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「同じだけ返せるかわからないけれど」-沼の話

【8人目】

Dさん(24)
沼期間:2年 沼と出会ったきっかけ:マッチングアプリ

人生で初めて自分からアタックした人


大学院一年目の夏頃に、友達とその場のノリでアプリを始めてみたんです。

沼は、その時にアプリで知り合った人です。趣味が合って、自分と同じくカフェでバイトしていて、自分と同じ大学院生。共通点が多かったんです。年はひとつ上でした。それに顔がタイプで。

人生で初めて、自分からアタックしました。自分のコミュニティに影響が無いことも踏み切れた要因だったと思います。

「好きだから会いたいです」

2回デートをして、3回目の約束をしていたところで急に会えないという連絡が来ました。LINEの頻度も極端に減って、それまでたまにしていた電話もできなくなくなりました。

沼は忙しい人でした。会わないための口実とかじゃなく、本当に。でも、俺に「どうしても会いたい」わけでもないのも本当だったと思います。それでも、ダメ元でLINEをしました。

「好きだから会いたいです」

しばらくして、沼から長文のお返事をいただきました。要約すると、「友達としか見れない」ということでした。

恋愛の「れ」の字も知らなかった

恋愛の「れ」の字も知らない俺のデートはお粗末なものだったと思います。あれでは、そう思われるのも仕方なかったでしょう。自分でもそう思います。そうして、友達として関係を続けていこうと自分を納得させました。

最後に連絡を取り合ってから、1ヶ月くらい時間が空きました。お正月、久しぶりに「あけましておめでとう」とLINEしてみたらスタンプが返ってきたので、たまにやり取りするようになりました。

お酒の力を借りようと思った

2月になっても、まだ沼のことを忘れられていませんでした。沼は春から「遠く」へ行くらしいです。最後の最後だと思って誘ってみました。

沼が返事をくれて、また会えることになりました。行き先は居酒屋にしました。お酒は強くないけれど、お酒の力を借りようと思ったんです。居酒屋を出たあと、公園を散歩しながら今でも好きだと気持ちを直接伝えました。返事はありませんでした。

「無言」を一つの返答だと思ってしまう

沼から返事が来る前に、「また困らせちゃったよ」と自分から笑って話を濁しました。無言って、一つの返答だと思ってしまうんです。そうやっていつも自分から話を濁してしまう。沼にもそこをよく指摘されていました。……直したいですね。

それから、二人で公園の階段をグリコして駅へ向かいました。振られてるのにね、楽しかったんですよ、グリコ。病気ですよね。

別れ際、「元気でね」と言ったら、沼は「あ、そっか!またねー!」と手を振ってくれました。そうして沼は「遠く」へ旅立っていきました。

それから半年くらいの間、沼とはインスタはお互いに反応し合ったり、誕生日にはお祝いの連絡をしあっていました。

酷いことを言わせてしまった

実は、沼と離れてから、3ヶ月間だけ初めての彼女ができたんです。いつまでも沼のことを引きずっている自分を見かねた友達から、「そろそろ新しい出会い探した方がいいんじゃない?」と言われて、またアプリを使ってみました。

「付き合ってみたらなんか変わるよ!そっから好きになるかもしれんし」とも言われました。沼のことがまだまだ忘れられていなかったので、相手は正直誰でも良かったです。

その中で、気持ちを伝えてくれた子がいました。友達の助言通り、付き合ってみることにしました。でも、関係は長くは続きませんでした。

彼女には、「片想いしてるみたい」と言わせてしまいました。本当に自分が忙しい期間ではあったけれど、あまりに酷いことを言わせてしまったと思っています。このままではいけないと、自分から早めに別れを切り出しました。

「また会おう!」

やはり、どこかで沼のことを忘れられていない自分がいました。誕生日に、沼からLINEが来ました。どうやら年末年始は帰省してくるらしく、お出かけに誘ってみました。

大晦日に二人で会いました。沼の仲が良かったバイト先の子にプレゼントをしたいというから、一緒にイオンでプレゼントを選んで、普通にご飯を食べて。あの時間が、今までで1番楽しかったかもしれないです。

来年、自分も就職で沼の近くまで引っ越すことが決まっていました。今度は、別れ際に「また会おう!」と言ってくれました。嬉しかったです。会わない間に彼女が出来て別れたことは、話しませんでした。

夜のスカイツリーはとても綺麗だった

春になって、自分も沼のいる「遠く」まで来ました。前に公園を一緒に歩いたように、大都会を2人で散歩しました。夜のスカイツリーは、とても綺麗でした。

告白するつもりなんてなかったんです。でも、いつの間にかそういう雰囲気になりました。沼と離れた間、彼女ができたことを話しました。うまくいかなかったことも。

「まだ好きなんよ」と言ったら、「ほんとに?それは申し訳ない。……返事した方がいいですか?」と言われました。

「私のことも話していいですか?」

終わった、と思いました。でもなんとなく予想通りでもあって、いつものように話を濁して「帰ろう!」と駅へ向おうとしたんです。

そうしたら、沼から「こっち行ってみよ」と珍しく提案がありました。歩きながら、「私のことも話していいですか?」と言われて、夜の街を散歩しながら沼の話を聞きました。

沼も、引越してから彼氏ができたらしいです。でも長くは続かなかったそうで。話を聞くうちに、沼が意外と自己肯定感が低いこともわかりました。自分を過去2回振ったことも気にしているようでした。

付き合える条件なんかどうでも良かった

「結局おれは違うんでしょ?」と聞いてみました。付き合える条件なんか、どうでもよかった。ただ、そこだけが知りたかったです。沼は、答えに迷ってる様子でした。

夜景が綺麗でした。たくさん散歩して、たくさん話しました。

「もしだめだったとしても…」と自分がいいかけたら、沼に「一回聞こ!」と遮られました。沼がゆっくりだけど話しはじめました。

一体、何が起きているんだろう


「まだ間に合いますか?」何が起こったのか、分かりませんでした。

「同じだけ返せるか分からないけど……、付き合ってみませんか?」

予想外の展開で、状況が飲み込めませんでした。初めて沼と出会った日から、2年近くが経過していました。やっと、夢が叶いました。

でも、夢のような時間は長くは続きませんでした。付き合い始めてからしばらくして、突然沼からLINEが来ました。

そもそも前提が無理ゲーすぎた

「今日電話する時間ある? 大事な話があります」

察しはついていました。そもそも前提が無理ゲーすぎたんです。別に好きでないと言われていましたし、かっこいいとも言われたことがありませんでした。付き合ったときに、「俺と付き合えて嬉しい?」と聞いたら、「Dくんがそんなに喜んでくれて嬉しい」と言われました。

いつか「好き」だと言わせられたら

当時は、それでもよかったんです。長い時間をかけて気持ちが伝わって、沼が「付き合ってみませんか?」と言ってくれたように、また「好き」だといつか言わせられたら。

でも、八方塞がりでした。忙しいことを理由に会えない。電話をするタイミングを合わせるのも大変。LINEをすることすら沼の負担になる。自分の入るスペースがなかったんです。

記念日には、慣れない手紙と花束を


たまに電話くらいしないとLINEのネタもない。自分の話ばかりになるのもよくない気がするし、こちらからLINEしないと向こうからは来ない。LINEしすぎても良くないと思うけど、しなければ自然消滅してしまいそうで。どうしたらいいか分かりませんでした。会えないのも、LINEする時間すらもらえないことも、めちゃくちゃ我慢しました。

それでも、自分なりに色々考えて行動しました。会えるとなったらプランを全部考えて、店の予約をしました。1ヶ月記念には、慣れないながらお花と手紙を渡してみました。

沼は、花が好きな人だったんです。自分でドライフラワーを作ったり、部屋にはちゃんと花瓶があって。空いている花瓶が一つあったので、そこに飾ってもらえたらいいなと思って。

「今後も好きになれそうにない」

結局1か月半くらいでお別れしました。最後には、「今後も好きになれそうにない」、「いい関係が築けると思った」、「その状態で会うのは、変な期待をさせてしまう気がして嫌だ」と言われました。

結局、前向きに努力したことって何の意味があったの?付き合うにあたって、されて嫌なことを話し合ったこと、時間を作ったこと。

「好きな気持ちを弄んでしまった自覚はある。私を好きなだけ悪者にしていいから」と答えられました。弄んだ自覚、あったんだ。

幸せになってね?

「お別れにしようか?」と自分から切り出したら、沼は「うん、その方がいいと思う」と言いました。もうわけがわからなかったです。

それから、「幸せになってね」、「もっと大事にしてもらえる人に会えるよ」と。幸せになってね? 俺は、沼と幸せになりたかったし、大事にしあいたかったです。

グリコをしたって言いましたよね。すごく楽しかったのでよく覚えているんです。楽しかった思い出が、今でも頭にこびりついて忘れられません。

好きな人に愛されたい

沼との2年間で、反省点や勉強になったこともたくさんありました。

まず、俺は自分で考えこむだけで、相手の本当の気持ちを聞けていませんでした。「いい彼氏とは」を考え込むんじゃなくて、沼が何を求めているかを知ろうとしなきゃいけなかった。それから、八方塞がりで不安感ばかりが強かったけど、彼女のことばっかりになってしまっていました。依存に近い。今は、何か打ち込めるものを見つけようと思って勉強を頑張っています。

そもそも自分は人間として未熟な部分が多いです。話を濁して、中途半端でうやむやにしてしまうところとか。"やさしい"キモ男なんだと思います。

数え上げたらきりがない。うん、沼のことを、次に活かして頑張りましょう。愛されたいですね。好きな人に愛されたいです。

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