いや俺は人が好きなんだよ』って酔っ払いながら言ってました」

A-Studio
A-Studioにコメント出演

収録のときはカメラがまわってないところで後輩たちと馴れ合うことはせず、かといって横柄でもなく、腰を低くしながら現場入りし、終わりにはそそくさと帰ると共演者からは明かされている。

本来ネタをガチガチに審査するような立場ではないとおそらく自覚している有吉さんが、ネタをする後輩たちをリスペクトして一線置いているような感じも窺える。

とはいえ、今や名実ともにバラエティ界の覇者である有吉さんに笑ってほしい芸人は多いだろう。

基本は厳しく、忖度もしない。
鋭利な視点で容赦なくバッサリ斬ることも躊躇せず、自惚れや怠惰があればすぐに見抜いて看過しない。そんな嘘のない有吉さんに評価されたり笑ってもらえたりすることは、きっと本物だと信じられるからだと思う。

今では番組のエースのように輝くパンサー菅さんのことをいち早く評価し、そのことをTwitterでも呟き、菅さんがそれを見て感動のあまり泣いたというエピソードも知られるところ。

誰に何をどんなふうにどんなタイミングを振るべきか、マルとバツ、どちらの判定だとその芸人にとっておいしくなるのか。有吉さんのアメとムチの使い分けや笑いの出どころを瞬時に嗅ぎ分ける判断力は絶品としか言いようがない。

佐藤栞里という女神

とはいっても基本的には当たりのキツい有吉さん。それを中和する存在がアシスタントで隣にいる佐藤栞里ちゃんだ。

最高のバランスを誇る名コンビ

有吉さんに負けず劣らずゲラの栞里ちゃん。

空を覆う雲を一瞬でかき消すような弾ける笑顔は視聴者から見てもハッピーで、その自然なリアクションはコントの状況説明を助けるほどポップだ。

スベることも隣り合わせの芸人さんにとって佐藤栞里という女神の微笑みがソッと添えられているだけでいかに救われるかは、あらゆる壁芸人が度々言及している。番組の雰囲気がなんとなく明るくやわらかく見えるのも彼女の存在が大きく、ゴールデンにも欠かせない役割を担っている。

本編並みに人気のオープニング


番組の魅力は挙げたらキリがないけれど、オンエア前にYouTubeで公開されるオープニングは外せない。

これは本編の前に全員が集合し、その日の出演者にまつわる直近のトピックスを有吉さんがイジっていくもの。

名だたる芸人さんたちがワイワイしてる姿を拝めるし、有吉さんの厳しいイジリも堪能できる。オンエアではキッズや主婦も見てる時間帯ゆえセーブしている有吉さんが、このオープニングではさらっと暴言や悪態をかますのもたまらない。

栞里ちゃんが病欠した際にピンチヒッターでアシスタントを務めたパーパーあいなぷぅの回なんて傑作だった。オタサーの姫のように扱われるあいなぷぅと、あいなぷぅに甘い有吉さん。
そこに全力でツッコミを入れる芸人さんたちの構図は微笑ましく、このオープニングの再生回数は異例のペースで100万回を突破していた。

代理アシスタントを務めたあいなぷぅ


若手はもちろん、有吉さんと同世代クラスかそれ以上の芸人さんも出てくる。思わぬベテランが照れくさそうにオープニングで初登場の挨拶するのも見どころ。そういうときには必ず敬意を払って迎えてる有吉さんも素敵だ。

いつか伝説の番組になる

コント芸人がテレビで、そして最高のロケーションと時間帯で輝く。コント師にとってこんなありがたい場はないはずだ。

ブレイクアーティスト選手権ではチョコプラのネタを筆頭に多くの人気キャラを輩出。とにかく明るい安村さんの躍進も壁があってこそだし、いまやミスター壁とも称される存在である。コーナーはCM獲得やライブ開催にまで展開し、劇場公開にまで及ぶ企画まで誕生させるなど話題に事欠かない。

壁を代表するコンビ・チョコプラ


ちょっとでも手を抜けばすぐにマンネリ化したって不思議じゃないのに、本筋は大切に守りつつも次から次へと新陳代謝をさせ、それでいて悪手を踏まない制作陣の努力は賞賛されるべきだ。

番組が長くになるにつれ、レギュラー出演の芸人からも賞レースチャンピオンや人気者が続々と誕生している。冷静に見直すと驚くが、これほどまでの売れっ子たちが一挙に集結する番組は他にない。スペシャルとか関係なく通常放送から豪華なのだ。しかも継続して出てくれていて、壁は踏み台にされていない。

以前にマヂカルラブリーの野田さんがM-1優勝ネタの吊り革を彷彿とさせる笑いを披露した際、有吉さんは「安売りすんなよ笑」的なことを言ったが、野田さんは「壁は安くない」と真顔で即答していた。

毎度のオープニング写真だいすき

オープニングがあり、他では見られない芸人同士の組み合わせや掛け合いも楽しめるとあって、もはやスケールMAXのお笑いLIVEそのもの。毎週タダで見られるなんて本当に贅沢。

有吉の壁はいつまでも長く続いてほしい。


いつか間違いなく伝説として語り継がれるバラエティだろう。「こんな大物たちが毎週のように出揃っていたの?嘘でしょ」

そんな将来が必ずくる。


鬼監督のように厳しい有吉さんに立ち向かう芸人さんたちと、それを見守るマネージャーのような栞里ちゃん。

笑い声の絶えない終わらない青春が、マルもバツも壁も越えて、お茶の間に届いている。

オープニングといえば三四郎・相田さん



最後まで読んでくださった人ありがとうございます。

サポートが溜まったらあたらしいテレビ買います