死者の魂を、己が心内に住まわせた年月の事『劇場版 呪術廻戦0』を見て 2/26

 映画『呪術廻戦 0 』を見に行った。
 初日の朝、第一回目である。とても面白かった。
 原作者の芥見下々さんが、仙台三高出身という噂の真偽は知らないが、まあ、真実として、郷土の新しい宝であると寿ごう!

 死者を、背後霊、または一種の守護霊のように、己が内に宿している人は、意外に多いのではないかと思う。
 私にも、そういう経験が有るから、そう思うのだ。

 最初から、順を追って話そう。
 小学校6年の頃、母が1ヶ月ほど入院した。
 腸が癒着したとの事で、開腹手術をしたのである。
 秋の事だと記憶している。
 冬の気配がしてきた頃、父が、こけしを買ってきた。
 母が困った顔をしているのは、父の無駄遣いに、溜息を吐きたい気持ちなのだと思っていた。

 20代中頃、よく夢に出てくる女の子がいた。
 長めのおかっぱ頭、シンプルな白いブラウス、赤い釣りスカート。
 いつも、しゃがんだ後ろ姿で出てくる。なので、顔は見たことがない。

 この夢を見始めてから2年くらい経った時、我が家にささやかな怪異が起こった。
 父の車の後部座席の窓に、人の足跡が付いていたのだ。
 それは、生まれたばかりの赤ん坊の足跡らしく、偏平足で、足裏のシワも少ないが、きっちり写っていたので、握りこぶしの小指側で作る「小人の足跡」とは違ったいた。
(この「握りこぶしで作る足跡」は、しっかりと土ふっまずが出来る)
 突然の怪異に盛り上がったのは、弟と私だけであった。
 ここで、私には思い当たる事が有った。夢の中に出てくる女の子の事である。
 母に尋ねると、私が小6の時の入院は、子供が出来たと思って病院に行ったら、腸と子宮が癒着していた、子宮自体がダメになっていたため、子供は諦めて、子宮を摘出した手術とのことであった。
「まだ、形も何もできない状態だったのよ」
 母は、そう言った。

 母の話を聞いて、流れた子は女の子で、兄と弟に挟まれて、姉妹が欲しいと思っていた私が、ずっと望んでいた妹だったのではないか? と思った。
 夢の中の女の子は、本当は、生まれるはずだった妹で、父の車に足跡を付けたのも、この女の子ではないか? と思ったのだ。

 夢に出てきた女の子は、私の前に立っていた。
 けれど、極端にうつむいていたので、やはり顔は見ることが出来なかった。
(生まれたのが羨ましい)
 夢の中で、女の子は、声に出すのではなく、テレパシーで言った。
 私は、
「私と入れ替わったことを、誰にも判られないでいられるなら、交代してもいいよ。私があなたの中で寝ているから」
 そう言った。
 彼女は、
「できない」
 と泣いた。
 それは、自分の無謀な望みを後悔しての涙ではなく、自分を思っての私の提案に感謝したのでもなく、私の「交換の条件」を遂行できないので、立場を交換できない事への、一種の悔し涙であった。

 それから、秘かに妹の魂を体内(心内)に住まわせていた。
 ウチの旦那が亡くなった後、霊感の有る知人から電話が来た時、その人の所へ行ってしまい。
「今、5歳くらいの、あんたにそっくりな女の子が来た!」
 と言われた。
 その人の電話を、ちょっと迷惑と思っていたので、妹が見に行ったことを、私は面白く聞いていた。

 昔からの友達のお兄さん(子無し、バツイチ)と知り合い、再婚を前提とした交際が始まってすぐに、彼の転勤が決まった。
 地元の支店を閉鎖するので、首都圏に出なくてはならなくなったのだ。
 再婚には、まだ踏ん切りがつかなかったので、埼玉と仙台の半々生活を送ることにした。

 埼玉は、東京が近いので、色んな所へ行けたのは、とても良かった。
 その中でも、面白い経験だったのが『宇宙マッサージ』だった。
 初めて受けた時、施術者は、私を見て、驚いた顔をして、
「大丈夫です。取れます。大丈夫です」
 そう言い、うつぶせになった背中の、心臓の真裏辺りを、グイグイと強く押した。
 そして、帰る時も、
「きっと取れます。大丈夫です」
 そう言った。

 施術会場は、神奈川県の白楽駅の駅前商店街の近くだった。
 出来たばかりの副都心線での帰り道、少ない乗車人数でゆっくり座れた私は、自分の心臓の真裏に、大きな穴が開き、そこから、星が満天の夜空のような物が、天に向かて煙のように流れ続けるのを感じていた。
 それからは、心内の妹はいなくなった。
 この妹の事は、
「私が心の中に住まわせているのは、私のエゴで、彼女の成仏を、私が阻んでいる事になっているので、はないだろうか?」
 と、思って悩んでいたのだが、どうしたら良いのか分からなかったのである。

 こうして、私の中にいた妹は、空へ帰っていくことが出来た。
 この後、再婚予定の彼が、結婚前から宗教にはまっており、そのことで、監視兼子守りが欲しくて、私が好きになったことを幸いに、面倒を押しつけられたのだと判り、ずっと、
「別れよう」
 と言い続けていたところに、脳梗塞となり、それを理由に「半事実婚」を解消して、埼玉から引き揚げ、100% 仙台暮らしになった。
 それから数か月後、たまたま、霊感占いの人に占ってもらう機会があった。
 妹の事を相談すると、
「妹さんは、亡くなってすぐに成仏している。あなたの中に入ったのは、あなたが妹を思う気持ちを羨んで、妹のふりをした浮遊霊」
 と言われた。

 今も、私の中に入ろうとしている浮遊霊は大勢いるらしい。
 半覚醒の夢や、明晰夢の中で、ドアをノックしたり、ドアフォンを鳴らしたりして、私に「どうぞ」と言わせようとする者が多数いる。
 今は、入ってきそうな者にも、入ってきた者にも『私の心内に住まうことが出来る条件』を提示している。
 どうも、条件が厳しいらしく、みんな、諦めて出ていく。
 こちらも、自分ではない魂を内に入れるのだから、
「これを叶えてくれた後で『私が叶えました』と証明書を持ってきたら、住んでいいよ」
 本気で条件提示をしているのだが、誰も挑戦さえもしないで諦める。
 おかげで、心霊的には平和な毎日である。

 自分の内に別の魂を留め置くというのは、けっこう大変な事なのであるよ。
 と、言っておく。 

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