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17歳の夏

 17歳の夏って今回が最初で最後らしい。サザエさん方式の人生が良かった。
 本当は高2の夏が一番輝いているべきだと思う(思わされている)。しかしながら昨年は冷房の効いた部屋でひとり昼寝をしていたら終わっていたため、秋生まれの私は言い訳のために「17歳の夏」と表現することとする。

 あまりにも青春の解像度が低くて何から手を付けていいのかわからない。浴衣を着て夏祭りは暑すぎる、制服はない、二人乗りは禁止されています。
 Francfrancのハンディーファンが欲しいかな、私に許される最大限の青春な気がする。

 学校最寄り駅前の広場で本物の高校生たちが遊んでいた、制服を着て。水飲み場の蛇口を指で押さえてバーッってしてた。偽物の高校生である私はその水が絶対にかからないよう車道ギリギリを早足で歩いた。
 彼ら彼女らは、黒光りする甲虫の如く進む私を目にも留めずに談笑を続けていた。

 眩しい太陽が照らす坂道をシルバーのママチャリで駆け登る。スカートと黒髪を風になびかせる。
 授業わかんねー、また赤点だったわ笑。補習サボりてー!とか言ってさ。
 あるいはみんなでRIP SLYMEの熱帯夜を踊りながら校舎を一周するとか。 
 そういう青春を送りたかったよ、達成できたの赤点だけ。

 仮に私が普通校に行ったとして、今挙げたような青春を送ることはないだろう。私はずっとひとりで本読むかTwitter見てるかの二択だし。

 言い訳みたいに聞こえるだろうし実際言い訳だけど、私はこの学校に来たこと後悔してないよ。楽しいもん。
 ただ具体的に何が楽しいかと言われるとニコニコ動画(re:仮)の動画が入れ替わるたびに「うわ、え、これ20XX年なの!?」「うぉっしゃぁ神引きした」と騒いだりマイナーなネットミームでバカ騒ぎしたりしていることなので、果たしてそんなんで良かったのか?という疑問はどこまでも残る。
 居心地が良いことだけは確か。

 カゲプロの曲を聴いて懐かしさと悔しさと苦しさに沈んでいる。
 まだ7月になったばかりだというのに、サマータイムレコードで夏の終わりを感じて涙を流している。赤いパーカーを着て白いイヤホンを耳に当てて少しニヤッとするからさ、誰かこの合図を拾っておくれ。

 私を高校生として扱ってくれるのはもうカラオケまねきのゼロカラしかない。ひとりじゃ使えないけど。
 残り半年ちょっととなった「高校生」と呼ばれる期間も、世間から乖離した山奥でひっそりと暮らしていくのだ。



 先日、クリアファイルを貰うために大量のチョコ菓子を購入したのだが、

 チョコベビー、縮んだ?

 あるいは私が大きくなったのか。

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