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企業ファンサイト2.0-11

『企業ファンサイト2.0』を書き進めるにあたって、これまで応援していただいた方々に直接お会いし、お話を伺ってみたいと思った。
今回は、元株式会社日本マーケティング塾、甲斐貫四郎代表との対談である。

甲斐氏は、日本マーケティング塾代表の前、富士ゼロックス埼玉株式会社、富士ゼロックスインターフィールド株式会社で代表取締役社長を歴任されていた。
対談に入る前に、「株式会社日本マーケティング塾」についての概略である。
1984年の創業から35年間にわたり、マーケティングの本質を体系的に学べるセミナーを提供してきた日本マーケティング塾。
これまで850名を超える卒塾生を輩出してきた実績を誇り、経営、マーケティングの中枢を担うマネジメント職で活躍する多くの企業のリーダーたちを育ててきた “名門”だ。
僕もご縁をいただき、2014年から6年間、講師として日本マーケティング塾のセミナーに参加させていただいた。
毎回、名だたる企業から送り込まれてくる塾生(そのほとんどが、熾烈な社内選抜を勝ち抜いて参加してくるのだと聞いた)のレベルの高さに驚くとともに、授業で感じるヒリヒリするような彼らとの真剣勝負の時間が最高に楽しかった。
諸般の事情で2019年に日本マーケティング塾の活動は終了したが、9年間にわたり、代表取締役を務めたたのが甲斐貫四郎代表である。

下記はカリキュラム全5回のラインナップである。
毎回全て一泊二日、朝から晩までビッシリと組まれている。

第1回 テーマ:マーケティングの本質と新たな視点
ー基本的フレームワークに基づきマーケティングをとらえるー

第2回 テーマ:マーケティング戦略の策定
ー成功/失敗事例のポイントを理解し自社戦略への応用法を「学び合う」ー

第3回 テーマ:非同質化のマーケティング戦略
ー市場変化の実態を把握し自社課題の根源と理解を「考え抜く」ー

第4回 テーマ:これからのマーケティング
ー顧客関係性のプロモーション戦略「新たな論点と思考」ー

第5回 テーマ:卒論作成と発表
ー自社の成長戦略への提言を「創る」ー

セミナーの講師陣である。
富士ゼロックス社において営業管理部長、富士ゼロックス埼玉㈱代表取締役、富士ゼロックスインターフィールド㈱代表取締役を経て、㈱日本マーケティング塾代表となった甲斐貫四郎氏を中心に数名の常任講師の他、㈱モスフードサービス特別顧問 田村茂氏、資生堂ジャパン㈱ヘルスケ事業部マーケティング室マネージャー 宮本文幸氏、コクヨ㈱グループ執行役員ステーショナリー事業本部長 八十卓司氏、富士フイルム㈱R&D総括本部 羽田典久氏、法政大学スポーツ健康科学部教授 清雲栄純氏、ファンサイト㈲代表取締役 川村隆一と、末席に、僕も加えていただいた。

では、ここから甲斐代表との対談をはじめたい。

●ビジネスは商品がすべてじゃない

川村:甲斐社長が日本マーケティング塾の代表取締役社長に就任されたのは何年でしょうか?
甲斐:2012年です。実は私もこの塾の受講生の一人で、それがきっかけで運営を任されることになったんです。

川村:受講されたのはいつですか?
甲斐:塾が創業した1984年から4年後の1988年でした。当時の講師はマーケティングの分野において国内でも最先端のノウハウを有していた水口健次先生を中心に、営業、プロモーション、流通関係、戦略デザインと、各分野のプロフェッショナルが集まっていて、今思い返しても豪華な顔ぶれでしたよ。

川村:日本マーケティング塾は「マーケティングがわかる次世代の経営者を育てよう」という、それまでになかった大きな目的を持ってスタートしたと伺っています。甲斐社長はその意思を受け継いだわけですから、責任重大でしたね。
甲斐:最初はほとんどボランティアのような形で運営のお手伝いをしていたのですが、代表取締役となると、正直大変でした。その当時、日本の大手印刷機械メーカーのグループ会社の一つであるネット通販会社の再建にも携わっていたんです。「お客様が使いやすいサイトとは何か」について、試行錯誤している時期でもありました。

川村:ユーザビリティ、つまり使い勝手の良さ。それは、ECサイトを運営する上で常につきまとう問題ですね。
甲斐:当時、競合他社の通販サイトと比較すると、商品情報がわかりにくい、注文しにくいと、利便性に劣っているだけでなく、お客様を意識した作りになっていないことが何より気になっていたんです。

川村:なるほど。自社の通販サイトを運営する上での課題の一つだったというわけですね。
甲斐:そもそも商品を販売する中で最も大切なのは、お客様に「なんとなくいいね」と思ってもらうことなんです。理屈抜きに好きになってもらう。実はこれが競合との差別化への一番の近道になる。

川村:たしかに、どんなに新しい商品を開発しても、他社がそれを真似て、さらに良質な商品を作ってしまえばそれで終わりですから。
甲斐:要は、商品がすべてじゃない。飲食店でも通いたくなる店というのは、味の良し悪しだけじゃないですよね。店員の応対や店内の雰囲気、レイアウトを見て、居心地の良さが決め手になったりもすると思うんです。

川村:それはサイトも同じですね。
甲斐:でも、その時は何となく理解しているだけで、はっきりとした答えは導き出せていませんでした。そんなもやもやとした疑問を抱えていたタイミングで出会ったのが川村さんだったんですよ。

川村:初めてお会いしたのは、共通の知人を通してでしたよね?
甲斐:そうそう、その時に川村さんからファンサイトという言葉を聞いて、「これだ!」と思いましたよ。まさに私が悩んでいたことの答えである「お客様視点のサイトづくり」を実践しているんだなと。それで、日本マーケティング塾の講師として参加してもらいたいと打診しました。

川村:それがご縁で2014年から講座の一つを担当したんですよね。本当に貴重な経験をさせてもらいました。
甲斐:実は、ファンサイトに興味を持つ前に、まず川村さんという人物に興味を持ったんです。服装が、経営者とは思えないくらいラフだった(笑)。「すいません、いつもこんな格好なんで」って。それが非常に面白く感じて、「僕はこの人を好きになるだろうな」と直感的に思ったんですよ。

川村:なんだか恐縮です(笑)。でも、そう言っていただけることはありがたいです。

対談後半は、次号『企業ファンサイト2.0-12』で。

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