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忘却

繰り返し説明が必要になる。
わかっているからなるべく優しく努めて説明してあげる。
元の性格なのだろう、洗剤や料理をする時の水の量などはアバウトだ。
だから一緒にやろうね、と言って、でも、自分はいつも、つきっきりになれるわけじゃない。それで、やっぱり失敗してしまう。

だから何回も説明してあげる。
忘れるから何も言わないで、やらせない、というのは間違っていると思ったから。真摯に向き合いたかった。

でも、心が限界になって、
足も悪いから、転んだりしてしまって。
一緒に暮らすのは難しいって、そういう結論になって。

同じような人がいっぱいいる建物に引っ越すことになったんだ。
人と触れ合う数はこれまでより多くなるから。
いつも見に来てくれる人がいるから。

でも、忘れてしまうんだ。
いつまでそこにいるのかがわからない。

知らない人が毎日会いに来る。
寂しいから、家族と過ごしたいから。
歩きまわってしまう。

もう家はないんだよって。
家族はもういないんだよって。
繰り返し説明が必要になる。

なるべく優しく、ゆっくり理解できるように。
少しでも、辛くならないように過ごしてほしいから。

繰り返し、繰り返し。
いつまでも、いつまでも。

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