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企業ファンサイト2.0-10

前回、人口減少やコロナ禍で店舗の閉鎖や営業時間短縮など、様々なカタチで顕在化しはじめている消費者の変容と今後の方向性について言及した。
現状を見据えるなら、もともとのファンを大切にし、繰り返し来店し買っていただくお客様の「顧客生涯価値(LTV=ライフタイムバリュー)」をあげていくことが要諦である、と。

これまで、ブランド、そして人口減少という状況変化と、それぞれにファンを形成するための要因について考察してきた。
さらに、今回はファンサイトを考える上でのもう1つの軸、政治形態を背景とした持続可能な社会モデルの仕組みについて考えてみたい。

政治とは経世済民を実現するためのものである。
平たく言えば、民がお腹をすかせないで生きられるような仕組みを実現することである。
別な言い方をするなら、みんながより幸せに生きられるように、税の配分を考えることである。

広井良典著「人口減少社会のデザイン」は、豊富なデータに裏打ちされ、そして大胆な分析による未来予想(持続可能な日本の未来像への提言)に、思わず膝を叩きながらページをめくることができた。
この書籍の第4章、社会保障と資本主義の進化のなかで、社会保障の国際比較、その3つのモデルについて言及している。
少し長くなるが、約めて引用する。

・北欧で行われているような「普遍主義モデル」

財源は税が中心であり、基本的に社会保障が手厚い。
高福祉・高負担型の「公助」を重視し、介護や保育など福祉サービスに重点が置かれている。
理念としては「公助」(政府による再分配)を重視。

・ドイツ、フランスなどの大陸ヨーロッパに典型的にみられる「社会保険モデル」

社会保険料を財源として支え合うシステムであり、理念として「共助」ないし「相互扶助」を重視。

・アメリカで典型的にみられる「市場型モデル」

小さな政府として、低福祉かつ低負担をベースとし、社会保障は手薄で、医療なども民間保険が中心。
理念としては「自助」(個人や市場による対応)を重視。
この3つのモデルを並べ、それぞれの国の現状(罹患率や死者数)をトレースして見ると相対的に福祉に関して低調なところほどダメージも大きいのではないか。

さて、我が日本はどうか。

戦後、アメリカの圧倒的な影響下にあり、加えて安倍政権(アベノミクス=GDP600兆円達成という拡大成長路線)はアメリカ(市場型モデル)志向が強い。
しかしながら歴史的な流れとして、大正から昭和初期にかけて、先人たちがドイツの医療保険や年金制度を主なる範としていたため、概してヨーロッパが「高福祉」アメリカが「低福祉」とするならば、現状の日本は「中福祉」として推移してきた。
ただし、日本におけるこの方向性は、社会的に合意して決めたわけではなく、”経済成長により結果として社会保障の財源がまかなわれる”という、いわばなし崩し的に、たまたま「中福祉・低負担」というカタチで現在、施行ている。
そして、GDPがほとんど増えなくなった90年台以降も、大量の借金を将来世代に先送りする(もっとも無責任な)結果として推移している。
さらに、ここ数年、法人税や所得税の最高税率を大幅に引き下げる施策と消費税増税が中間層の崩壊につながる危機を生んでいる。

平井氏の具体的な論点(提言)を、5つほどにまとめてみた。

1. 将来世代への借金を解消するため、消費税を含む税をヨーロッパ波に引き上げる。
2. 世代間の不公正を是正するために、若者支援に再配分する。
3. コミュニティ空間という視点を重視した(ドイツやヨーロッパに典型的な)”歩いて楽しめるまちづくり”を実現する。
4. 都市と農村の持続可能な相互依存を実現すべく、都市・農村間の様々な再分配の仕組みを導入する。
5. 企業行動および経営理念の軸足を「拡大・成長」から「持続可能性」にシフトする。

新型コロナ渦で、各国のリーダーの振る舞いが、まるでリトマス試験紙のように国民から試されている。
例えば、ブラジルのボルソナーロ大統領、フィリピンのドゥテルテ大統領、アメリカのトランプなど大統領、熱狂を煽り強行に抑え込む指導者。
方や、ニュージーランドのアーダーン首相、ドイツのメルケル首相、台湾の蔡 英文大統領など、データと科学的な事実をもとに透明性と公平性をもって信頼を獲得している指導者と。

少しがっかりする調査結果だが、米独のPR戦略会社「ケクストCNC」が新型コロナウイルスに関する日米欧6カ国(イギリス:ジョンソン首相マイナス12・アメリカ:トランプ大統領マイナス21・ドイツ:メルケル首相プラス42・スェーデン:ローベン首相プラスマイナス0・フランス:マクロン大統領マイナス11・日本:安倍首相マイナス34)の国際世論調査で、自国のリーダーがコロナ危機へ適切に対応できているかを聞いたところ、日本は新型コロナ感染症の死者数が米欧に比べ少ないにもかかわらず、安倍晋三首相の国民からの評価が6カ国で最も低かった。さらに経済的な不安を感じている人の割合は、日本が最も高かった。(7月10~15日に、日本、米国、英国、ドイツ、スウェーデン、フランスで1000人ずつ、計6000人を対象に行った)日本の調査結果について、ケクストCNCのヨッヘン・レゲヴィー日本最高責任者は「政府のビジネス支援策に対する非常に強い不満が、安倍首相への否定的な評価につながった一因ではないか」と分析している。

これでは当たり前のように疑いもしなかった言論の自由や民主主義といった基本的人権は、人類が長い時間をかけて獲得したしたものである。
それが強行なリーダーの振る舞いに熱狂する人々の姿をみるにつけ、その当たり前が揺らいでいるようにも思える。
まさしく、いまよりさらに成長拡大を推し進め、一部の富める者とその他多くの人々の生活が破壊され、転落者が蔓延する社会になるのか、それとも格差の拡大を止め、持続可能な社会としての歩みを始めることができるのか。
コロナ渦の危機が、これまでの価値感やビジネスモデルの見直しを迫ってくることは間違いない。

次回は、これまでファンサイトの取り組みを受け入れ、共に実践したきた方々(企業ご担当者や研修セミナー主催者)との対話の掲載を予定しています。
引き続き、ご高覧のほどよろしくお願いします。

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