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企業ファンサイト2.0-09

さて、なぞなぞである。

・5
・33
・60
・190
・190
・370
・600
・1000

この数字は何か?

答えは、
・そごう西武 :5店鋪閉店
・イトーヨーカドー:33店閉店
・ヤマダ電機:60店閉店
・ほっともっと:190店閉店
・プレナス(やよい軒) :190店鋪閉店
・デニーズ:370店閉店
・オンワード :600店閉店
・セブンイレブン:1000店鋪閉店

昨年、新聞やTVで発表されたものであるが、各業態でチェーン展開している店舗をここ数年で閉鎖するという数である。
そもそも、なぜ閉店するのか。
一番の要因は人口の減少である。
しかも、地方での減少の度合いが急激に変化しているのだ。

ベストセラーとなった河合雅司著の『未来の年表』、そしてそれに続く『未来の地図帳』でもあきらかなように、いま目の前にある問題は、少子化と高齢社会であることはもはや誰もが否定できない「常識」となった。
具体的に言えば、日本の人口は2019年1億2390万人が2048年には1億人を割って9913万人となる。(国立社会保障・人口問題研究所調べ)
つまり、30年後2477万人のお客様がいなくなるということだ。
これはオーストラリアの総人口2499万人にほぼ相当する。(出典:Demographic Yearbook2018 Webデータ)

さらにさかのぼって、この傾向を端的に指摘していたのが、『デフレの正体』藻谷浩介著である。
このなかで、ものが売れないのは景気が悪いからではなく、働き盛りの人の数、「生産年齢人口」が戦後急激に拡大し、それが減少に転じたことでものが売れなくなったと看破している。
2010年8月発刊である。
いまから、10年も前に書かれたものであるが、いまさらながら藻谷の理路に、納得させられる。

加えて、このコロナ禍である。
6月以降、再び感染者数が拡大し客足の戻りは鈍いままである。
国内に487店舗(5月末時点)を展開する居酒屋チェーンのワタミは、「三代目鳥メロ」や「ミライザカ」を中心に2020年内に約65店舗を閉店する方針。
ワタミの国内外食事業における既存店売上高は、4月は前年同月比で92.5%減、5月も同92.8%減と10分の1以下に落ち込んだという。
同様にコロナ影響を受けているファミリーレストランなど761店舗(3月末時点)を運営するロイヤルホールディングスは、天丼チェーンの「天丼てんや」など不採算の約70店舗を2021年12月までに閉店する。
九州を地盤とするファミリーレストランチェーンのジョイフルも、直営店の3割にあたる約200店を7月以降に閉店していく。
「ガスト」や「バーミヤン」を擁するすかいらーくホールディングスは、今後も深夜時間帯の需要が減少するとみて、グループ全店の退店時刻を原則23時半とし、従来より2時間ほど早め、その数はグループ店舗数3269店(5月末時点)のうち、約2600店にのぼる。
幸楽苑ホールディングスも、ロードサイドに構える「幸楽苑」の直営店の多くは24時に営業を終えていたが、7月以降は原則21時に営業が終了する。

まさしく、いま外食業界では過去に例がないほどの閉店ラッシュが起きている。

先週、久々にクライアントと直接対面での打ち合わせがあり、都内に出かけた。
仕事が終わり、少し小腹が空いたので食事を摂ろうと駅までの道すがら、居並ぶ居酒屋・カフェ・定食屋さんなど覗いてみた。
どこの店舗も席の空きが目立ち、おそらく半分以下の客入りではないかと感じた。
そして、入るのに二の足を踏む・・・。
これも、コロナ禍での影響なのだろう。

外食店経営の常識が一変した。
都内の繁華街に競うように出店し、店舗にたくさんの人を入れ、どんどん回転させ賑わせる。
集客にはグルメサイトを使って顧客を呼び込み、満席にする。
いわば、これまでの外食産業の常套手段がもろくも崩れ去ろうとしている。
競って奪い合っていた好立地店舗物件の高い賃料はかえって重しになり、店内いっぱいにお客様を入れることは、今やもっとも敬遠される。
加えて、このコロナ禍の事態でグルメサイトは(集客が芳しくない)ポイントなどによる新規顧客獲得にはまずまず有効だったが、常連客の確保に十分な力を持てていないことも判明してきた。
ニュース番組からはやや煽り気味に、都内の飲食店の多くは緊急事態宣言を受け、4月に休業し、宣言解除後に再開したものの、客足は宣言以前の6割に満たないという情報が流れてくる。
僕自身の実感からしても、これから先も、いまの状態が続くとすれば外食の機会はあきらかに減るだろう。
さらに、政府が要請している企業のリモートワーク7割が定着すれば、間違いなくサラリーマンの方々が会社帰りに飲んで帰る習慣も減る。
そして、感染の第2波(もう来ていると思うが)、第3波が来れば、再度、時短営業や衛生管理ルール要請も厳しくなるだろう。
そのための労力もコストも計り知れない。
こうした現状はいつまで続くのだろうか?

誰にもわからないことだが、たとえコロナ禍が収束したとしても、以前のようにはならないと思う。
なぜならば、多くの人のマインドが変わったから。
すでに、お客様側に変化が起きているのではないか?
簡単に言えば、これまでカッコいいと思えたものがダサく見えはじめているのではないか?
例えば、以前のようにオシャレなレストランや、いま流行っている食材や料理方法を提供するところで食事をすることに、それほどワクワクしなくなっているのではないか?
例えば、都心の一等地に建つオフィスビルで働き、住まいはベイエリアの高層マンションという姿が、それほどカッコよく見えないのではないか?
お化粧や洋服選びも以前とは違ってきているのではないか?
もはや、過去の習慣やトレンドに囚われない新たな価値観が芽生え始めているのではないか?

小腹の空きを我慢し、いくつもの???を頭の中に点灯させながら、足早に駅の改札口へと向かった。
結局この日、僕は地元の馴染みの店まで空腹を我慢した。

東京商工リサーチ情報部の後藤賢治課長は「地元の常連客が通うような、街に根付く飲食店には客が入っている一方で、それほどのこだわりもなく消費者がフラっと入店していたような大手チェーン店は客足が厳しくなっている。大手の外食企業が強い、という印象が変わってきている」と、外食業界を取り巻く環境の変化を指摘する。 (東洋経済 ONLINE 6/13配信より引用)

先日、自社製品を直営店やフランチャイズ店で展開している大手製造メーカーの担当者から伺った話である。
「ここ10年ほどで来店客数が10%減少し、その内訳をみると新規顧客が30%減ったが、逆に既存客からの売上が15%増えている」という。
つまり、新規顧客からの売上は減ったが、既存客や優良顧客からの利益が増えたという。
首都圏以外の地域では、この格差はさらに大きいという。
人口の東京一極集中と地方の減少が、ここでも如実に現れている。
こういした状況の中、もともとのファンを大切にし繰り返し買っていただくお客様の「顧客生涯価値(LTV=ライフタイムバリュー)」をあげていくことが施策として最も現実的である。
新規顧客の減少と既存客の増大は、概ねどの業態でも似たような状態にあり、今後ますますこの傾向は強まっていくだろう。
こうした事態を受け、気が付き始めた企業は既存客・ファンとの関係を明確にしていこうという方針に舵を切り始めている。

『企業ファンサイト2.0-10』へつづく。

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