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FUNDINNOのマーケティング戦略を丸裸にしてみた!~マーケティング責任者が描くリアルな戦略をトレース~

日本クラウドキャピタルCMO向井のスペシャルインタビュー第二弾は、なんと!「マーケティング」がテーマ。7,000人を超えるマーケターが集まるコミュニティ「マーケティングトレース」を運営する黒澤さんに「ベンチャー企業のマーケティング戦略を読み解く」をテーマにインタビューさせてもらっています。

前編のベンチャー企業のマーケティング戦略について語ってもらった記事はこちらです!

前編の最後に・・・

向井)FUNDINNOのマーケティングトレースもやってください!(笑)

とお願いしたら

黒澤さん)CMOである向井さんからフィードバックいただけるのであれば喜んでやらせて頂きます!リアルにCMOからフィードバックもらうマーケティングトレースは前からやってみたいと考えていたので!

となり、今回はマーケティングトレースを主宰する黒澤さんに、FUNDINNOのマーケティングトレースに取り組んでもらい、FUNDINNOの戦略を丸裸にしてもらいました。

向井)今回はFUNDINNOのマーケティングトレースに取り組んで頂けたとのことありがとうございます。

黒澤さん)CMOである向井さんから直接フィードバックをいただけるの楽しみです。
今まで、マーケティングトレースは外から分析するだけで終わってしまっていたので、CMOの方と「外からの分析では読み解けない実状や戦略」について答え合わせできるのは貴重な機会です!
今回は、自分からマーケティングトレースの内容をもとに向井さんにインタビューさせてもらいますね。

FUNDINNOのマーケティングトレース

黒澤さん)こちらがFUNDINNOの戦略全体像を整理したマーケティングトレースのシートです!

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それぞれの分析を一つずつ向井さんからフィードバック頂き、FUNDINNOのマーケティング戦略について理解を深めていくことができればと思います。

向井さん、厳し目のフィードバックをお願い致します!!

向井)頑張りますw

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PEST分析からFUNDINNOを取り巻く外部環境理解

黒澤さん)まず、FUNDINNOを取り巻く外部環境の分析を行なっていきます。

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【黒澤のトレース視点】
==政治要素==

○規制や介入
デジタルファーストを政策に掲げ、金融サービスにおいても推進
○法律や規制
金融庁の免許・許可が必要であり参入障壁が高い産業。エンジェル税制の仕組みが普及
★注目視点:免許が必要な事業であり参入障壁が高い

==社会要素==
○人の価値観
社会課題解決や他者への貢献意識が高まる
○富裕層の存在
日本の富裕層は127万世帯、純金融資産総額は299兆円と推計
★注目視点:新たな機会としての社会課題解決×投資

==経済要素==
○経済成長
コロナにより日本の経済成長率は過去最低水準
○業界
NISA(一般・つみたて)の総口座数は令和元年6月末時点で約1309万口座
★注目視点:米国と英国はベンチャー投資の市場が形成され日本は遅れている→米国・英国市場の流れに日本も追いつく動きが活性化

==技術要素==
○フィンテック
データをもとに金融産業全体の効率化が図られている
○コミュニケーション技術
5Gによるコミュニケーションスピードの加速と概念変化、ブラックボックスがなくなる世界
★注目視点:技術の進化により金融取引にブラックボックスがなくなる


向井さん、自分が見落としている点はありそうでしょうか?

向井)上記のポイントに追加して、下記2つの視点はとても大事だと考えています。

==社会要素==
○日本人の国民性

もともと日本人は「誰かを助けたい応援したい」という気持ちが強い民族性があると考えています。さらにコロナの影響により、クラウドファンディング市場全体が日本でも伸びています。
今後、株式投資型クラウドファンディングが日本で伸びる可能性は「国民性」から感じており、日本人独特の価値観は何かを深掘りする視点は戦略を考える上でも重要になります。

==経済要素==
○起業家が増え、資金調達手段が多様化している

FUNDINNOはプラットフォームビジネスなので、①投資家サイドと②起業家サイドの2視点で考える必要がありますね。起業家サイドの動きでは『起業家が増え、資金調達手段が多様化している』ことは抑えておきたいポイントです。ベンチャー市場が日本でもようやく形成されていて、この伸び率は抑えておきたいところです。

黒澤さん)国民性を意識する視点は全く思いつきませんでした・・・

また、プラットフォームビジネスだからこその視点は見落としてはだめですね・・反省してます。

プラットフォームビジネス外部環境を踏まえて、FUNDINNOにとって脅威となる要素はどのようにお考えでしょうか?

向井)一つは、日本ではまだベンチャー投資は怪しい・・・という空気感があることですね。

どこかで、株式投資型クラウドファンディングの仕組みに不信感が生まれて「やっぱりベンチャー企業への投資は怪しくてリスク高いよね・・」となってしまうと市場が成長していきません。攻めの姿勢だけではなく慎重に丁寧にやっていく必要があると考えています。

もう一つは、規制ですね。どこかのプレイヤーが不祥事を起こしてしまって政府による規制が厳しくなってしまうと業界全体が動きにくくなってしまう。このようなリスクを理解した上で、どのように攻めのマーケティングを行っていくかがFUNDINNOにとっては重要となります。

5Forces分析から業界の構造を整理する

黒澤さん)マーケティングトレースでは、直接競合と価値競合の2つに分けて、競合を再定義するようにしています。
下記のように競合を整理してみました。

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==業界競合==
株式投資型クラウドファンディングのサービスを提供する会社
最近は参入するプレイヤーが増えてきている

==価値競合==
限られた資産をどのように運用するかを考えた時に、比較されるであろう投資商品。
投資商品の多様化は進んでいる。

※価値競合とは、業界は違うけれど、顧客の時間とお金を奪われる可能性がある競合他社


向井さん、見落としている視点があれば教えて頂けますでしょうか?

向井)先ほどのPEST分析と同様に起業家視点での競合を洗い出しておきたいですね。
資金調達をする起業家からは、ベンチャーキャピタル、コーポレートベンチャーキャピタル、エンジェル投資家などと比較されます。既にベンチャーキャピタルの投資環境が整ってきている中で、起業家サイドとしては、なぜクラウドファンディングをやるのかの意味づけが重要になりますね。

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FUNDINNOのターゲティング

黒澤さん)続いて、FUNDINNOのターゲット整理をしてみました。

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年収700万以上で副業や資産規模など、経済的に余裕がある方がメインターゲットだと認識しています。

==行動特性==
過去に投資実績あり
企業分析や日々の経済情報のインプット感度が高い
既に複数のベンチャー企業に投資実績あり

==嗜好性==
社会課題解決/社会的インパクト投資に興味・関心がある
既存の株式投資のリターンだけ期待する習慣に飽きてきた

資産規模と成約数・成約率・投資金額などが比例していると考えていますが如何でしょうか?

向井)メインの顧客は、30代~60代男性で年収500万~1000万の方が多いですね。FUNDINNOは一般的な会社員として働いている層が応援してくれているサービスとなっています。
ターゲットとしても、想いとしても、投資の経験がある人は「全員」が使ってもらいたいと考えています。あまりセグメントを区切り過ぎると成長率が鈍化してしまうので、如何にターゲットを広げるかを考えています。

ターゲットを考える時は、下記の要素は抑えたいですね。
・過去に何かしらの投資をしたことがある
・ベンチャー企業に興味がある、応援したい
所得分布ですと、「緑」より上の層全般に届けていくイメージです。

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Wikipediaより引用:日本の給与所得者の所得階層別人数推移

黒澤さん)『投資経験ある方』『年収だと500万以上』と広い層を顧客と捉えられていらっしゃるのですね。
FUNDINNOの想いの部分も汲み取れておらず申し訳ありません・・・
ちなみに、現在獲得ができていない顧客セグメントはどのように考えていますか?

向井)女性の投資家が圧倒的に少ないことが課題です。
女性顧客にFUNDINNOの魅力をどのように伝えることができるか?は今後考えていきたいテーマです。
もう一つの層はベンチャーを支援したことがある富裕層=エンジェル投資家と呼ばれる人たちです。
エンジェル投資家がFUNDINNOを活用することで、今まで個人で負担していた手間を省ける価値を提供できればと考えています。

FUNDINNOのポジショニング

黒澤さん)続いて、FUNDINNOのポジショニング戦略を深堀りさせてください。自分が考えてみたポジショニングマップは下記の通りです。

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==FUNDIINOの優位性==
①縦軸
:成約数・取引額の実績が多いこと
②横軸:独自コミュニティをつくり出していること

整理するとこの2つだと考えています。
こちら、向井さんが実務で意識されているポジショニングとズレている点があればフィードバック頂けますでしょうか?

向井)大枠は自分がイメージしているポジショニングマップと共通しています。FUNDINNOの強みを整理すると下記の通りとなります。

・登録者数40,000人超の個人投資家
・累積170件のプロジェクト数


FUNDINNOを応援してくれる個人投資家の存在(数)が、FUNDINNOの強さを支えてくれています。

また、170件ものプロジェクトを動かしてきているため、ベンチャー企業を審査する力や、それを仕組み化してスピーディーに対応できる力は、FUNDINNOの表には出ていない強さですね。

一方で独立系なので、競合他社と比較すると尖った強みがないことは課題です。先行者としての優位性を築いてきていますが、後発で参入してきている競合他社に仕組みの模倣はされてきています。

とくに、プロジェクト案件ページの差別化は、今後の課題だと認識しています。

FUNDINNOのマーケティングミックス4P分析

黒澤さん)最後にマーケティングミックスを整理して、FUNDINNOの顧客価値の届け方を分析していきます。

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==商品特徴(Product)・価格(Price)==
日本初の信頼性と実績(既に2社がイグジット済み)
ベンチャーの新株予約権→株式の取得
※価格はプロジェクトごとに異なる(10万円から50万円まで/1社)
投資先企業の多様性と信頼性
※公認会計士の審査や専門家の分析が背景にあり

==流通Place==
公式サイト(オンライン)/プロジェクトページが発信の中心

==広告Promotion==
サラリーマン金太郎を使ったプロモーション
エンジェル投資家や専門家をゲストに呼んだイベント
メディア:投資家向け媒体、アフィリエイト
*2020年10月現在はテレビCMも実施

向井)マーケティングミックスの表側はすぐ真似はできてしまうので、表に出ていない大切なポイントとしてお伝えしておきたいことは、FUNDINNOのプロジェクトページの「質」を支えている体制ですね。

案件のプロジェクトページをつくる上で、金融のことを理解してコンテンツを制作できる人は少ない現状があります。

①ライティングやデザインの質を担保する体制
②ベンチャーを審査する体制

この2つが、商品Productの強みを支えています。

また、広告promotionの部分は、金融業界の特徴を抑えておいてもらえると良いですね。
あまり知られていないのですが、金融業界には表現の制約があります。代表的な例だと、『金融業界はABテストができない』のです。投資家には平等に情報を伝える必要があることが背景です。AさんとBさんに違う募集ページみてもらう訳にはいきませんよね。またベンチャー企業は唯一無二です。毎回新商品を発売しているような状態になりますので、この意味でもABテストの実現が難しいです。
表現の規制がかかっているため、表現の差別化を図れない難しさがある中で、デジタルマーケティングを行う必要があります。

黒澤さん)金融業界の規制を理解・乗り越えた上で、どのように差別化を図るか・・・なかなか難易度が高いですね・・・

向井さん!
一番気になっている質問をしても良いでしょうか?

向井)はい、どうぞ!

黒澤さん)サラリーマン金太郎を起用されたプロモーションを行っていますが、これはどのような意図があるのでしょうか?
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株式投資型クラウドファンディング「FUNDINNO」
ヤマト建設「矢島金太郎」氏がサラリーマン投資家として
アンバサダーに就任!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000098.000021941.html

向井)私が大好きだからです!

黒澤さん)・・・・

向井)もちろんそれだけではないですよ!(笑)アイキャッチであるところが大きいです。私たちのFUNDINNOを一言で説明するのはなかなか難しいです。ちゃんと説明しようと思うと、バナー広告が文字だけになっちゃいます。冗談抜きで各媒体の広告審査通らなくなってしまいますね・・。
FUNDINNOの投資家の皆さんは主に30代~60代の男性です。この年代の方が誰もが知っていて、「おっ」って思って頂ける共通のアイキャッチが欲しかったんです。事前に数十人の方にヒアリングしたところ「サラリーマン金太郎」は100%みなさん知っていました。サラリーマンですし、アツく企業を応援するイメージがあり、FUNDINNOのアイキャッチにぴったりだと思いました。

黒澤さん)ちゃんと考えているんですね(笑)

向井)黒澤さん、ちょっと、ちょっと大変!今写真送るわ!

黒澤さん)え!?どうしましたか・・・・・

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向井)こんなところにセミだよー すごいねー

黒澤さん)(そんな少年の心も「サラリーマン金太郎」を選んだ理由なのかもしれない・・・<心の声>)

向井さんは「金融を面白く」をモットーにされていると拝見していたので、色々とつながって理解できました!

FUNDINNOの外からは見えない強さ(成功要因)とは?

FUNDINNOの成功要因まとめ

==要因<1>==
日本初で市場を創ったことによる「信頼性と実績」+コミュニティ
※株式投資型クラウドファンディングの第一想起を獲得できていることの強さ
==要因<2>==
案件情報の質の高さ/質の高さを担保する組織体制

黒澤さん)外から分析する限りですと、この2つがFUNDINNOの強さだと認識しています。ここまでのお話しから、大枠は間違っていないかな・・・と思っているのですがどうでしょうか?


向井)要因<2>の『案件情報の質の高さ/質の高さを担保する組織体制』はもう少し深掘りしておきたいです。

FUNDINNOの強さを支えているのは「審査体制」です。

株式投資型クラウドファンディングのビジネスは、『審査の質とスピード』が競争力を支えます。

全てはお伝えできませんが、FUNDINNOはベンチャー企業に対して、事業計画、財務周りを複数人の公認会計士が審査をしています。
この体制とフローが、「信頼」を担保しています。

さらに、資金調達をしたい起業家がたくさん集まっても、審査スピードが遅ければ、限られたベンチャー企業の支援しかできません。

FUNDINNOは、月に平均10~20件程度の案件を審査する体制があり、より多くのベンチャー企業を応援するための仕組みが裏側にあるのです。

業界No.1の実績は、先行者だからという理由だけで成り立っているわけではなく「審査体制」があるから成り立っているのです。

黒澤さん)外からは見えない『隠れた強み』の視点が大変興味深く学びが多いです・・

前編のインタビューでご紹介しましたが「優れたマーケティング戦略の裏側には、優れた組織文化や体制がある」ことを実感しています。

外からの分析だけではなく、中の人に突撃インタビューをしてみるのは、ベンチャー企業のポテンシャルを理解する上で大切ですね・・・
投資家の方々にも、1次情報にあたってみることはオススメしたいです。
向井さん、本日は貴重なフィードバックを頂きありがとうございました!

向井)こちらこそ、ありがとうございました!

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黒澤 友貴(くろさわ ともき)
1988年生まれ。ブランディングテクノロジー株式会社 執行役員 経営戦略室CMO。中堅・中小企業のマーケティング成功メソッド開発や、マーケティング組織課題を解決するコンサルティングを行う。「日本全体のマーケティングリテラシーを底上げする」をミッションに7,000人近くのマーケターが集まる学習コミュニティ#マーケティングトレースを運営。2020年2月に書籍「マーケティング思考力トレーニング」を出版
note:https://note.mu/tomokikurosawa
Twitter:https://twitter.com/KurosawaTomoki
インタビュアー:日本クラウドキャピタル  CMO 向井 純太郎
2001年上智大学理工学部卒。日本ヒューレットパッカードにて、主に金融機関向けにエンジニア/ITコンサルタント/プロジェクトマネージャーとして従事した後、2011年にライフネット生命に入社。システム企画部に配属後、マーケティング部WEBチームにて、ウェブマスターを担当。その後、お申込みサポート部部長として、CX(カスタマーエクスペリエンス)の強化に取り組む。インバウンドセールスチームの立ち上げや国内生保初のLINEサービスの立ち上げ等に従事。その後、GRCを手掛けるSaaSベンチャーにて、BtoBマーティングと採用マーケティングのチームを立ち上げ。現在に至る。

presented by FUNDINNO




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