見出し画像

結果を変えるゆらぎ―若者に向けて

そういう季節ですね

先日卒業式がありました。私にとって1期生となるゼミ生を送り出しました。

ちょっと扱いに注意を要する若者もいれば、いや普通に優秀じゃんと思える若者もいる。これ自体は当たり前のことだと思うんですが、では何が重要かというと、この二つは対極にあるのではなくて、すごく小さな分岐で大きく結果が分かれた、表裏一体のものである気がしてならないのです。

適応し生き抜いた学生たち

今年送り出した弊ゼミ卒業生は、学生の最後2年間をコロナ禍で過ごさざるを得なかった人たちでした。初回ゼミはZoomで、後期になって初めて直接会ったことを思い出します。
あらゆることを制限され、ときに感染拡大の主犯として悪者のように扱われ、高齢者の命を守るために成人式を諦めなさい、成人式なんていつでもできるじゃないですか、なんて言われたりもした。幸か不幸か、学生側までそんな社会の意見は届きもしなかったという面もありますが。
そういうことが頭を去来する中、「学生ってタフやなあ」と思ったのでした。

コロナ禍で確信したことがあります。まず一般的に、学生(若者)は(年長者よりも)創造性がある、と言われることがあります。若者らしい斬新な発想、的な。私的には、これは誤りです。創造性のためには知識基盤が必要で、若者にはそれが決定的に欠如しているからです。

対して、若者が年長者より圧倒的に優れていると感じる性質があります。適応力です。行動変容や制度改正などの変化における柔軟性と、なによりスピードが速い。コロナ禍で色んなことが変化しましたが、若者はいかにも容易く適応したようにも思います。
世に不平不満が溢れる中、私が(SNSや報道で、ではなく)直接会った若者たちは、「こんなもんでしょ」とばかりに、しれっとコロナ禍を泳ぎ切ったように思います。
 
私は心から、卒業するゼミ生に言いました。

「最後の2年はコロナ禍で大変でしたけど、皆さんはその2年をタフに乗り切って社会に出ていくわけですから。それは誇りに思ってください。自分たちはやれた、やりきれたんだと。そんな苦しい社会状況にもまれた人、今の社会人にもそうそういないですから」

若者は適応を得意とします。経験の乏しさがプラスにも働いて、こんなもんかとばかりに素早く順応する。これは長所にも短所にもなり得ますが、おおむね長所だと思います。
一方で、最大の懸念事項は、適応する対象の質に依存してしまう、ということ。要するに、大人や社会が「これに適応しろ」と示すものが正しければ正しい若者に育つし、間違ってれば間違った若者に育つわけです。この分岐には気をつけないと、適応能力が裏目に出てしまうことになる。
 
では、少しでもその危険を回避するには、どうしたらいいんだろうか。

一生会わないままなのかい?

もう一つ、卒業生に言ったことがあります。前からずっと考えていたことです。

「これでもう一生会わないかもしれないね」

さすがに(演技だとしても)、だいたい皆寂しそうにしたり、ウっとした表情になります。でも、卒業って実際そういうことなんです。今まではゼミをとってたから嫌でも顔を合わせていた。卒業すると大学には来なくなるし、生活圏もだいたい離れるわけで、偶然会う確率なんて相当低いでしょう。卒業というのは、そのくらいの<別れ>を伴うのです。

私は率直に「死んだようなもんだよ」って言います。だって、もう亡くなってもわからないじゃない。いくらSNSやメッセンジャーが発達しても、必ず訃報が届くとは限らない。定期的に顔を合わせていた関係から、生きてても死んでてもわからないような関係になる。卒業ってそういうことなんです。

寂しそうにする卒業生に続けます。

「もし、それはあんまりだと思うなら、どうすりゃええんや?」

答えは、簡単です。会いに行けばいいのです。仮に卒業していようが、東京で働いていようが、会いたい、会おうと思って年に1回か数年に1回かわからないけど会うことは、そこまで難しいことではないように思います。
お金や時間の問題ではない。最大の壁は<会おうとするかどうか>つまり意志です。もう一生会わないかも問題の結果を左右するのは、ほぼ意志なのです。この意志をもつかで、結果が大きく変わる。

あなたの結果が変わるためには

運命や確率といったものは一般的に強く信じられていて、マクロに付与された確率に対してミクロに抗うことを知らない人もいます。その結果として著しく外部に依存した人物がいたり、親ガチャとか才能決定論みたいな話がでます。

「いやあ、忙しくてなかなか会えないですね」。ホントかい?優先順位が低いだけなんじゃないの?「お昼一緒に?お金ないんで、やめときます」。いや、500円くらいの話じゃない。500円で自分の将来が変わるかもしれないよ。変わらんかもしれないけど。でも、不確実な将来に期待して投資しないと、望ましい未来には決して変わっていかないんですよ。そしてやるなら今しかない。「成人式なんて将来いつでもできるじゃないですか」。そんなわけあるかいな

もちろん意志は万能でも何でもないけど、自分のやるかやらないかで結果を左右できることも、たぶん<思ったよりは>世の中にあることなんです。特に、若者は適応が得意で、変化に強いのだから。そう信じて卒業していってほしいと思っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?