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忘却

唖然。こんなことが起こるなんて。

車での帰り道お腹が減っていた。マクドナルドの看板を見つけ立ち寄った。店内に客はまばらで、レジには私一人だけだ。注文を済ませ、料金を支払う。お釣りを受け取ると私は店を後にした。

車に乗り込み、7キロ先の自宅へ15分かけて帰った。車を停め、車内を見渡す。仕事用の大きめのカバンを手に取り、スマートフォンを持ち、車から降りる。何かが足りない。そうだマクドナルドの袋を忘れている。車内をもう一度見渡す。無い。後ろの座席にも、暗い足元にも、シートの下にも無い。ポテトのニオイもない。おかしい、まさか、こんなことが起こるなんて。

私は商品を受け取っていないのか。。。。お釣りだけ受け取って。。。

あわてて車に乗り込み、いま来た道を戻る。7キロ先のマクドナルドへ15分かけて戻ると、何事もなかったかのように店内へ。
レジで待ち構えていた店員が「おまたせいたしました!」と言った。恥ずかしい。


こんなことが起こるときは、だいたい考えごとをしている。
子供のころからそうだった、先生の話が聞けなかった、全校朝礼は白昼夢の時間だ。人と会話していても、電話中でも、長くなると他のことを考えてしまう。「考えごと……」いや「ほうけている」のか。
「ちゃんと話を聞きなさい」と先生や友達に怒られたりはしなかった。他のことを考えているとバレてはいないのだろう。

たしか、そろばん教室で同い年の女の子と話しているときだった「あなたは何を考えているのかわからないね」と言われた。そりゃそうだ、会話の途中から話を聞いていないのだから。
ただ「何を考えているのかわからない男」という評価が、なぜだかとても気に入った。特別な能力を持っているかのように感じた。

いまおもえばこれは私の「厨二病」というやつだったかもしれない。

それでも今日のは唖然とした。考えごとをしてたとはいえ、まさか商品を受け取らずに家まで帰ってしまうとは。
店員さんも唖然としただろう。「このお客さん、何を考えているのかわからない男だな」と思ってくれただろうか。


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