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僕はコーヒーが飲めない

誰かが言った。盛岡はコーヒータウンだと。
でも、この街に住む私はコーヒーが飲めない。
こんなマイノリティモリオカンがコーヒー専門店に行き、ひたすらコーヒー以外を頼み続けた、という話。

以前も書いた通り、人生の半分以上をこの東北の街で暮らしてしまっている身であるが、長年この街にあるのに行ったことがないところはたくさんある。
そのうちの一つである、紺屋町のコーヒー専門店・クラムボンに、先日やっと初めて行ってきた。

今年始め、マスターの高橋さんが亡くなられた時、多くの街中の方が彼のことを追悼していたが、なぜそうなっているのか、私には全く訳がわからなかった。
それは当然なのである。クラムボンに行ったことがなかったからだ。
そしてこの店に今まで行かなかった理由は以下の2つだ。

1・日曜定休のため、日曜にしか紺屋町に行かない身としては縁遠い店だった
2・コーヒーが飲めないから、コーヒー専門店には立ち寄れなかった

モリオカ生活25年にして初めて行ったクラムボンでは、季節限定のよもぎプリンをセットでいただいた。飲み物はもちろんコーヒーじゃなくてレモンティー。つるっとした舌触りが美味。お店の雰囲気も良く、アートに強いと聞いていたのも納得であった。確かにここに長年寄らなくて損をしていたかもしれない、と改めて思った。また今度行きたいけど、日曜休みなのがちょっとね…。

また、春先にこれまた今まで行けなかったコーヒー専門店に初めて行った。それは旧葺手町の羅針盤(旧・六分儀)。ここはオーナー交替でリニューアルしてから、コーヒーの他にチョコレートも扱い始めたと聞いたので、日替わりのチョコレートケーキを食べたくて行ってみた。
当日のケーキはガトーショコラ。早速オーダーを…と思ったら「必ず飲み物をご注文ください」とあり、メニューにはコーヒーとホットチョコレート、そしてワインだけで、紅茶はない。スタッフさんにオーダーして「あのー、コーヒー飲めないんです…」というと、メニューにはないホットミルクができるとのことで、それをオーダー。
ガトーショコラはかなり濃厚。ここまで濃厚なら紅茶よりミルクを合わせるのが正解。県内の農場の牛乳を使っているのもポイントが高い。「ミルクはいつでも出せるので是非またおいでください」と言われたので、チョコレート菓子が美味しくなる秋以降にまた行ってみたい。

先の二店は市内でも老舗だけど、ここしばらく開店が続く新しいコーヒーショップにも行っている。もちろん、コーヒーは注文していない。
駅に近い材木町にあるKITA COFFEE STANDでは手作りのケーキをテイクアウトしているし、昨年秋に開店したBOUND COFFEEに行くと、りんごジュースを頼んでゆっくり本を読んだり、マクロビスイーツをテイクアウトしたりしている。
実は上記二店はコーヒー以外のドリンクメニューの数が少なく、行くと困ってしまうのは事実である。そういえば桜山の六月の鹿に行った時も、コーヒー以外のドリンクがジンジャーエールしかなくて、もうノーチョイスで困ったことがあったっけ。いや、ジンジャーエールも好きですけどね。

そして、最近地元ではこんな歌が話題になっている。

…そうなのか、オレの住む街にはいつのまにかこういう名前がついてしまったのか。
ということは、コーヒー飲めないオレにはこの街の住人の資格はないのか。
ええ、もちろん「けもの」にもヴォーカルの青羊嬢にも恨みはありませんよ、重ねて念を押しますけど。

しかし、「盛岡はコーヒータウン」と言われることとは別に、疑問がある。
数ある飲料の中で、なぜコーヒーだけがそんなに推されるのか、ということだ。
例えば、映画とコーヒー、とか、本とコーヒー、とかの類の推され方だ。映画も本も私の好物だが、映画とお茶、とか本とお茶、とか言われる頻度はコーヒーのそれよりは少ない感がある。

だいたい、コーヒーが飲めないおかげで、若い頃から苦労はしてきた。一番嫌だったのが、職場の同僚からコーヒーを勧められて断り、飲めないという話をしたら「コーヒーが飲めないなんて子供だ!コーヒー飲めなきゃ大人じゃない」とさんざんバカにされたことだ。コーヒーハラスメント、とでも呼べばいいのだろうか。だから、世の中のコーヒー推しにはついつい反発してしまうし、市内にコーヒー専門店が多いこと、それもコーヒー以外が選べないことにも複雑な気分を抱いていた。
でも、飲めないからとコーヒーの悪口ばかり言ってはいけない。そのdisりは自分にも返ってくるのだし、聞かせる(読ませる)側にもいい気分ではない。多様性の時代なのだから、好きではないものにも寛容でなければならない。だから、もうコーヒーの悪口は言わないことにしたいし、コーヒーを飲めないことをバカにしてほしくない。
ということを思いながら、私はジャスミン茶を飲んでこのnoteを書いているのであった。

でも、こういうことを言っている先に、地元ではコーヒーフェスティバルなるものが次々と開催されてさあ…ってそれを言っちゃあおしめえよ(笑)

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