川村隆一

川村 隆一 ファンサイト有限会社 代表取締役 1952年1月生まれ 日本大学芸術学部卒…

川村隆一

川村 隆一 ファンサイト有限会社 代表取締役 1952年1月生まれ 日本大学芸術学部卒業 日活株式会社、東京造形大学非常勤講師などを経てファンサイト有限会社を設立 【書籍】「企業ファンサイト入門」日刊工業新聞社刊  www.fun-site.biz

最近の記事

第1055号『鄙(むら)の形』

ここのところ、頻繁にコメ不足や価格高騰のニュースが報じられている。さらに、国力の衰えという文脈で、農業(食料保障の確保)の衰退が危惧されるとも語られていた。 2018年まで続いた政府の減反政策もあって、休耕地や耕作放置地が増えた。こうした要因もあいまって右肩下がりに農業従事者の数は減り続け、高齢者が大半を占め、結果として農地はさらに荒廃している。いまの状況が続けばやがて農村という鄙(むら)の形が消滅するだろう。これに取って代わるのは、ソーラーパネルを設置する、今だけ此処だけ

    • 第1054号『「オリジナル」とか「クリエイティブ」とは』

      夏になる前、ベンチャー企業経営者や、もの創りに取り組んでいる数名の若い衆と酒を酌み交わした。少し酔った勢もあってか議論になった。そして、僕自身「オリジナル」とか、「クリエイティブ」といった言葉の意味を、これまで随分とゆるく、そして曖昧に使ってきたのだなと感じた。「オリジナル」とか「クリエイティブ」ってなんだろう?今回、この機会に考えてみた。断るまでもないが、これはあくまで個人的な意見である。 よく言われることだが、白い紙に思いつくまま、思うがままに表現することが真新しく誕生

      • 第1053号『記憶の扉を開くスイッチ』

        脳内の奥に折り畳まれた記憶が、ひょんなきっかけで開くことがある。記憶の扉を開くスイッチ。それは、匂いや音や場所と連動していることが多い。例えば、洗濯の柔軟剤の蓋を開けた瞬間、その香りで10数年前に訪れたロスアンゼルス国際空港での入国審査のシーンを思い出したり、台所から聴こえてくる煮炊きの音で、ふと母の姿が思い浮かんだりする。そして、場所も眠っていた記憶を呼び醒ますことがある。 ”弘前の老舗百貨店・中三(なかさん)デパートが破産、閉店。”先週、ニュースで故郷の出来事を知った。

        • 第1052号『居酒屋考』

          気がつけば、2011年の春、浜町から横浜に事務所と住まいを移して干支を一周りした。それゆえ横浜での飲食は、もっぱら関内から野毛あたりの街場になることが多い。横浜駅から、一駅二駅過ぎたエリアが守備範囲である。理由は、横浜駅周辺に比べてチェーン店が少なく、居心地の良い店が多いから。 ふと、昔のことを振り返ってみた。2002年に会社を設立したとき、僕のマーケティングと酒の師匠、故宇田一夫に顧問役をお願いしてスタートした。神田佐久間町の友人の会社の一席を借り、その後、内神田に移る。

        第1055号『鄙(むら)の形』

          第1051号『捨てられないモノたちとの物語』

          人生も後半戦、できるだけ必要最小限のモノだけで暮らしたいと考えている。だから、思いつくたびに(実施規模の大小はあるが)、断捨離をしている。 衣類や靴はもちろんのこと、重たい椅子や棚やテーブルなどは処分し、一人でも移動することが可能な家具類に替えている。しかし、毎回どうしても捨てられないモノがある。それはCDと本である。中古売買のサイトを調べ、梱包して出そうとしたこともあったし、ブックオフの店舗に持ち込もうとしたこともある。しかし、どうしても手放すことができなかった。それはな

          第1051号『捨てられないモノたちとの物語』

          第1050号『わが街』

          集合住宅の、長期修繕委員会メンバーに選ばれて2年が経つ。もちろん、あれやこれやと面倒なこともあるが、自分たちの住まいや街を俯瞰して見ることができ、普段の生活では思いもつかない10年後20年後の在りかたが垣間見えたりもする。そして、このメンバーになったことを、楽しんでいる自分がいることにも気がついた。今号ではそんな、わが街のことを話してみたい。 わが街、金沢シーサイドタウン(横浜市金沢区)は横須賀市に隣接した市の南端に位置する。50年ほど前、市の一大プロジェクトとして、遠浅の

          第1050号『わが街』

          第1049号『海の答えは』

          この季節、日曜日の朝は忙しい。理由は海へ行くから。趣味のトライアスロンで最初の種目はスイム。そのほとんどが海か湖、川で実施される、OWS = オープンウォータースイミング。 自然環境の中で行われる長距離の水泳ゆえ、天候への対応、海洋生物(アカクラゲやカツオノエボシ等)との接触など、プールで泳ぐのとは違う想定外の事態にも備え、対応できる力を身につけておく必要がある。その一番の方法は、海で泳ぐことである。とはいえ、海を一人で泳ぐことはあまりにリスクがある。 有難いことに、僕も

          第1049号『海の答えは』

          第1048号『ユートピアorデストピア』

          去年の秋のことである。銀座で得先との打ち合わせがあった。無事、商談もまとまった。さて、夕暮れ時、刺し身か煮魚で一杯やりたくなった。打ち合わせ場所が銀座一丁目に近いところだったので、久々に三州屋銀座一丁目店に行くことにした。店の前まで行って驚いた。建物の建て替えのため閉店との張り紙が貼られていた。「えっ!」と、おもわず声がもれ出た。そして、悲しくて寂しい気分になった。ちなみに銀座にはもう1店、三州屋がある。三州屋銀座本店、こちらは営業している。 この三州屋銀座一丁目店、僕が初

          第1048号『ユートピアorデストピア』

          第1047号『2024上半期私的映画ランキングBEST5』

          連日の猛暑。そして今年も折り返し地点の7月はじめ。さて、今年前半1月から6月までの私的映画ランキングBEST5を選んでみた。対象作品は映画館だけにとどまらず、Netflix、Amazonプライムなどでの鑑賞も含む。ここまで鑑賞作品数51本。まずは5位から発表したい。 5位.『枯れ葉』
アキ・カウリスマキ監督作品 1月5日:109シネマズ川崎にて鑑賞 2017年、『希望のかなた』を最後に監督引退宣言をしたフィンランドを代表する名匠アキ・カウリスマキが、6年ぶりに帰ってきた。

          第1047号『2024上半期私的映画ランキングBEST5』

          第1046号『映画館の闇はあたたかい』

          映画をどう観るか?TVモニター・携帯・PCの画面・映画館のスクリーンと、様々なフォーマット(形式)が存在する。当然、どの形式で観ても、映画のストーリーや俳優たちのセリフや動きは変わらない。それでも、やっぱり映画は映画館で観たい。なぜだろう?と、自問してみた。 この半年、様々なフォーマット(形式)で観た映画は51作品。そのなかで映画館での鑑賞は17本。劇場鑑賞至上主義の猛者には、鼻で笑われるような数であるが、それでも月3本ペースで鑑賞している。自分としては頑張っているほうだ。

          第1046号『映画館の闇はあたたかい』

          第1000号『「宣言」するということ。』

          本日お届けする「ファンサイト通信」で第1000号。記録を辿れば第1号は2002年3月29日に配信している。ここに至るまで、21年と2ヶ月余り。書籍にすると2,452ページ、300ページ強で8冊分になる。よく飽きもせず続けてこれたものだと、我ながら思う。どんな想いで書き続けてきたのか。その経緯が2006年4月に上梓した『企業ファンサイト入門』(日刊工業新聞社刊)の「あとがき」に記されていたので一部引用する。 “ 会社発足一ヶ月前から始めたことがあります。それはファンサイト通信

          第1000号『「宣言」するということ。』

          第999号『”あなた”に僕の物語を語りたい』

          僕たちは、根拠の判然としない思い込みや、勘違いで人物や事物の印象を決めつけていることがしばしばある。例えば、二宮尊徳。 昔はどこの小学校にもあった二宮金次郎像。薪を背負って働きながら本を読んでいる姿。このベースとなったのは明治の文豪、幸田露伴が著した『二宮尊徳翁』(明治24年刊行)。貧しい少年時代から農村の再興、諸藩の財政改革など、二宮金治郎が地主として農園経営を行いながら小田原城下に出て成功したという逸話をもとにしたものである。そして、この本の挿絵から薪を背負った二宮金次郎

          第999号『”あなた”に僕の物語を語りたい』

          企業ファンサイト2.0-14

          前回につづき、岩塚製菓株式会社高橋部長との対談である。 ● “一方的”から“相互的”へと変化した顧客との交流 川村:自社メディアを立ち上げる中で、ファンというキーワードには当初から注目されていたのですか? 高橋:市場が縮小していくことは明白でしたので、岩塚製菓のファンの育成と囲い込みは着手するべき取り組みとして重要視していました。 川村:ファンが企業の新たな成長エンジンにつながると感じていたわけですね。それが今運営している「おこせん※1」と「大人のぽりぽりクラブ※2」の

          企業ファンサイト2.0-14

          企業ファンサイト2.0-13

          閾値(いきち)という言葉を知ったのは、原宿クエストホールでの動物行動学者ライアル・ワトソンの講演会だっか、『生命潮流ー来るべきものの予感』(ライアル・ワトソン著小幡和枝、他訳)の翻訳者、小幡和枝さんから伺ったのか、判然としない曖昧な記憶である。 なにしろ、いまから30年以上も前のことである。 ただ、このストーリーはしっかりと記憶に残っている。 ”宮崎県串間市の幸島に棲息する雌猿の一頭が、ある日突然、海水で芋を洗って食べる事を覚えた。芋についていた泥や砂を洗い流し、塩味で芋がさ

          企業ファンサイト2.0-13

          企業ファンサイト2.0-12

          前回、企業ファンサイト2.0-11につづき、日本マーケティング塾甲斐代表との対談である。 ●「なんとなくいいね」を生み出す秘訣 川村:ファンサイトの取り組みで興味を持っていただけたのはどんなところでしたか? 甲斐:一貫した“お客様視点”です。企業にとってサイトはお客様との接点として、なくてはならない窓口の一つですが、まだまだ企業目線で作られたサイトが多くて、その役割を果たせていないものが大半だと感じていました。 川村:たしかに、相も変わらず一方的に企業が伝えたいメッセー

          企業ファンサイト2.0-12

          企業ファンサイト2.0-11

          『企業ファンサイト2.0』を書き進めるにあたって、これまで応援していただいた方々に直接お会いし、お話を伺ってみたいと思った。 今回は、元株式会社日本マーケティング塾、甲斐貫四郎代表との対談である。 甲斐氏は、日本マーケティング塾代表の前、富士ゼロックス埼玉株式会社、富士ゼロックスインターフィールド株式会社で代表取締役社長を歴任されていた。 対談に入る前に、「株式会社日本マーケティング塾」についての概略である。 1984年の創業から35年間にわたり、マーケティングの本質を体系

          企業ファンサイト2.0-11